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オリンピック特需キャンセルで市民の信頼を勝ち取る
 中央タクシー探訪記

1998年2月、冬季オリンピックが長野市で開催され、世界中のスポーツ関係者とメディアがこのまちに集まった。記者たちは市内各所の競技会場を取材するために割高の料金でタクシーの借り上げを予約し、市内のタクシー会社は予想外のオリンピック特需に沸いた。

中央タクシーの当時55台のタクシーも1カ月前には予約で完売。そのとき乗務員たちが言った。「でも、オリンピック期間中の2週間、市民の足がなくなっちゃいますよね。ウチの車で病院に通っているおばあちゃん、どうするんでしょうか」「やっぱり私たちはいつものおばあちゃんのところに行くべきじゃないでしょうか。オリンピック特需、キャンセルしましょうよ」

当時の社長で現会長の宇都宮恒久氏は、それを聞いてこう言った。「よしわかった。オリンピック特需はキャンセルしよう。しかし、ボランティアとしてじゃない。戦略として、当社はオリンピック期間中市民の足に徹することにする。そうすれば今まで当社のタクシーに乗ったことのないお客様との出会いも作れる。オリンピックが終わってみんなが帰った後、この期間中に長野市民との出会いを作ったものが勝ちを制するだろう」

この戦略は見事に当たった。オリンピック後、他社の業績が急速に落ち込んだのに対して、中央タクシーはお客様を大切にする会社として市内タクシー会社のトップに躍進。そのとき築いた信頼をベースにその後次々新しい事業分野に進出することになった。


夏季に運行されるアロハタクシー

お客様が先、利益は後

タクシーのお客様には、タクシー乗り場で乗る人、街で手を上げて乗る人、電話で頼んでくる人の3つがある。創業当初、中央タクシーの電話は全く鳴らなかった。そこで、当時の社長、宇都宮恒久さんは営業に歩いた。

どの会社もお店もすでに他社と契約ができていて相手にしてもらえなかった。「何なら私が乗ってあげようか」とクラブで働いている女性が声をかけてくれた。その後、クラブやキャバレーで働く女性たちに頼んで回り、ほとんどから予約を貰うことができた。それまでのタクシー業界の「乗せてやるよ」というスタンスがなかったことが彼女らの心をとらえた。

例えば、アパートの下でクラクションを鳴らすのではなく、車を降り、玄関口まで来てチャイムを鳴らし「中央タクシーです。お迎えにまいりました」と言う。待機場所からかなりの距離を走らせてお客様を迎えに行き、お客様が指定する行き先がすぐ近くだった時、他社の乗務員は「ちぇっ」と舌打ちしたが、宇都宮さんは「お客様が先、利益は後」と教えた。目の前の仕事の損得にいちいち喜んだり腹を立てたりするのではなく、まずはお客様に満足を提供せよと説いた。それが会社の評判を高めて次の電話につながる。すると待機場所まで帰らなくても次の依頼が入り、配車距離は次第に短くなり、最後に利益につながる。

こうして頻繁に電話が鳴るようになった。いま、中央タクシーの電話によるお客様は全体の9割を超えている。


(「リーダーシップ」2011年12月号で詳報)→ chuotaxi.pdf へのリンク
 タクシー配車センター