改善の事典  》 第13章 お客様  》 接客応対の好感度を高める
 
TOP 編集のねらい 5S 安全 品質 作業 治工具 設備 省力 環境 コスト 事務 IT化 組織 お客様 社会 地域 探訪記 総目次 索引
 
お客様‐1304b 接客応対の好感度を高める BACKNEXT


自販機や通信販売を除けば、商品はお客様と接客担当との人間関係を通じて売れていきします。そのための接客応対の好感度を上げる工夫を集めました。

 このページの掲載事例→                                       ●1304b01 「おかめ」の面を掲げて笑顔を促す  
●1304b02 身だしなみの基準をつくる  
●1304b03 接客基本用語を唱和する  
●1304b04 接客用語の勉強会を開く  
●1304b05 笑顔をつくる  
●1304b06 笑顔キャンペーンを展開する
●1304b07 チェッカーコンクールで接客応対を競う  
●1304b08 接客応対をチェックする
●1304b09 ホテルの接客サービス研修 
●1304b10 タクシーのお客様満足度を高める
●1304b11 タクシー乗務員の行動基準をつくる 
●1304b12 挨拶しなければタクシー料金を貰わない
●1304b13 安田屋の「接客4カ条」 
●1304b14 作業の前に靴下を履き替える  
 
【1304b01】 「おかめ」の面を掲げて笑顔を促す   


■明治の初め、岩崎弥太郎翁(1835-1885)が率いる三菱蒸気船会社は国内や外国の船会社との間で激しい競争を展開した。

■当時の社員の多くは士族出身でプライドが高く、お客の前でなかなか頭を下げられなかった。弥太郎は店の前に大きな「おかめ」の面をかかげ、「このような笑顔で接客せよ」と説得した。

■元土佐藩士で弥太郎の人柄に魅かれて社員となった石川七財(いしかわしちざい)に対しては、小判の絵が描かれた扇子を与え、「客に頭を下げると思うからつらいのだ。この小判に頭を下げると思え」と諭したといわれる。



取材先 岩崎弥太郎生家
取材 2021/06/26
掲載先 リーダーシップ 2021/08
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki242.html


 

三菱蒸気船会社の「高砂丸」(写真提供・
日本郵船歴史博物館)と「おかめ」の面 
 
【1304b02】 身だしなみの基準をつくる   
 
■お客様に清潔感と好印象を訴え、従業員の仕事に対する心構えを植え付けるために、コープこうべでは身だしなみの基準をつくり、セルフチェック、ペアチェックを行っている。



取材先 コープこうべ
取材 2000/01/08
掲載 燃えよリーダー2000/02 
 
 
【1304b03】 接客基本用語を唱和する  

■感謝の気持で接客するために「接客応対の8大用語」を制定。店内ミーティングで唱和している。
売場責任者は朝夕のピーク時におすすめ商品を大きな声で訴えるために、発声練習する。


取材先 コープこうべ
取材 2000/01/08
掲載 燃えよリーダー2000/02
 
 
【1304b04】 接客用語の勉強会を開く  

■麺類チェーン店の事例、パート・アルバイトの新人に正しい接客用語を教えるために店長が講師となり、下記のような接客用語の勉強会を開いている。



取材先 グルメ杵屋
取材 1999/10/05
掲載 燃えよリーダー1999/11
 
 
 
【1304b05】 笑顔をつくる   

寿司チェーン店で、本部から客数が伸びていないと指摘を受け、従業員が話し合った結果、笑顔がない、大きな声が出ていない、返事がない、などの問題に対応するために、次のような方法で笑顔、声出し、身だしなみをお互いに確認することにした。

@笑顔をつくる
・店長が笑顔を作る教育を行った。
・「イ」の発音をすると笑顔が作れる。・当店を選んでいただいた、そのことへの感謝の気持ちを自然に表現すれば、それが笑顔になる。
・鏡を置いて各自でチェックすることにした。
 

A大きな声を出す
・毎朝朝礼時に発声練習を行った。
・声が小さいときは周りが注意することにした。
 
B身だしなみ
・ユニフォームが汚れていないか、朝礼時に互いにチェックすることにした。






取材先 音羽京都祇園店
取材 1999/09/23
掲載 燃えよリーダー1999/11 

 
 
【1304b06】 笑顔キャンペーンを展開する  

■スーパーマーケットで、「笑顔で接客キャンペーン」を展開。売場チーフが従業員に次のポイントを教育し、結果を自己採点。その点数推移を公開してポイントアップをめざした。

@売り場に出るときは必ず「いらっしゃいませ」という。

Aお客様と目が合ったら「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」という。
B問い合わせに応えられない時はすぐ責任者に取り次ぐ。

C自店の設備、サービス、営業内容を説明できるようにする。

D売り出し商品の場所を案内できるようにする。

Eマニュアル通りの身だしなみを徹底する。



取材先 ライフコーポレーション
取材 2000/01/07
掲載 燃えよリーダー2000/02
 
 
【1304b07】 チェッカーコンクールで接客応対を競う  


■スーパーマーケットの事例。チェッカーの接客態度をレベルアップするためにチェッカーコンクールを実施。次の各項について採点し、優秀者を選抜し、表彰している。

@食品と石鹸など匂いのつくものを分けて入れているか
A寿司を購入されたお客様にお箸の要・不要を聞いているか
Bパンなど柔らかいものの上に重いものをおいえいないか
C表示通り値引きされていないなどのお客様の苦情に適切に対応しているか  

取材先 ライフコーポレーション
取材 2000/01/07
掲載 燃えよリーダー2000/02

 
 
【1304b08】 接客対応をチェックする  

■喫茶店、レストラン、パブ、キャバレーなどを展開する親和観光産業では、サービス意識向上のために次のようなチェックリストで自分たちの1週間の接客活動を振り返り、改善のきっかけづくりをしている。
  

取材先 親和観光産業
取材 1984
掲載先 創意とくふう 1984/12 

 
 
 
 【1304b09】 ホテルの接客サービス研修  

■「ホテル」という言葉は「ホスピタリティ(もてなし、歓待)」や「ホスピタル(病院)」と同じラテン語の「ホスピターレ」に由来する。キリスト教の修道院が飢えている人たちに食事を提供したり、寝るところのない旅人に一夜の宿を提供したり、病気の人や孤児たちや身寄りのない高齢者たちに親切にしたことが、そそもそものホテルの起源で、その背景に「汝の隣人を愛せよ」というキリスト教の教えがある。修道院によるこうした慈善事業を18世紀の産業革命以降にお金を取ってビジネスにしたのがホテルである。

■リーガロイヤルホテル大阪のお客様サービス推進室長・増田雅弘さんが従業員にサービスの基本を教えるとき、このホテルの起源から説き、ホテルのサービスにはマニュアルやテクニックを越えた人への思いやりや労りがなくてはならないと教えている。増田さんがサービス研修の中で教える基本的なポイントは次の通り。 

 

@何が求められているか察する

増田さんが新入社員だった頃に先輩社員から繰り返し言われたのが「タバコと言えばマッチ」だった。タバコが欲しいと言われるお客様の言葉通りタバコだけ持っていっても役に立たない。タバコを吸うにはマッチがいる。お客様の言葉だけでなく何をしようとしているのか、心の中まで読んで必要なものを提供することがサービスの基本である。
 

Aマインドをもって挨拶する

挨拶の仕方は人によってさまざまである。あまり表情を変えず「いらしゃいませ」という人もいれば、満面の笑みを浮かべてハートを込めて言う人もいる。目の前のお客様にしか挨拶しない人もいれば、少し距離のあるところからでも「いらっしゃいませ」と声をかけるひともいる。研修では様々な場面をシミュレーションして、その場その場に応じた最適の挨拶と笑顔をみんなで検討し、その中から全社の標準的な挨拶の仕方を作り上げている。

 

B沈黙を作らない

例えば、お客様がレジストレーションされるとき、はじめてフロントに立ったホテルマンはお客様が住所氏名を記入されるのをただ黙って見ているだろう。しかし、ベテランのホテルマンならお客様が書かれる住所をみて「あっ、北海道からおこしですか。これはこれは遠いところをありがとうございます。で、大阪へはお仕事でございますか…?」とさりげなく言葉をかける。おもてなしする側が黙ってしまうとお客様は戸惑い、居心地の悪さを感じるものだ。常にお客様に関心を払い、お客様の今の気持を察してかけるべき言葉を見つけていくことが大切だ。中には話したい気分でないひともいらっしゃるので、その見極めも必要になる。

 

C後ろのお客様に声をかける

フロントでもレストランでも売店でも、お客様が並ばれたときに、目の前のお客様に集中しすぎて後ろのお客様がほったらかしになるのは禁物である。「お待たせして申し訳ありません。もう少々お待ちいただけますか?」とタイミングを見計らって後ろのお客様に声をかけることが大切だ。たとえ待たされてもその一言で自分が気にかけて貰っていることが分かり、満足を感じ、ホテルに好印象を持つ人が少なくない。

 

D積極的に情報提供する

レストランのウエイターの場合も「これがメニューです」とメニューを差し出したままだまってしまってはいけない。「今日は活きのいい魚が入りました。鯛のソテーなどは如何でしょうか?」とホテルとしてのおすすめメニューを紹介する。押し付けになってはいけないが、判断材料となる情報をタイミングよく積極的に提供すれば、お客様を戸惑わせることがない。ちょうど町の魚屋さんと同じことをスマートにするのがホテルなのだ。



取材先 リーガロイヤルホテル大阪

取材 1999/09/30
掲載 燃えよリーダー1999/11

 
 
【1304b10】 タクシーのお客様満足度を高める  

■香川県高松市の大川タクシーでは、次のようなマナー教育を行なっている。
・ドアを開けるときは車を停めてドアを開ける
・お客様が行き先を言われたら復唱する・言葉遣いは丁寧に
・運転は安全第一かつ迅速に
・服装・身だしなみ・車内はいつも清潔に
・お客様が降りられるときは「ありがとうございました」と言い、「お忘れ物はありませんか」と確認する

■これらができているかどうかをアンケートハガキにして営業担当がランダムにお客様に渡し、返ってきたハガキに「行き先を言ったのに返事しなかった」「運転が乱暴だった」「服装がだらしなかった」などにチェックがあれば、再教育する。

■「当社はISO9001の認証を取得しました。お気づきの点がありましたらご連絡ください」と車内に表示。お客様の声に応えていくシステムが出来ていることを内外にアピールした。

取材先 大川タクシー
取材 2003/04/08
掲載 燃えよリーダー2003/05

 
 
【1304b11】 タクシー乗務員の行動基準をつくる  

■中央タクシーの宇都宮恒久社長は乗務員の行動基準として次の3つを打ち出した。

@タクシーのオートドア機能を使わずドアを手で開けること
A雨の日には傘をさしかけること
Bお乗りになったお客様に「ご乗車ありがとうございます。私は中央タクシーの○○と申します」と自己紹介すること。
 

■最初はみんな嫌がり、「いきなり自己紹介なんかしたら、お客様の方がびっくりしますよ」と反論したが、何度も繰り返すうちに、この3つは、自分たちのお客様第一主義を表現するものとして、みんながやり始め、今では確実に全員に定着している。 

取材先 中央タクシー
取材  2011/10/21
掲載  リーダーシップ2011/12
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki126.html
 
タクシー車体に表示した「私たちは
お客様を大切にします」の看板 
 
【1304b12】 挨拶しなければタクシー料金を貰わない  


■タクシー需要が急増し供給不足だった1960年代、タクシー乗務員は誰もお客に挨拶などせず、むっつり黙っていた。

MKタクシーを創業した青木定雄は、「ありがとうございます」「どちらでですか?」など4つの挨拶をしなかったら運賃はいただきませんという「ありがとう運動」を展開した。

■鴨川のほとりで乗務員たちが発声練習する様子が市民に評判となり、MKは他のタクシー会社とは違うという評判が広がり、乗務員たちがそのことに誇りを感じ始め、それらが因となり果となって、MKタクシーを選ぶお客様が徐々に増えていった。

取材先 エムケイ
取材 2021/03/02
掲載 リーダーシップ2021/04
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki238.html

  
「ありがとう運動」の看板を掲げたMKタクシー
 
 【1304b13】 安田屋の「接客4カ条」  


■安田財閥の創始者、安田善次郎翁(1838-1921)は、24歳で「安田屋」の看板を掲げて両替の傍ら、海苔、鰹節、砂糖などの乾物を商った。

■雇い入れた店員にはお客の気持ちになり、お客が求めているものをよいものから順に提供し、商品を渡すときは前垂れで拭って手渡すことを徹底した。

■この頃、善次郎は次のような「接客の4カ条」をつくっている。

@お客のいうまま、店先にないものは早く探してあげる。2A選ぶときは最も良い品から取る。決して悪い品は混ぜない。
B包み物はよく堅くしばってあげる。
Cから世辞ではなく、心からお礼を言う。

参考文献:北康利著「銀行王・安田善次郎」(新潮文庫、2013)P51

探訪記:http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki251.html

 
明治35年頃の修身の教科書に掲載された
安田善次郎夫妻の勤倹貯蓄の図
(提供・安田善次郎翁記念室)
 
  【1304b14】 作業の前に靴下を履き替える  
 
■アート引越センターを創業した寺田千代乃さんは、主婦の目で引越の「あったらいいな」を次々と見直した。

■最大のアピールポイントが「荷造りご無用」だった。それまでの引越は依頼者が荷造りして業者に運送を依頼するのが普通だったが、面倒な荷造りをすべてドライバーが引き受けることにした。

■ドライバーたちはお客様宅でその作業に入る前に、まっさらな靴下に履き替える。その靴下の白さがお客様の依頼にまっすぐ丁寧に向き合う姿勢をアピールしている。

 

取材 アート引越センター 2023/04/05
掲載先 リーダーシップ 2023/05
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki25.html

 
 ▲ページトップへ