絵で見る創意くふう事典  》 第9章 コストダウン  》 E組織的取組
 
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 コストダウン‐0906 E組織的取り組み  BACK NEXT
このページの掲載事例→              ●090601 自動車の輸送方法を改善する   
 ●090602 セル生産への移行めざし生産性を8倍向上
 ●090603 ハッチタイトネス試験方法の改善
 ●090604 改善の蓄積をデータベース化する
 
【090501】自動車の輸送方法を改善する  


1999年、自動車業界への外資参入による大規模なリストラを契機として、自動車物流業界に価格破壊が起こり、自動車物流の市場価格が大幅に低下。トヨタ輸送はお客様である親会社のトヨタ自動車から相応のコストダウンを求められることになった。

■トヨタ車の生産工場が集注する豊田市から名古屋港までの幹線ルートはトヨタ輸送のキャリアカーで完成車を運ぶが、各地の港から販売会社までの地方ルートはビジネスパートナーの輸送会社が運んでいる。ビジネスパートナーたちはこの頃、ディーゼル車の燃料費の高騰と排ガス規制適合車への買い替えを迫られ、それ以上のコストダウン要求に応えることはムリだと考えていた。

2002年に就任した小川徳男社長は、ビジネスパートナーたちと対話を重ね、協力を求めて、次のような社内改革を行なった。
@従来のキャリアカーは目的地までほぼ100%車を積んで走っているが、帰りは空で走っていた。お客様は親会社のトヨタ自動車だから、トヨタの新車がないところでは、空で走るしかなかった。そこで、お客様をトヨタ自動車だけに限定せず、関東の自動車メーカーにまで拡げて、共同輸送することを取り決めた。御殿場にターミナルを建設。そこで、積み荷を交換して帰りの実車率を高めた。
A数百キロ以上の遠方に完成車を運ぶとき、従来は800台積みの小型船22隻を名古屋港と各地の港を往復させていたが、22隻のうち8隻を廃船し、2000台積みの大型船4隻に切り替えた。

■排ガス規制適合車買い替えのための資金調達に苦しんでいたビジネスパートナーに対しては低利のファイナンスリース制度をつくって、便宜を図った。

取材先 トヨタ輸送(tanbouki 051
取材 2007/09/04
掲載 ポジティブ2007/11
本文 toyotayuso.pdf へのリンク

 
↑御殿場ターミナル、自動車積載車、大型積載船
 
【090502】セル生産への移行めざし生産性を8倍向上  


1999年に就任したキヤノン電子の酒巻久社長は効率の良い多品種少量生産体制を作るために力を注いだ。中心はコンベア生産からセル生産に移行させることだった。

■自動倉庫と連動したコンベア生産方式は段取り替えに時間がかかって小回りがきかないのに対して、数人のグループで小さな屋台の周辺に部品を置いて組み立てるセル生産方式は短時間で段取り替えが可能になる。ムダな動きがなくなり、生産のリードタイムが短縮され、仕掛品在庫もスペースも削減され、それに伴って電気代もCO2排出量大幅に減少する。

■速やかなセル生産への移行をめざして酒巻社長は「TSS1/2」という目標を打ち出した。TSSTime & Space Savingの意味で、時間・スペース・不良率・人と物の移動・電気使用量…などをそれまでの半分にし、効率を2倍にすることをめざす。この目標だけ示して、手段は各部門に委ねられた。

■時間とスペースの節減の追求の中で、「椅子をなくす」というアイデアが生まれた。組立作業は従来椅子に座って行われたが、立ってやればもっと早くできると言う声が若い人たちから出てきたのである。座って作業しているときは部品を供給するためのロボットの移動スペースが必要だったが、立って作業すると手を伸ばせば物が取れるから、ロボットも移動スペースも不要になり、これにより時間とスペースが大幅に削減された。

■現場が立って作業するようになったから、工場の間接部門も何かあった時にすぐ現場に駆けつけられるように立って仕事をするようになった。会議もたったまま行われる。立った方が適度の緊張感があり、意見もアイデアも出やすく、短時間で結論が出せるという。

■各現場では「ピカ一運動」が展開された。「出前迅速(すぐやる課)一番」「新技術世界で一番」「あいさつ一番、やる気一番」「効率、機能レイアウト一番」などの活動で、半年に1回発表会と表彰が行われた。この「ピカ一運動」の中で構内の芝生はきれいに刈り込まれ、植え込みもきれいに手入れされた。

■「TSS1/2」は2年半後に達成され、2003年からの目標は「TSS1/4」となった。1999年を基準とするとトータルで8倍の生産性向上をめざすもので、現在ほゞそれを達成しつつある。

取材先 キヤノン電子(tanbouki 071
取材 2008/08/20
掲載 ポジティブ2008/10
本文 canondenshi.pdf へのリンク 

 ←セル生産現場
 
 【090503】ハッチタイトネス試験方法の改善  


三井造船は1999年からBPS(ベスト・プラクティス・シェアリング)活動を展開している。各職場・工場・事業所の小集団活動・プロジェクト活動の優秀事例を全社に応用展開し、考え方や手法のシェアリングをめざす活動で、以下は2006年夏の全社発表大会で最優秀賞を獲得した活動である。

■「5万6000トン・バルクキャリア」は玉野造船所で最もたくさん建造されている船で、これまでの受注実績は120隻を上回る。この船の甲板には、そこから船倉に荷物を積み込む四角く切り取られた5つの開口部がある。

■この開口部にハッチカバーという蓋がついている。特に穀物を積んでいるときは水が入らないよう、この蓋には厳重な水密性が要求される。その水密性を検査する工程に2つの問題があった。

■ひとつは検査の合格率が低く、3分の1が不合格だったこと。もうひとつは検査に時間がかかりすぎていること。検査は甲板から消火ホースで水をかけるのだが、準備に時間がかかり、しかも雨が降ると作業ができなかった。

■この問題の解決に品質保証部の7人のスタッフが取り組んだ。水密性検査の合格率の低さについては、様々な調査分析の結果、ハッチカバーについているベンチレーターという空気抜きの窓の塗装方法に問題があり、そこから水が漏れていることを突き止め、ベンチレーターのメーカーに塗装方法を改善させて問題を解決。合格率100%を実現した。

■検査に時間がかかりすぎているという問題については、水をかける代わりに超音波測定器で検査するという方法を考え出した。船倉の中に音源を持ち込んで超音波を発信し、外で音圧を測る。漏れてくる音の量を受信器で測定して水密性が保たれているかどうかを判断する。この方法によって検査の段取りが簡単になり、しかも雨の日でも検査ができるようになった。

取材先 三井造船玉野造船所(tanbouki 057
取材 2007/11/05
掲載 ポジティブ2008/01
本文 mitsuizosen.pdf へのリンク 

 ←建造中の5万6000トン・バルクキャリア
 
【090504】改善の蓄積をデータベース化する  

船舶は受注生産品で、航路や積荷の種類と量に応じて1隻ごとに一から設計する。三井造船玉野造船所で建造されている「56000トン・バルクキャリア」という船の場合、これまでに120隻の受注実績があり、実際には何年か前にも同じような設計をしている場合が少なくなく、その場合はその図面を取り出してきて手直ししていた。

問題は、たとえば材料の歩留まり向上のために材料取りの方法を改善し設計に反映しても、それ以前の図面に戻ればそれまでの改善成果がゼロに戻ってしまうことだった。同様にミス防止の改善、安全性向上の改善等々、現場が積み上げた改善がすべて何年か前に引き戻されてしまう。

自動車販売店では車種と型番と色が一覧表になっていて、その中から選んで注文すれば指定どおりの車が届けられる。同じことが船でもできないかと船殻設計課長の野崎修一さんは考えた。コンピュータの中で3次元CADデータの形で標準船を作り、すべての改善のデータをこの標準船データの中に蓄積する。これをベースに仕様変更する部分だけをその都度加えるようにした。課を挙げて標準船データづくりに取り組み、3年をかけて完成させた。

設計工数は大幅に削減され、従来1隻について4.5キロの重さがあった図面が、変更部分だけ現場に渡すので390グラムに激減。基本は標準船通りとし、変わる部分だけ特別仕様にするという作り方は現場の作業効率も向上させた。同社内の改善発表会で最優秀賞を獲得した事例である。

取材先 三井造船玉野造船所(tanbouki 057
取材 2007/11/05
掲載 ポジティブ2008/01
本文 mitsuizosen.pdf へのリンク

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