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小豆は日本の四季を彩る

姫路に餡菓子製造業の
御座候がある。関東で今川焼き、関西では回転焼きとよばれる庶民の餡菓子で全国ブランドを築いた会社で、北海道産の小豆を姫路の工場で餡に加工し全国の直営店に配送している。この会社が運営し、小豆と日本人との関わりを紹介したあずきミュージアムを訪ねた。

豆の中で最も生産量が多いのは大豆で、世界中で年間2億2000万トンが生産されているのに対して、小豆の生産量は年間わずか50万〜60万トン。豆としてはマイナーな存在である。しかし、日本人とのかかわりは深く、6000年前の縄文遺跡から炭化した小豆が発見されている。

日本人は小豆をただ食べていたのではない。小豆の赤い色に魔除けや幸福の意味を込めてきた。そのために、小豆はハレの日の食べ物として独特の発展をした。小豆粥、赤飯、いとこ煮、善哉、おはぎなどは四季折々の催事を祝う特別の料理だった。小豆は煮ると餡粒子を形成して餡子になるが、この性質は大豆や落花生にはない。小豆の餡子には独特の風味があり、室町時代に砂糖が入ってきてからは和菓子の材料としてなくてはならぬものとなった。

赤い小さな小豆の粒の背後には、現代人が忘れかけている意外に奥深い日本人の歴史的、文化的、民俗学的な意味が隠されている。そのことをよくわからせてくれる展示だった。