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提案制度調査  

わたしたちが仕事をするとき、もっとうまくいく方法はないかとか、もっと簡単にできないか…と、創意・工夫・改善・改革しながら仕事を進めていきます。1人で仕事をしているなら思いついたことをそのままやってみればよく、うまくいかなかったらやり直せばよい。ただ、誰かと一緒に仕事をしているときは、改善による現状変更を関係者に了解してもらわねばならず、そのために「提案」というプロセスが必要になります。組織内の改善は「提案」によってはじめて目に見えるものになります。

1973年から始まった提案制度調査が改善の取材を始めたきっかけでした。戦後、大阪府立産業能率研究所で雑誌「産業能率」編集長を勤めた山田宏氏(1923-2006)は、1956年から、当時大阪に本社のあった住友金属工業、松下電器産業、久保田鉄工、鐘紡…など、30余社の人事担当者による月1回のHR例会という勉強会を開いていました。HR=Human Relations=人間関係の意味です。そこでは従業員の参画意識を盛り上げるための方策として、朝礼、社内報、誕生会、福利厚生…などの進め方が意見交換され、その中でしばしば提案制度もテーマとして取り上げられて、メンバー企業の提案実績と推進方法についての情報交換が行なわれていました。

日本で提案制度が始まったのは、明治時代に鐘紡兵庫工場で武藤山路社長が社内報とともに提案制度をつくったのが最初です。戦後になってアメリカからTWI(Trainig Within Industry)という教育手法が導入され、その中の「改善の仕方」というコースのフォローのために、メーカー各社で提案活動が行われるようになって、産業界で一般化しました。その後、QCサークル、ZD運動、JK(自主管理)活動などの小集団活動が始まり、終身雇用による高い帰属意識を背景に、組織をあげて創意・工夫・改善・改革が行われるようになりました。ほとんどの改善は紙に書いて提案され、提案賞金の一部は職場にプールされ、勉強会や親睦会に使われました。その当時の、提案実績は、企業現場の活発さ、改善の活発さを表わす指標とみなされるようになっていました。

この事典の編者、山口幸正が山田宏氏の下で仕事をするようになった1973年の編集会議で、提案制度調査の対象をHR例会のメンバー企業以外にも広げることが決まり、HR協会の機関誌「人と経営」を全国の有名企業に送って調査への参加を呼びかけました。過去1年間にどれくらいの提案が出たか、そのうち何件が採用され、実施され、どれだけの賞金が支払われ、どれだけの経済効果が生まれたのか、どのように活動を推進しているか、どんなテーマの提案が出てきたか…それらを調査してまとめた「人と経営・提案制度特集号」は、予想以上の注目を集め、新聞雑誌でも取り上げられ、調査に参加する企業は急速に増えていきました。

 
   
人と経営・提案制度特集号1973~1984
 
企業現場取材   


調査に参加した企業からは、前年の提案実績の数値とともに、提案制度規定、提案の栞、改善事例集などを送ってもらいました。それをもとに、活発な企業を訪問し、提案制度の仕組み、推進方法、改善事例を取材して、毎年1回12年間にわたって「人と経営・提案制度特集号」をつくりました。

そんな中で、トヨタ自動車の創意くふう提案事務局を担当されていた揖斐昇(いびのぼる)氏と出会いました。揖斐氏は「創意くふう提案」で表彰された人たちと一緒に「トヨタGI(グッドアイデア)クラブ」を立ち上げ、GIクラブのメンバーたちは、自分たちの創意くふう提案を、改善前と改善後に分けて表現し、手書きの絵を添え、OHPで映し出して、みんなの前で発表していて、それを何度か取材させていただきました。

創意くふう提案活動は、現場の人たちにとって、自分たちのくふうを競い合う場であり、後輩や部下を指導するツールでした。「おやっ」と思った異常を見逃さず、現状を確認し、原因を探り、対策を考えて提案する。その中で仕事の能力が高まり、職場の中の地位も向上する。彼らは部下や後輩に改善を教え、ときには代筆までして部下たちに改善を広げていきました。それまで、提案制度という枠組みとアンケートに記入された件数しか見ていなかった私は、具体的な1件1件の提案の内容を見せてもらい、働く人たちが仕事にかける一生懸命な思いにはじめて触れたような気がしました。
www.souisha.com/kokoro/kokoro00.html

以来、トヨタ自動車や松下電器をはじめ、各社の創意・工夫・改善・改革の具体例を取材させていただき、そ取材をもとに、「提案制度マニュアル」(1978)、「アイデア開発」(1979)、「改善提案ハンドブック」(1980)…などを編集出版。1981年12月には改善提案教育誌「月刊・創意とくふう」を創刊しました。

 
 
 書籍版の発刊  


1985年、日新製鋼呉製鉄所におられた北川公彦氏から「日本小集団活動協会」という団体の事務局をやらないかと誘われたのを機に、私、山口幸正は、山田宏氏の下を離れ、日本小集団活動協会のメンバーの方々(荒木良二、揖斐昇、岡田愛家、北川公彦、榊原康明、所彰一、豊沢豊雄、中野勝征、森本昭文の各氏)とともに、(株)創意社を立ち上げました。

そして、HR例会に倣って毎月1回、小集団活動の勉強会を開催しました。しかし、小集団活動も提案制度も、その頃、最盛期を過ぎていたのかも知れません。新興団体の勉強会に参加者を集めることは、想像以上に難しく、1年間、12回の悪戦苦闘の末に継続を断念。人々を集めた会合の企画運営よりも取材編集の方に関心のあった私は、その後、「創意社」を私自身の屋号とし、日本小集団活動協会の先生たちが執筆した図書を編集出版する傍らで、人事労務、産業教育関係の雑誌に取材執筆、寄稿を続けました。

提案制度調査から始まった取材によって書き溜めた創意・工夫・改善・改革の事例が1000件を超えた1990年、それらを「絵で見る創意くふう事典」としてまとめ、トヨタ自動車を定年退職後、日本提案活動協会中部本部委員長を務められていた揖斐昇氏に監修者になってもらって、「創意社」の名前で出版しました。「絵で見る創意くふう事典」は、揖斐氏と日本小集団活動協会の先生たちから各社に紹介してもらったこともあって、改善のヒント集として好評を得て、何度か増刷し、結局4500冊を販売しました。

 
 ネット公開  

その後、「Think Up」(学研産業教育事業部刊、1986-1990)、「燃えよリーダー」(ブレーンダイナミックス刊 1992-2002)、「ポジティブ」(ブレーンダイナミックス刊 2003-2007)、「リーダーシップ」(日本監督士協会刊 2010-2025)などの産業教育誌を通じて、企業現場の創意・工夫・改善・改革事例の取材・寄稿を続け 「絵で見る創意くふう事典」の改訂を目指しました。

しかし、いつしか時代が変わってしまい、
失われた10年、20年、30年…と呼ばれる時代に突入すると、提案制度も、提案も、提案事務局も、その多くが姿を潜めてしまいました。

その一方で、IT化とグローバル化によって経済環境が大きく変化する中、中小企業経営者たちは、必死の努力を重ね、創意・工夫・改善・改革を重ねています。社員の総力を結集して変化に対応し、新技術、新製品、新事業の開拓に力を注ぎ、新たな得意先を求めて海外に出る…など、そのひとつひとつを追いかけ、話を聞き、記事を書き、その記事を事例の形にまとめて「絵で見る創意くふう事典」の改訂版をめざそうと考えました。

ただ、組織に属さない1個人が、自分自身のそれまでの仕事を見せる手段を持たないまま取材依頼しても、応じてもらうのは難しい。そこで、2007年から、書籍版の「絵で見る創意くふう事典」をインターネット上に公開し、あらたに取材した事例をその上に加えていって、少しずつ中身を充実させていくことにしました。

以来、10数年にわたって150人の経営者たちの創意・工夫・改善・改革を取材してきました。そして、その底流に流れる仕事観、人間観、生き方…に多くの学びや共感を覚え、創意・工夫・改善・改革…とは、要は、1人ひとりがどのように仕事をしてきたか、どのように世の中とかかわってきたか、どのように生きてきたかを示すものに他ならないと思うようになりました。

現役の経営者に対する取材は、OKをもらうまでに何日も、ときには何ケ月もの時間が必要です。それだけ時間をかけても最後に断られることもあります。しかし、その事績がすでに記録され公開されている歴史上の人物なら、確実に取材できる。そして、多くの人が知っていて評価の定まった人物の事績を付け加えることで、仕事というものの輪郭がより客観的になる。そこで、取材活動の最後の段階に入った2020年から、歴史上の人物の仕事と生き方を加えることにしました。

この結果、当初の想定を超えた広範な創意・工夫・改善・改革を取り込んでしまうことになりましたが、そこには、時代を超えて人々と仕事とのかかわりを見ることができると思っております。新入社員から企業幹部にまで、参考にしていただき、改善のヒント、社員の教育訓練、朝礼の話題など、いろんな場面で活用していただければ幸いです。


創意社について  


創意社
産業教材編集出版業。1985年設立。19851996年は株式会社。日本小集団活動協会事務局を引き受ける傍ら、人事労務専門誌及び社員教育誌の取材執筆の受託、社内報編集受託、独自資料教材を出版。1996~2024年、商法改正により最低資本金基準が1000万円に引き上げられたのを機に株式会社としては解散し、以後山口幸正が「創意社」を屋号として取材執筆編集活動を行っています。2024年8月、書籍版「改善の事典」の発刊計画に伴って、再度株式会社化。
●雑誌取材執筆受託:
労務行政研究所編「労政時報」(19852012)、「月刊シルバー人材センター」(1987~2018)、学研産業教育事業部編「THINK UP」(19861990)、ブレーンダイナミックス編「燃えよリーダー」(19922003)、「ポジティブ」(20032009)、日本監督士協会編「リーダーシップ」(2010~2025)、日刊工業新聞社刊「工場管理」「プレス技術」など。
●単行本資料教材執筆受託:
「小集団活動実践事例集」「異業種交流事例集」(以上アーバンプロデュース)、「力強い提案活動の進め方」(PHPスライド教材)、「改善提案を100倍楽しむ本」「改善・アイデア開発ポイント集」「面白雑学大図鑑」「改善を10倍アピールする本」(以上学研産業教育事業部)、「あなたが主役になる身近なコストダウン」「現場力を強める『見える化』」「見える化・スッキリ職場づくり」「リーダーが引っ張る改善・提案」(以上日本監督士協会)など。
独自資料教材出版:
「提案の心と創造の心」(揖斐昇著)、「人事考課マニュアル」(森本昭文著)、「みんなでやろうTQC」(荒木良二著)、「絵で見る創意くふう事典」(揖斐昇監修)、「提案制度の現状と今後の動向」、「提案力を10倍アップする発想法演習」「提案審査表彰基準集」「ポストバブル期の小集団活動推進事例集」、「改善審査表彰基準集」、「オフィス改善事例集」、2024年書籍版「改善の事典」を発刊。
山口幸正:
1943
年兵庫県宝塚市生まれ。1968-1973ゼネラルフーヅ(株)人事部勤務、1973-1985㈱近代経営社勤務を経て、1985年、創意社を設立。2024年8月(株)創意社代表取締役。

  
 
リンク先  

「仕事の事典(旧題・絵で見る創意くふう事典)」インターネット版は、次の各社のご支援をいただいており、その了承を得て、各社の刊行物所載の山口の取材執筆記事、事例を当サイトに再掲載しております。


日本監督士協会(http://www.kantokushi.or.jp/)
社員教育誌「リーダーシップ」の発行元
ブレーン・ダイナミックス(http://www.brain-d.co.jp/)
社員教育誌「燃えよリーダー」「ポジティブ」の発行元
日本HR協会(http://www.hr-kaizen.com/)
社員教育誌「自己啓発」「創意とくふう」の発行元
労務行政(http://www.rosei.jp/)
人事労務専門誌「労政時報」「月刊シルバー人材センター」の発行元
学研産業教育事業部
社員教育誌「Think Up」の発行元
 お問合せ先
●創意社所在地:〒666-0001 兵庫県川西市鴬の森町6-19  
TEL&FAX 072-759-0333  
Eメール yamaguchi@souisha.com
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