三井・三菱を凌ぐことをめざした金子直吉翁の事績を訪ねて
■1914（大正３）年に勃発した第一次大戦で、ヨーロッパでは物資が不足し、日本がその需要に応えた。その先頭に立ったのが神戸の鈴木商店で、アメリカから鉄を買い付け、神戸の造船所で船をつくって、ヨーロッパに売り込んだ。
■「互いに商人としてこの大乱の中で生れ、世界的商業に関係せる仕事に従事し得るは、無上の光栄」と鈴木商店の大番頭、金子直吉は社員にその意義を説いた。
■「たとえば、豆が戦争にためにどうなるか、戦後の樟脳の需要がどうなるか、当店の取り扱い係るものないし、日本の商売に関係ある砂糖、米、石炭、船、樟脳、薄荷などの需要の変遷の報告が必要なり」と海外駐在員の具体的な指示を与えている。
■さらに「この戦乱の変遷を利用し大儲けをなし、三井・三菱を圧倒するか、然らざるも彼等と並んで天下を三分するか、これを全員の理想とするところなり。行け、まっしぐらじゃ」と社員を鼓舞した。事実、1915年の年商は三井・三菱を上回り、1917年には国家予算の2倍に達し、1917年にはGNPの１割に達した。
■だが、1918（大正７）年に富山県で起こった米騒動が神戸に飛び火して群衆が蜂起。鈴木商店が米を隠しているという新聞報道を信じた受けた民衆によって、本社が焼き討ちに会い、９年後の1927年には金融恐慌で資金調達が出来なくなって、会社は清算された。
■現在、鈴木商店の流れを汲む会社として、双日、神戸製鋼所、帝人などがある。
●本文 kaneko-naokichi.pdf へのリンク
●取材先 鈴木商店記念館
（https//www.suzukishoten-museum.com)
●参考文献 城山三郎著「鼠・鈴木商店焼き討ち事件」（文春文庫2011）
●掲載先 日本監督士協会編 リーダーシップ 2024年10月号
鈴木商店本店跡地の碑（神戸市中央区栄町通）。画像クリックで本文表示
「改善の事典」の関連事例
●的確な報告を要求する→ http://www.souisha.com/jirei12/120108
●三井・三菱の圧倒を目標に掲げる
http://www.souisha.com/jirei12/120214