絵で見る創意くふう事典  》 第14章 社会  》 D就労困難者に働く場を提供する
 
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組織‐1405 D就労困難者に働く場を提供する BACK


 このページの掲載事例→           ●140501 引きこもりの子供たちを預かる  
 ●140502 就労困難者雇用を社会的責任と位置付ける
 ●140503 障害者の働きでウエスをリサイクルする 
 ●140504 知的障害者を雇用する  
 ●140505 ホームレスを雇用する  
 ●140506 外国人難民を雇用する 
 ●140507 知的障害者の一生懸命な仕事ぶりを発信する
 
【140501】 引きこもりの子供たちを預かる  


■滋賀県犬上郡豊郷町でガソリンスタンドを展開する油藤商事の青山裕史専務は、ある中学校の先生から頼まれて、不登校で社会への適応が難しい子供を預かっている。

■ガソリンスタンドは、朝は早く、夏は暑く、冬は寒く、その中で油まみれになりながら働く3K職場であり、お客さまには「ありがとうございました」と頭を下げ、最少限の接客応対が要求される。それが不登校で引き籠ってしまった子供たちに社会性を身につけさせ、社会で生きていく自信を植えつけえる。

■現在預かっている子は4人目。それまでの子供には「お前、ウチの社員にならんか?」というと「いや、ちゃんと高校を出て大学へ行きたい」と言い、「そうか。それやったら行け、応援したるわ」と送り出したという。

■そうした子供たちを見守りながら一緒に仕事をしていることは、他の従業員の気持を間違いなく優しくし、間違いなく勤労意欲を高めているという。 

取材先 油藤商事
取材 2013/04/18
掲載 リーダーシップ2013/06
本文 
aburatou.pdf へのリンク


↑ガソリンスタンド全景(左)と給油作業
 
【140502】就労困難者雇用を社会的責任と位置付ける  

2000年、渡邉幸義さんは、システム関連事業請負、ITエンジニア派遣、IT教育受託を目的とする会社、「アイエスエフネット」を立上げ、即戦力となるITエンジニア経験者を雇い入れるために、採用面接を行った。しかし、期待したほどの人数が集まらず、さらに応募者の態度に問題があると感じて、やむなく未経験者の募集に切り変えた。

■未経験者だったから、履歴書にはこだわらず、じっくり人物を観察した。彼らは、素直で、謙虚で、それでいてやる気にあふれていた。彼らの採用を決めてから、それまで何をしていたのかを聞くと、家で引き籠っていたとか、フリーターだったとか、発達障害があるという人もいた。「こんなに素直でいい人が、これまで世の中で認められてこなかった。よし、俺がこの人たちを世の中の役に立つ人材に育てていこう」と渡邉さんは決心した。

■未経験者にITエンジニアの資格を取らせるのに1人50万円かかる。それだけの資金がなかった。そこで、資格取得の暁には、彼らを派遣することで得られる1年間の収益の半分を支払うという条件で教育を引き受けてくれる教育機関をなんとか探し出し、彼らに資格を取得させ、ようやく事業が軌道に乗った。

■@ニート、フリーター、AFDM(Future Dream Member。未来の夢を実現するメンバーの意味で、同社では障害者をこう呼んでいる)、Bワーキングプア、C引きこもり、Dシニア…同社ではこれらを「5大採用」と呼び、採用に当たって、そのことを理由に不合格にしないと決めている。その後、さらに、障害者手帳を保持していない軽度障害者、DV被害者、難民…などにまで範囲を広げ、それら就労困難者に積極的に受け入れることを自社の社会的責任と位置づけ、そのことを内外に宣言している。現在2700人の社員のうち、それらに該当する就労困難者は1000人に上る。

取材先 アイエスエフネット
取材 2013/07/24
掲載 リーダーシップ2013/09
本文 isfnet.pdf へのリンク

 
↑障害を持った社員の就労風景(左)と清掃ボランティア活動
 
【140503】 障害者の働きでウエスをリサイクルする  


■工場の機械油を拭き取るウエスは、かつて綿の古着が使い捨てされていたが、1996年、ISO14001の環境マネジメントシステム認証制度が始まってから、ウエスは回収され、汚れを洗い落として再利用されるようになった。

■日本ウエストン(岐阜市)はこのウエスのレンタル事業を展開しており、ウエスの回収→洗浄→選別→出荷の工程で、身体障害、知的障害、精神障害など、様々な障害を持った多くの人たちが働いている。

■近くの精神病院の医師から依頼されて、退院した患者を受け入れたのが最初だったが、その後、日本ウエストン創業者の臼井清三氏が立ち上げた障害者の施設、社会福祉法人清穂会の障害者たちを受け入れることで、同社は十分な労働力を確保している。同社に発注することは、ウエスのリサイクルを通じて地球環境の悪化を食い止め、ノーマライゼーション(社会的弱者の社会参加推進)に貢献する選択であると、同社はPRしている。

取材先 日本ウエストン
取材 2014/11/27
掲載 リーダーシップ2015/01
本文 
weston.pdf へのリンク

 
↑ウエスと手袋の分別作業(左)とウエスと手袋の洗浄機
 
 【140504】 知的障害者を雇用する   


■公共施設の清掃作業を受託している美交工業の福田久美子専務は、知的障害者の支援団体から勧められたのをきっかけに2003年から知的障害者を受け入れ、次のような条件整備を進めて、徐々に受け入れ人数を増やしていった。

@現場責任者に障害者ケアの講習を受けさせて、専任支援者に任命した。

A各現場で月1回支援会議を開催。知的障害者支援団体スタッフにも参加してもらって障害者の勤務の様子を確認。こんなときどうしたらよいかという専任支援者の相談に応じている。

B人が多いところは苦手…など、障害者の特性に配慮し、1人ひとりの得手・不得手を見極め、仕事の分担や組み合わせを工夫して、障害者から1人分の仕事量を引き出す条件を探った。

Cマニュアルに絵や写真を入れて障害者にも理解しやすくした。

取材先 美交工業
取材 2015/06/05
掲載 リーダーシップ2015/08
本文 bikoh.pdf へのリンク

 ←大阪市庁舎の清掃作業
 
【140505】 ホームレスを雇用する  


■美交工業は、知的障害者に続いてホームレスの雇用も始めた。同社は大阪市内の小規模公園の清掃も受託してい7が、その公園にボームレスが野宿していて、彼らから使い古しの箒を譲ってほしいと言われたことがあった。そのとき、ホームレスたちが公園をきれいにしようとしているのだったら、彼らを雇い入れて賃金を払えば、ホームレス状態から脱出させる手伝いができるのではないか…と福田久美子専務が考えたのが最初だった。

■ホームレス支援団体とコンタクトを取り、支援団体から声をかけてもらい、採用面接にも立ち会ってもらって、働く意思があるというホームレスたち採用した。

■賃金は月給制だが、彼らはほとんど現金を持っていなかった。そこで、18000円の日当のうち一部を現金で支払い、残りを所定の月給日に支払うことにした。また、自分で銀行口座を開設できない人が多いので、賃金の一部を社内預金し、敷金を貯めてアパートに入居することを勧めている。

■1日中草刈りして、汗をかき、その後、浴びるほどビールや酒を飲んで、野宿し、体中から悪臭を発散させている人がいた。それを直接注意すべきかどうか社内で議論があったが、支援団体とも相談して、「周りが我慢することはない。きちんと風呂に入るよう、はっきり要求すべきだ」ということになった。以来、はっきりと入浴を要求するようになって、悪臭を発する人はいなくなった。

■こうして、多くの人がホームレス生活からの脱出を果たし、その後、他の公園の指定管理者とも連携して、総勢500人のホームレスたちに就労体験への参加を呼びかけ、その多くが就職して、公園のホームレスを減らすことにつながっている。

取材先 美交工業
取材 2015/06/05
掲載 リーダーシップ2015/08
本文 bikoh.pdf へのリンク

←久宝寺緑地「心字池」の清掃活動
 
【140506】 外国人難民を雇用する   


■鋳造業、栄鋳造所(東京都八王子市)は従業員29人のうち6人が外国人である。2007年に3人のインドネシア人を研修生として受け入れたのが最初だった。3人は3年でようやく日本語を話せるようになり技術も身についたが、研修期間が満了して帰国。その後のフォローでその技術を役立てている者が1人もいないことがわかった。

■そこで、2010年以降、難民または難民申請中の外国を雇用することに切り替えた。難民認定申請中の外国人は、その結果が出るまで「特定活動」という在留資格が与えられ、就労が可能になるが、難民申請の結果が出るまで6カ月ごとに特定活動の更新を行わねばならず、その間「医職住」について国からの支援はなく自身の力で生活を支えていかねばならないから、それだけに彼らの働きは真剣そのものである。

■これまでにミャンマー人、イラク人、シリア人、カメルーン人を雇用しており、最近は海外の大学からのインターンシップの学生も受け入れ、社員とともに実務経験を積んでもらっている。彼らの中には母国語のほかに数ヵ国後を話せる人もいて、同社が海外戦略を展開する中、世界中からの鋳造の依頼に対応するのに役立っている。

取材先 栄鋳造所
取材 2016/02/09
掲載 リーダーシップ2016/04
本文 sakae.pdf へのリンク 

 
↑栄鋳造所の外観(左)と鋳造作業
 
【140507】 知的障害者の一生懸命な働きぶりを発信する    

1959年、チョークのメーカー、日本理科学工業の大山康弘社長は養護学校の先生から依頼されて、知的障害を持った生徒2人の就業体験を受け入れた。2人は目を見張るほどの一生懸命さで働き、一緒に働いていた従業員の進言もあって採用を決めた。大山氏は当初2人の一生懸命さの理由を理解できなかったが、ある僧侶の「人の究極の幸せは、愛されること、褒められること、人の役に立つこと、人から必要とされることである」という言葉で、はじめて

合点がいき、以後、毎年養護学校の卒業生を受け入れるようになった。

■その後、知的障害者たちの働きぶりを外に向けて積極的に発信してきた。それによって世間の注目を浴び、多くの人々が障害者たちの一生懸命さに打たれ、支援を申し出る人が次々現れた。北海道美唄市からは工場誘致の誘いがあり、それが縁で北海道立工業試験場の協力を得て、産業廃棄物だった帆立の貝殻の炭酸カルシウムをチョークに利用する技術を開発した。障害者多数雇用モデル工場融資制度を利用した本社工場建設の計画を立てたとき、金融機関の保証が必要だったが、取引のあった信用金庫から保証を断られ途方に暮れたが、同社の知的障害者雇用を知った都市銀行が保証を引き受けてくれた。また、需要の低迷するチョークに代わる新製品「キットパス」(パラフィンを使ったクレヨンのような筆記具)は、川崎市の助言で産学連携の助成金制度を利用し、早稲田大学の協力を得て開発されたものである。

■大山隆久現社長は、当初、障害者を中心とした会社運営はあえて重い荷を背負っているような気がして、会社を強くするには健常者を中心とした体制にすべきではないかと思っていた。しかし、今はこの会社が受けてきたさまざまな幸運はすべて、障害者たちの一生懸命な働きがもたらしたものだと思うようになった。この会社から障害者雇用を取り去ったら何も残らない。この障害者たちの働きぶりをもっともっと知ってもらうことこそ、自分たちの使命だと考えているという。 

取材先 日本理化学工業
取材 2016/12/07
掲載 リーダーシップ2017/02

本文 rikagaku.pdf へのリンク 

 
↑チョーク工場の梱包工場(左)と新製品の「キットパス」
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