絵で見る創意くふう事典 》 第14章 社会 》 E就労困難者に働く場を提供する | ||||||||
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社会‐1406 E就労困難者に働く場を提供する | ||||||||
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このページの掲載事例→ | ●140601 引きこもりの子供たちを預かる | |||||||
●140602 就労困難者雇用を社会的責任と位置付ける | ||||||||
●140603 障害者の働きでウエスをリサイクルする | ||||||||
●140604 知的障害者を雇用する | ||||||||
●140605 ホームレスを雇用する | ||||||||
●140606 外国人難民を雇用する | ||||||||
●140607 知的障害者の一生懸命な仕事ぶりを発信する | ||||||||
●140608 オリジナル商品に「マツボックリ3兄弟お仕事シール」を貼る | ||||||||
●140609 精神障害者に安心して働ける仕事を提供する | ||||||||
●140610 障害者のためのビジネススクールを開講する | ||||||||
●140611 非行少年少女たちに働く場を提供する | ||||||||
●140612 子連れ出勤で女性の社会進出を促す | ||||||||
●140613 被災した村人のために堤防を築く | ||||||||
●140614 視覚障がい者の手で無線機部品を製造する | ||||||||
【140601】 引きこもりの子供たちを預かる | ||||||||
■ガソリンスタンドは、朝は早く、夏は暑く、冬は寒く、その中で油まみれになりながら働く3K職場であり、お客さまには「ありがとうございました」と頭を下げ、最少限の接客応対が要求される。それが不登校で引き籠ってしまった子供たちに社会性を身につけさせ、社会で生きていく自信を植えつけえる。 ■現在預かっている子は4人目。それまでの子供には「お前、ウチの社員にならんか?」というと「いや、ちゃんと高校を出て大学へ行きたい」と言い、「そうか。それやったら行け、応援したるわ」と送り出したという。 ■そうした子供たちを見守りながら一緒に仕事をしていることは、他の従業員の気持を間違いなく優しくし、間違いなく勤労意欲を高めているという。
取材先 油藤商事 |
ガソリンスタンド全景(上)と給油作業 |
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【140602】就労困難者雇用を社会的責任と位置付ける | ||||||||
■2000年、渡邉幸義さんは、システム関連事業請負、ITエンジニア派遣、IT教育受託を目的とする会社、「アイエスエフネット」を立上げ、即戦力となるITエンジニア経験者を雇い入れるために、採用面接を行った。しかし、期待したほどの人数が集まらず、さらに応募者の態度に問題があると感じて、やむなく未経験者の募集に切り変えた。 ■未経験者だったから、履歴書にはこだわらず、じっくり人物を観察した。彼らは、素直で、謙虚で、それでいてやる気にあふれていた。彼らの採用を決めてから、それまで何をしていたのかを聞くと、家で引き籠っていたとか、フリーターだったとか、発達障害があるという人もいた。「こんなに素直でいい人が、これまで世の中で認められてこなかった。よし、俺がこの人たちを世の中の役に立つ人材に育てていこう」と渡邉さんは決心した。 ■未経験者にITエンジニアの資格を取らせるのに1人50万円かかる。それだけの資金がなかった。そこで、資格取得の暁には、彼らを派遣することで得られる1年間の収益の半分を支払うという条件で教育を引き受けてくれる教育機関をなんとか探し出し、彼らに資格を取得させ、ようやく事業が軌道に乗った。 ■@ニート、フリーター、AFDM(Future Dream Member。未来の夢を実現するメンバーの意味で、同社では障害者をこう呼んでいる)、Bワーキングプア、C引きこもり、Dシニア…同社ではこれらを「5大採用」と呼び、採用に当たって、そのことを理由に不合格にしないと決めている。その後、さらに、障害者手帳を保持していない軽度障害者、DV被害者、難民…などにまで範囲を広げ、それら就労困難者に積極的に受け入れることを自社の社会的責任と位置づけ、そのことを内外に宣言している。現在2700人の社員のうち、それらに該当する就労困難者は1000人に上る。 取材先 アイエスエフネット |
障害を持った社員の就労風景(上)と 清掃ボランティア活動 |
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【140603】 障害者の働きでウエスをリサイクルする | ||||||||
■日本ウエストン(岐阜市)はこのウエスのレンタル事業を展開しており、ウエスの回収→洗浄→選別→出荷の工程で、身体障害、知的障害、精神障害など、様々な障害を持った多くの人たちが働いている。 取材先 日本ウエストン |
ウエスと手袋の分別作業(上)と ウエスと手袋の洗浄機 |
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【140604】 知的障害者を雇用する | ||||||||
@現場責任者に障害者ケアの講習を受けさせて、専任支援者に任命した。 A各現場で月1回支援会議を開催。知的障害者支援団体スタッフにも参加してもらって障害者の勤務の様子を確認。こんなときどうしたらよいかという専任支援者の相談に応じている。 B人が多いところは苦手…など、障害者の特性に配慮し、1人ひとりの得手・不得手を見極め、仕事の分担や組み合わせを工夫して、障害者から1人分の仕事量を引き出す条件を探った。 Cマニュアルに絵や写真を入れて障害者にも理解しやすくした。 取材先 美交工業 |
大阪市庁舎の清掃作業 |
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【140605】 ホームレスを雇用する | ||||||||
■ホームレス支援団体とコンタクトを取り、支援団体から声をかけてもらい、採用面接にも立ち会ってもらって、働く意思があるというホームレスたち採用した。 ■賃金は月給制だが、彼らはほとんど現金を持っていなかった。そこで、1日8000円の日当のうち一部を現金で支払い、残りを所定の月給日に支払うことにした。また、自分で銀行口座を開設できない人が多いので、賃金の一部を社内預金し、敷金を貯めてアパートに入居することを勧めている。 ■1日中草刈りして、汗をかき、その後、浴びるほどビールや酒を飲んで、野宿し、体中から悪臭を発散させている人がいた。それを直接注意すべきかどうか社内で議論があったが、支援団体とも相談して、「周りが我慢することはない。きちんと風呂に入るよう、はっきり要求すべきだ」ということになった。以来、はっきりと入浴を要求するようになって、悪臭を発する人はいなくなった。 ■こうして、多くの人がホームレス生活からの脱出を果たし、その後、他の公園の指定管理者とも連携して、総勢500人のホームレスたちに就労体験への参加を呼びかけ、その多くが就職して、公園のホームレスを減らすことにつながっている。 取材先 美交工業 |
久宝寺緑地「心字池」の清掃活動 |
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【140606】 外国人難民を雇用する | ||||||||
■そこで、2010年以降、難民または難民申請中の外国を雇用することに切り替えた。難民認定申請中の外国人は、その結果が出るまで「特定活動」という在留資格が与えられ、就労が可能になるが、難民申請の結果が出るまで6カ月ごとに特定活動の更新を行わねばならず、その間「医職住」について国からの支援はなく自身の力で生活を支えていかねばならないから、それだけに彼らの働きは真剣そのものである。 ■これまでにミャンマー人、イラク人、シリア人、カメルーン人を雇用しており、最近は海外の大学からのインターンシップの学生も受け入れ、社員とともに実務経験を積んでもらっている。彼らの中には母国語のほかに数ヵ国後を話せる人もいて、同社が海外戦略を展開する中、世界中からの鋳造の依頼に対応するのに役立っている。 取材先 栄鋳造所 |
栄鋳造所の外観(上)と鋳造作業 |
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【140607】 知的障害者の一生懸命な働きぶりを発信する | ||||||||
合点がいき、以後、毎年養護学校の卒業生を受け入れるようになった。 ■その後、知的障害者たちの働きぶりを外に向けて積極的に発信してきた。それによって世間の注目を浴び、多くの人々が障害者たちの一生懸命さに打たれ、支援を申し出る人が次々現れた。北海道美唄市からは工場誘致の誘いがあり、それが縁で北海道立工業試験場の協力を得て、産業廃棄物だった帆立の貝殻の炭酸カルシウムをチョークに利用する技術を開発した。障害者多数雇用モデル工場融資制度を利用した本社工場建設の計画を立てたとき、金融機関の保証が必要だったが、取引のあった信用金庫から保証を断られ途方に暮れたが、同社の知的障害者雇用を知った都市銀行が保証を引き受けてくれた。また、需要の低迷するチョークに代わる新製品「キットパス」(パラフィンを使ったクレヨンのような筆記具)は、川崎市の助言で産学連携の助成金制度を利用し、早稲田大学の協力を得て開発されたものである。 ■大山隆久現社長は、当初、障害者を中心とした会社運営はあえて重い荷を背負っているような気がして、会社を強くするには健常者を中心とした体制にすべきではないかと思っていた。しかし、今はこの会社が受けてきたさまざまな幸運はすべて、障害者たちの一生懸命な働きがもたらしたものだと思うようになった。この会社から障害者雇用を取り去ったら何も残らない。この障害者たちの働きぶりをもっともっと知ってもらうことこそ、自分たちの使命だと考えているという。 取材先 日本理化学工業 |
チョーク工場の梱包工場(上)と 新製品の「キットパス」 |
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【140608】 オリジナル商品に「マツボックリ3兄弟お仕事シール」を貼る | ||||||||
■障害者たちが受け取る加工賃は、当初月に2000〜3000円に過ぎなかったが、これにより3〜4万円にまで改善した。 ■「マツボックリ3兄弟お仕事シール」によって「ベルハンマー」を購入した人たちは間接的に障害者たちを支援することになり、スズキ機工は企業イメージを高めることになる。その対価が障害者施設に支払う30円であり、2017年度、その総額は460万円に上った。 ■中小企業にとって利益の中から460万円を寄付するのはかなり厳しいが、シールを張ることで、売り上げが伸びれば伸びるほど寄付が増えるという形なら、乗りやすいと感じてくれる中小企業は多いのではないか、社長の鈴木豊さんはそう言って、このプロジェクトへの賛同者を募っている。 取材先 スズキ機工 |
「マツボックリ3兄弟お仕事シール」(上)と貼付作業 |
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【140609】 精神障害者に安心して働ける仕事を提供する | ||||||||
■そのために、家族会の支援で、精神障害者たちが参加して、公園清掃、バザー、イベント会場での水餃子販売を始めた。家族は無償奉仕。精神障害者たちにはわずかだが報酬を支払った。 ■集まった資金で、2000年には東京都の半額補助で障害者グループホームを開設。2002年には多摩市の補助を受けて同市内に寒天茶房の店を出店。メニューや調理方法を工夫し、店内での文化人トークショーを開催し、メディアに発信して集客。地域での認知度を高め、2004年にはNPO法人「多摩くさむらの会」として認定された。 ■2006年に施行された障害者自立支援法によって障害者が市域を超えて通所先を選べるようになったことで、多くの精神障碍者が市域を超えて「多摩くさむらの会」に登録を申し込み、これにより行政からの給付金が飛躍的に増大し、事業を拡大した。 ■現在は、レストラン、和菓子製造販売、総菜・弁当製造販売、公園清掃、農園、パソコン教室、インテリア小物製作販売…などの事業を展開。多くの精神障害者が自分たちのやりたい仕事を選んで自分たちのペースで働いている。 取材先 多摩くさむらの会 |
農園夢畑の大根洗い作業(上)と パソコン教室夢像でのパソコン作業 |
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【140610】 障害者のためのビジネススクールを開講する | ||||||||
■ビジネスマナー、パソコン講座、コミュニケーション,マーケティング、自己実現…など、障害者が就職しようと思ったときに必要となる知識・技能・マナーを教えるもので、1回の参加者は6〜7人。3人は営業活動の合間に交代で講師をつとめた。 ■障害者やその家族と接するうちに、もっと小さいころから対人関係能力や社会性を育てることが大切だと思うようになり、障害を持った小中学生を対象とした「情熱・テラコヤ塾」、児童福祉法に基づく「放課後デイサービス・テラコヤキッズ」、中高生向け職業体験カリキュラム「テラジョブ」などを開講した。 ■現在はこれらと並行して、障害者のための雇用創出事業として、障害者専用の求人サイト「BABナビ」、休職中の障害者と障害者を採用しようとする企業を一堂に集めた合同就職・転職イベント「BABカンファレンス」、障害者の定着支援事業「ワクサポ」、障害者たちが自宅で行うテレワークを支援するシステム「エンカク」などを展開している。 取材先 D&I |
テラコヤキッズ |
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【140611】 非行少年少女たちに働く場を提供する | ||||||||
■犯罪や非行で保護観察処分となった少年少女が再び罪を犯す例が少なくない。そして再犯者の多くは無職者である。仕事がなく住むところがないから再び罪を犯す。このことから、彼等に就労機会を提供することが何よりの再犯防止策といわれ、こうした事情を理解したうえで彼らを雇用する事業主が求められている。 ■野口義弘社長は、少年時代に食べるものにもこと欠くほどの貧困に陥ったとき、地域の人たちに助けられた経験があり、その恩と愛情にお返しをしたいという思いから、非行少年少女の雇用を始めたという。 取材先 野口石油 |
野口社長と従業員たち(上)と片野給油所外観 |
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【140612】 子連れ出勤で女性の社会進出を促す | ||||||||
■電車の中で子供がおっぱいを欲しがり、人目をはばかりながら授乳したことがきっかけで、光畑由佳さんは着たまま授乳できる授乳服を工夫し、それを製造販売するモーハウスという会社を起こした。この会社の縫製や事務のスタッフとして子育て中のお母さんたちに子連れで出勤してもらっている。 ■授乳服販売を通じて女性の社会進出を応援するために、次のような活動を行っている。 取材先 モーハウス |
子連れ出勤(上)とママまつり授乳ショー |
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【140613】 被災した村人のために堤防を築く | ||||||||
■彼らに仕事を提供する目的もあり、梧陵は紀州藩の許可を得て、海岸に高さ5m、根幅20m、長さ600mの新たな堤防を築いた。工事に必要な人数は1日に400〜500人、延べ5万6000人。家と仕事を失った村人たちがその仕事に従事した。 ■梧陵はその日当を負担したが、7代にわたるヤマサ醤油の経営で築いた財産がその資金となった。 ■この堤防は90年後の1946(昭和21)年の南海地震による津波防災に大きな威力を発揮したという。 取材先 稲むらの火の館 |
広村堤防 |
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【140614】 視覚障がい者の手で無線機部品を製造する | ||||||||
■シャープ創業者の早川徳次翁は子供の頃、養子に出され、過酷な少年時代を送った。その頃の徳次少年を何かと気遣ってくれた「おせい」という盲目の女性がいた。 ■関東大震災以来消息が分からなくなり、そのことがずっと気がかりだったが、あるとき、大阪盲人協会から電気の話と実演を依頼され、それを引き受けたことがきっかけとなって盲人協会の礼拝所の中に工場をつくり、視力障がい者たちの手で無線機の部品の製造を始めた。 ■この工場は1950(昭和25)年に法人化して「特選金属工業」という会社となり、現在は「シャープ特選工業」という名前で、様々な障がいを持つ人たちによって運営されている。 取材協力:シャープミュージアム 取材:2022/04/27 |
早川特選金属工業の作業風景 |
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