改善の事典  》 第12章 組織  》 仕事と生活を両立させる
 
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組織‐1211a 仕事と生活を両立させる BACK


 このページの掲載事例→            ●1211a01 女性だけでなく男性も家事を分担すべき  
●1211a02 仕事と子育てを両立しやすくする 
●1211a03 社員各層の提言でワークライフバランスを改善
●1211a04 病院内に保育所を開設する
●1211a05 みんなで力を合わせて雇用を守る
●1211a06 女性の働きやすさを追求する
●1211a07 人を働かせる会社からみんなが幸せを求めて働く会社へ
●1211a08 社員の独立を支援する
●1211a09 乗務員のための社宅をつくる
●1211a10 女性労働者たちの寄宿舎を改善する
 
【1211a01】 女性だけでなく男性も家事を分担すべき  


■藤浪芳子さんは幼い子供たちを育てながら昭和精機の社長になった。

■子供を持った女性はどんな時でも家庭を気遣いながら仕事をしている。男性は、これに対して、家庭を女性に任せ、すべてを仕事に打ち込んでいる。だから、女性は男性に従うべきと言うのは間違っていると藤浪さんはいう。

■国難ともいうべき少子化から抜け出すには、女性だけに家事を押し付けるのはやめ、男性も半分それを担うことしか解決方法はない。

■この考え方から、同社では、育児休業法(1992年)以前から、出産や育児や介護でフルタイム勤務ができなくなった女性社員たちの事情に応じてパート勤務に切り替え、復帰できるようになれば元通り正社員に復帰させている。パートで採用した人たちも、フルタイム勤務ができるようになれば、面談して希望通りの勤務を認めている。



取材先 昭和精機
取材 2018/09/27
掲載先 リーダーシップ2018/11
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki209.html

 
昭和精機の70周年記念祝賀会(中央が藤浪さん)
 
【1211a02】 仕事と子育てを両立しやすくする  

■クロスカンパニーの石川康晴社長は、一旦社員になった人には、できればいつまでもこの会社で働いてもらいたいと考えた。

■そのため、子供がまだ小さい間は、正社員の身分のまま、1日4時間だけの勤務を選択できるようにした。

■4時間なら仕事と子育てを両立させやすく、預かってもらえる施設も比較的見つけやすいからだ。

■販売員は若い女性に限ると考える経営者が多い中、石川さんは「年齢は関係ない」という。

■「私たちは団塊ジュニアとともにマーケットを作ってきています。団塊ジュニアが40代になれば40代向けの、50代になればシニア向けのブランドを作っていけばいい。結婚して、子供を生んで、子育てして、人生経験を積んだ女性にしかつかめないお客様の心もある」という。

取材先 クロスカンパニー
取材 2008/04/30
掲載 ポジティブ2008/0
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki066.html

 
クロスカンパニーの店舗
 
 【1211a03】 社員各層の提言でワークライフバランスを改善  


■日立ソフトウェアエンジニアリングは、2006年、採算の悪化による従業員のモチベーションの回復をめざして「ブレークスルー作戦」を展開。その一環として、女性・若手・シニアのワーキンググループの提言に基づいて、次のようなワークライフバランス改善を行なった。

■育児期間中の短時間勤務の利用は従来小学校入学まで、勤務時間は6時間と決まっていたが、女性ワーキンググループの提言により、次のように改められた。

@育児期間中の短時間勤務は4時間・5時間・6時間・7時間を選択でき、小学校卒業まで利用可能。

A育児休職期間は最長2年、小学校1年生が終わるまでの間に通算3年間。

B休職期間中も会社の情報に触れることができるよう、セキュリティPCを貸与する。

■若手グループの提言により、長時間残業縮減のために、

@2カ月連続80時間以上残業を行なった者を経営会議に報告。仕事の分担を変えるなどの改善計画を提出させる。

A退社は21時まで。それ以上残業する場合は部長の許可を得る。

Bプロジェクトが終わったら2日以上の「プロジェクト年休」をとる。

■シニアグループの提言により、健康管理とコミュニケーション推進のために、

@産業医による体の健康と心の健康の講話会開催。

A健康診断100%受診の徹底

B血圧や血糖値の基準値を越える社員は残業禁止。

Cメンタル疾患社員は、リハビリ可能の診断書があり、本人・上司・産業医の3者面談で就業可能とされた場合のみ復帰させる。

D万歩計で歩数を競い合い、フロアに血圧計を置いて、健康づくりへ意識を高める。

E社内コミュニケーションを高めるために、上司との懇談会、職場横断型懇談会開催のために13000円の補助金を支給する。

F合宿研修会を復活。

G全社スポーツフェスティバルの復活。

■これらの改革の結果、業績はV字回復。残業時間削減、退職率低下、総合職の女性社員割合向上などの効果が明らかとなり、2007年、社会経済生産性本部の第1回ワークバランス大賞・組織内活動表彰優秀賞を受賞した。

取材先 日立ソフトウェアエンジニアリング
取材 2009/01/19
掲載 ポジティブ2009/03
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki082.html

 
女性ワーキンググループの会議
 
【1211a04】 病院内に保育所を開設する  

益田地域医療センター医師会病院では、事業規模拡大に伴って看護師の人数が拡大。その人たちの結婚や出産が重なって急速に離職率が高まった。

■そこで、2006年に院内保育所を開設。

離職率は16.7%から4.17%にまで低下した。
 

取材先 益田地域医療センター医師会病院
取材  2012/04/18
掲載  リーダーシップ2012/06
探訪記  
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki131.htm


院内保育所
 
【1211a05】 みんなで力を合わせて雇用を守る   

■理美容店40店を展開する潟Iオクシの千葉市稲毛海岸の店舗は、2011年、東日本大震災で液状化によって床上まで泥が上がり、停電で照明・エアコン・ヘアドライヤーも使えなくなり、営業できない日々が続いた。

■同業者の多くはパートタイマーを解雇して切り抜けようとしたが、大串哲史社長は、「当社は従業員の物心両面の幸せを追求する。社員もパートの雇用も保証する」と宣言した。

■全店の店長が協力してパートたちの仕事場の確保に奔走。各店舗の運営状況を見える化し、電気の復旧した店の店長は、それを見て応援派遣の受け入れ先を求め、通常通り営業している店舗は、できる限りその人たちを受け入れた。

■各店舗の横のコミュニケーションによって、全従業員の仕事が確保され、雇用が維持された。この経験は従業員たちに自分たちは家族という意識を強くした。

取材先 オオクシ
取材 2015/02/23
掲載 リーダーシップ2015/04
探訪記 
 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki166.html


オオクシの接客マナー研修
 
【1211a06】 女性の働きやすさを追求する    


女性の感性を生かした高級菓子を製造している三州製菓は従業員の7割を占める女性の働きやすい職場づくりに力を入れている。

■「男女共同参画推進委員会」の提言で、次のような働き方を実践している。

[子の看護休暇]
 育児介護休業法を上回って、小学3年生までの子供について1人目は10日、2人目は15日の看護休暇を認めている。

[短時間正社員制度]
 育児介護のためにフルタイムで働くことができなくなっても正社員の身分を失わない「短時間正社員制度」がある。これとフレックスタイムを組み合わせて、育児休業を取得した全員が元の仕事に復帰している。

[1人3役制度]
 1人ひとりが目いっぱいの仕事を抱えていると、ワークライフバランスの実現は難しい。育児や介護のために短時間勤務を希望する人に対応するために、各人がメインの仕事のほかに他の人を手伝える領域を2つずつつくる「13役」体制をめざしている。

[女性管理職35%をめざす]
 パートタイマ―の正社員への登用、管理職への登用を積極的にすすめている。管理職の女性割合は現在27%。2020年までに35%まで増やすことをめざしている。

取材先 三州製菓
取材 2016/09/05
掲載 リーダーシップ2016/11
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki185.html 

 


「エステラス」の店内(上)と1人1「研究の発表会
 
【1211a07】 人を働かせる会社からみんなが幸せを求めて働く会社へ    


■会社というのは、売上や利益の数字にために人を管理監視して働かせる場ではなく、人々が自分たちの幸せを求めて力を合わせる場であるべきである…。宮田運輸の宮田博文社長は、そう考えて、次のような取り組みを始めた。

メリータイム
朝の「点呼」の時間を「メリータイム」と呼び、点検報告、アルコールと健康状態のチェックの後、管理職がドライバー1人ひとりのタンブラーに熱いコーヒーを注いで「気を付けていってらっしゃい」と送り出す。タンブラーには家族の描いた絵や写真、「お父さん、今日も元気で行ってきてね」「無事に帰ってきてね」などの文字がラッピングがされている。

社歌の作詞作曲と合唱
創立50周年に、家族からのお父さん、お母さんへの応援歌を作り、家族に合唱してもらってCDを作った。それを毎朝の朝礼で流している。

みらい会議
幹部会議を「みらい会議」と改称。従業員なら誰でも参加できるようにし、得意先、銀行、同業他社など社外の人たちにも参加を呼びかけている。各部門の業績報告は一般社員が行なう場合があり、提起された問題もみんなでディスカッションして解決方法を決める。その後、人生観や死生観などを語り合い、ヨガを行ない、最後に懇親会を開いて終了する。

取材先 宮田運輸
取材 2018/02/08
掲載 リーダーシップ2018/04
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki202.html

 


メリーターム(上)とみらい会議
 
【1211a08】 社員の独立を支援する    


■スタンドそばチェーン「小諸そば」を展開する三ツ和(東京)は1953年の創業。創業者の小川正元さんは商家で育ったが、番頭・手代・丁稚など、使用者と被使用者の差別的身分制度に馴染めなかった。

■人は人として同じ価値を持っており、そのことを互いに認め合い、尊重し合ってこそ協力し合えるのではないか。その考え方から、1976年、ドイツ人のギド・フィッシャー教授が提唱する「パートナーシャフト経営」を自社の経営の基本とすると宣言した。

■社員を「パートナー」と呼び、経営をガラス張りにしている。入社2年以上の社員が参画して経営計画を策定し、各店の目標を決め、目標を達成した店には利益が還元され、社員たちはその一部を積み立てて自社株を購入している。

■さらに、独立を希望し、店の開店資金の25%以上を出資することのできる社員には、経営ノウハウを提供し、資金調達援助などを通じて独立を支援し、のれん分けしている。

取材先 三ツ和
取材  1994/03/03
掲載  燃えよリーダー1994/04

 
 
【1211a09】 乗務員のための社宅をつくる     


■青木定雄翁がMKタクシーを創業したとき、無断で遅刻欠勤する乗務員が後を絶たなかった。

■「そんな連中は解雇すればいい」という先輩経営者もいたが、家庭訪問してみると、4畳半一間の狭い部屋で子供が騒いでいて、眠れなくて夜勤を無断欠勤してしまうのだった。

■そこで青木は乗務員のために社宅をつくり、その近くに車庫の認可をとって、そこからの直行直帰を認めた。それによって無断の遅刻欠勤は激減した。 

取材先 エムケイ
取材 2021/03/02
掲載 リーダーシップ2021/04
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki238.html
 

 
乗務員のために建てられたMK団地
 
【1211a10】 女性労働者たちの寄宿舎を改善する      


■初期の紡績工場では、会社と女性労働者たちの間には仲介業者が介在し、入退社時に紹介料や手数料を要求、寄宿舎の炊事や日用品販売も彼らが取り仕切っていた。寄宿舎の大部屋には万年床が敷かれ、昼夜勤の2人がペアとなって交代で潜り込んで寝たという。

■後に倉敷紡績の社長となった大原孫三郎翁は、仲介業者を排除して寄宿舎を会社が直接管理し、大部屋の寄宿舎を廃止。1部屋の定員を4人、1人当たり2畳として、裁縫室、診療所、日用品販売所、父兄宿泊所、花壇を備えた宿泊所を作った。

1912年に新たに建設された万寿工場では、周辺に社宅を建て、野菜畑、商店、浴場、学校、保育所などもつくり、地域に根を下ろし、仕事に専念できる環境を整備した。

■単なる温情主義ではなく、女性労働者たちの待遇改善は工場の生産性を高め、やがて経済的利益に結びつく…と孫三郎は信じて疑わなかったと言われる。

 


取材先 公益財団法人有隣会語らい座大原本邸
参考文献 兼田麗子著「大原孫三郎・善意と戦略の経営者」(中公文庫 2012P40
掲載先 リーダーシップ 2021/10
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki244.html

 
 
倉敷紡績万寿工場(手前に従業員社宅が見える。
(写真提供・倉敷紡績)
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