改善の事典  》 第12章 組織  》 褒める・叱る
 
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組織‐1209a 褒める・叱る BACK


 このページの掲載事例→            ●1209a01 「ごくろうさま」と声をかける  
 ●1209a02 小さなことを具体的に褒める  
 ●1209a03 1人ひとりの長所をほめる
 ●1209a04 びっくり大発見を褒める
 ●1209a05 親切大賞を贈る
 ●1209a06 大失敗賞を贈る
 ●1209a07 叱った後でフォローする
 ●1209a08 失敗を恐れない長大な時間感覚
 
【1209a01】 「ごくろうさま」と声をかける  

■1日の仕事を終えるとき、リーダーから「ごくろうさま」と部下をねぎらう。その言葉が単なる儀礼ではなく、自分の働きを関心を持ってみてくれており、それを評価し、感謝していることがその中に込められているとき、部下は「この人のために一生懸命やろう」という気持になれる。

参考文献:加藤和昭著「ほめ方、叱り方、教え方」1988、経営実務出版 
 
 
【1209a02】 小さなことを具体的に褒める   

■誰もが認める大きな成果を褒めてもさほどの感動を与えることはできない。相手の立場に立って初めてわかる小さなことを具体的に褒めてこそ、相手を感動させ、自信を持たせることができる。

参考文献:加藤和昭著「ほめ方、叱り方、教え方」1988、経営実務出版 
 
 
 【1209a03】 1人ひとりの長所を褒める  


■新潟の印刷業、タカヨシでは、社員に「ニコニコ手帳」という黒表紙の手帳を配っている。

■1人ひとりの社員について、同じ職場の仲間がその人の長所を書き、それをまとめたもの。「まじめに仕事をこなす行動派」「子どもやお年寄りにやさしい」「夢をわすれない」など1人について20項目の長所が書かれている。

■長所に目を向けることで短所をカバーし、自信を持たせるのがねらいである。

■月1回開かれる社員の誕生会では高橋春義社長はこのことを話題にし、一人ひとりの長所を褒めて励ましている。

取材先 タカヨシ
取材 2006/03/06
掲載 ポジティブ2006/05

探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki009.html

 
 
【1209a04】 びっくり大発見をほめる  


■自動車部品メーカー、フジコーポレーションでは、設備の汚れの発生源をつきとめるために、みんなで油まみれになって機械の点検を行った。

■その過程でびっくりするような様々な発見があった。たとえば冷却水の配管の出口と入口がつながっていて水が流れていなかったり、給水管が肝心な箇所に給水する前に外れていたり…。

■そんなびっくり大発見を見つけたら、図のようなワンポイントレッスンにまとめて、それを集めて「びっくり大発見大会」を開いた。

■発見されたミスは、
@どのようにして発見されたか
A発見しないとその設備はどうなっていたか
Bなぜ今まで発見されなかったのか
C今後どのようにして発見すべきか
をまとめてみんなの前で発表し、優秀な事例は表彰した。

■積年の恥を叱らず、逆に発表させて「よく気づいてくれた」と褒めることで、隠れていた問題を見えるようにし、同じ問題を繰り返さないためのいましめとした。

取材先 フジ・コーポレーション
取材 1995/03/06
掲載 燃えよリーダー1998/11
参考文献:奥村功著「ある中小企業のTPMものがたり」1996

 
 
【1209a05】 親切大賞を贈る   

■牛タン専門店を展開するねぎしフードサービスは「お客様にまごころを。ねぎしはお客様のためにある。そして、お客様の喜びを自分の喜びとして、親切と奉仕に努める」という経営理念を掲げている。

■それを実践するために、店舗の卓上アンケートには「本日輝いていたスタッフの名前をご記入ください」という欄があり、そこに名前が挙がった従業員には、アンケートに書かれた通りの文面で「親切大賞」の表彰状と金一封が贈られる。

■例えば「あなたは『小さい子供がいるので、入店するのを申し訳なく思っていたのですが、頼んでいないのに笑顔で子供用のご飯を持ってきていただいて感動しました。帰る時も何度も子供に声をかけていただいてすごく嬉しかったです。こんな素敵な店員さんははじめてです』とお客様より素晴らしいコメントを頂き2010年度下期ベストコメント賞に選ばれました。あなたの大きな努力と貢献を称え表彰します」といった具合である。 

取材先 ねぎしフードサービス
取材  2011/09/21
掲載  リーダーシップ2011/11
探訪記 
 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki124.html

 


ねぎしフードサービス青山通り店(上)と親切大賞賞状
 
【1209a06】 大失敗賞を贈る    

■あるとき、太陽パーツの2人の社員が「カー用品事業をやりませんか」と提案した。車の芳香剤やハンドルカバーなどをつくり、統一ブランドをつけて販売するというもので、特別のノウハウがいるわけでもなく、競争相手も中小企業ばかりなので、これならやれる…ということになり、製品群を揃えてカー用品販売店に出荷した。

■カー用品販売店からは次々注文が入ってきた。「これはすごい」と言っていたのだが、あるときから品物が次々返品されてくるようになった。なぜかと思って調べてみると、カー用品販売店というのは棚を貸す商法で、一定期間に一定の売り上げに達しない商品は別の商品に入れ替えねばならず、入れ替えができなかったら棚を返さねばならないというルールだった。

■結局、作った商品のほとんどを引き上げることになり、損害額は当時の1年間の利益に相当する金額に上った。会社には重苦しい空気が漂い、2人の提案者はいたたまれず、小さくなっていた。

■半期に1度の経営方針発表会で、社長の城岡暘志さんは「ピンチはチャンス」と書いた額を掲げ、みんなの前で2人に「大失敗賞」という賞状と金1万円を贈って、こう言った。「これくらいの失敗でこの会社は潰れない。このピンチをチャンスに変えるにはどうしたらよいか、みんなで考えよう」

■このエピソードは新聞・雑誌・テレビで取り上げられ、その後、失敗して次のチャレンジに結び付けた事例を毎年表彰することにした。失敗してはじめて失敗しないための方策を学べる。失敗を恐れず、あくまでチャレンジを続けるために「大失敗賞」は必要なのです、と城岡さんはいう。

取材先 太陽パーツ
取材 2017/12/08
掲載 リーダーシップ2018/02
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki200.html

 
「大失敗賞」の賞状と賞金
 
 【1209a07】 叱った後でフォローする    


■後藤清一翁は、松下電器では誰よりも仕事熱心な最古参社員だった。後藤が張り切りすぎ、従業員たちが「この人にはようついていきまへん」と幸之助に訴えたことがあった。

■幸之助はみんなの前で後藤を叱り、みんなに謝らせ、その後自宅に呼んで「人を使うときには相手が納得するように急がば回れでいかなあかん」と諭した。

■人は叱りっぱなしではいけない。後で、本人が反省しているか、誤解していないか、確かめることが必要だ。誤解していればその誤解を解かねばならない。逆恨みしている場合は縁なき衆生として諦めるしかない…それが幸之助のやり方だったと、後藤は著書「叱り叱られの記」の中で書いている。

取材先 杉本勲氏
取材 2021/03/24
掲載 リーダーシップ2021/05
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki239.html

 
後藤清一著「叱り叱られの記」
 
 【1209a08】 失敗を恐れない長大な時間感覚     


■鍋谷バイテックは12個単位の小ロットのプーリーの生産体制をつくるために、それに適した加工機を内作している。加工機の内製化は当初失敗の連続で、内製化が軌道に乗るまでに1020年かかっている。

■創業家一族で、オーナーの岡本太一氏は「そうか、失敗したか、また頑張ればいいよ」というだけで、決して叱らなかった。そして「儲かるか儲からないかではない。そうすることが自然か自然でないかを判断基準にしろ」と言い続けたという。

■一般には、会社が株主のものになり、株主の利益追求、短期利益志向が強まっているのだが、450年の歴史を持つ同社のオーナーには、ゆったりとした長大な時間感覚があり、その中で経営の方向が決められているという。



取材先 鍋屋バイテック
取材 2007/07/05
掲載 ポジティブ2007/09
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki044.html

 


内製加工機(上)とプーリー
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