絵で見る創意くふう事典  》 第12章 組織  》 F任せる
 
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組織‐1207 F任せる BACKNEXT

仕事を命じる側が、すべて詳細に指示して、その範囲でやらせようとすれば、人は自ら考えることを辞め、その範囲でしか行動しなくなります。しかし、実際には指揮命令者の想定していなかったことがたくさん起こります。組織としてそれに対応するには、1人ひとりを信じ、一定の範囲で任せることが必要です。

 このページの掲載事例→                          ●120701 信頼して任せる  
 ●120702 自分たちで販促資料を作らせる  
 ●120703 社長とチャレンジ契約を結ぶ  
 ●120704 手を挙げた人にやらせる  
 ●120705 開発の意思決定を社員に任せる 
 ●120706 評価項目を自己申告させる
 ●120707 失敗を恐れない長大な時間感覚
 ●120708 社長1人で決める会社からみんなが参画する会社へ
 ●120709 学生の提案を受け入れ、みんなの会社をめざす
 ●120710 若手管理者に提言させる―1
 ●120711 若手管理者に提言させる―2
 ●120712 「建設の日」をつくる
 ●120713 「経営の日」をつくる
 ●120714 経営計画を社員に決めさせる
 ●120715 外国人旅行者のおもてなしを従業員に工夫させる
 ●120716 外国人を信じて任せる
 ●120717 業績第一主義から従業員第一主義に転換する
 ●120718 部下の提案をフォローする
 ●120719 社員の仕事をフォローする
 ●120720 「社員が1番」と宣言する
 ●120721 非行少年・少女たちを信じで任せる
 ●120722 仕事の任せ方を工夫する
 ●120723 事業部制を採用する
 
【120701】 信頼して任せる  

■ソケットの絶縁部は樹脂やタールを練ったものを成形して作る。これを「練り物」と呼んだ。松下幸之助が電気配線器具の製造を始めた頃、練り物の作り方がわからず、練り物工場からかけらを拾ってきて研究したという。 

■練り物の製法は同業者間で固く秘密にされていた。ソケットが売れ、生産が追いつかなくなり、新たに人を雇うことにしとき、幸之助は新しく入った従業員に、その製法のすべて教えた。従業員は信頼されたことを嬉しく思い、期待に応えようと、意慾的に働いた。

■「大切なことはまず信頼することです。それで損をすることがあったとしても、信頼して騙されるのならそれで本望。それくらい徹底すれば案外人は騙さないものです」晩年、幸之助はそう語ったと言われる。

取材先 松下幸之助歴史館
取材 2020/11/18
掲載 リーダーシップ2021/01
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki235.html

   ←従業員に練り物の作り方を教える松下幸之助の像(松下幸之助歴史館)
 
【120702】 自分たちで販促資料を作らせる   


■自動車販売会社で新車が発表される時、営業所では本社から送られてきた販促資料によって営業マン教育が行われたが、一方的に与えられる情報を聞くだけでは、営業マンはあまり熱心になれなかった。 

■そこで、新車の現物が来てから営業マンにそれを自由に触らせて自分たちで販促資料を作らせることにした。できた作品はみんなの前で発表させ、優秀作品には商品も出した。

■そこで、その後に本社からの販促資料を配ると、営業マンたちはそれと自分たちの作品を比較してチェックし、その後の展示即売会はみんないきいきと自信と誇りをもって説明に当たった。


参考文献:清水勤著「人を動かす力」(日経連広報部、1989)
掲載 燃えよリーダー2000/05
  

   
 
 【120703】 社長とチャレンジ契約を結ぶ  

■化成品メーカー、三洋化成工業には、社員が挑戦したいテーマがあれば、社長との間でチャレンジ契約を結ぶ。口に出して挑戦させることで周りの協力を得やすくし、成功の確率を高めるのが狙いである。

■挑戦したい社員はテーマとともに挑戦期間、協力者名、希望する褒美(海外旅行、夫婦同伴ディナーなど)、失敗した時のペナルティ(事務所の掃除など)を申告。経営会議で採用と決まれば、社長との間で契約書を交わし、全体朝礼でチャレンジ宣言する。


取材先:三洋化成工業
掲載 燃えよリーダー2000/05
  
 
 
 【120704】 手を挙げた人にやらせる  

■アルバイト・パートの採用代行業、ツナグソリューションでは、社長を含む全員で会社の業績を確認。目標達成のための課題かを話し合い、その課題解決のために1人1人は「自分はこのことに挑戦する」とみんなの前で宣言する。

人は半年後にどこまで達成できたかを発表、結果を自己評価し、どうしてそういう評価になったのかの質問を受ける。そのやり取りの中で評価は自ずと妥当な線に落ち着き、それがそのまま報酬に結び付く。


取材先 ツナグソリューション
取材 2011/04/21
掲載 リーダーシップ2011/07
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki114.html
   
 
 
【120705】 開発の意思決定を社員に任せる   


■電気工事用品の開発には金型製作費など何百万円もの開発投資が必要になるが、未来工業では開発テーマ、売れるか売れないかの判断、開発投資に踏み切るかどうかの判断を提案者本人に任せている。

■任せられているから、担当者は何度も現場に足を運び、現場を観察し、工事業者から話を聞き、あらゆる可能性を考えて、納得できるまで完璧なものに仕上げる。それによってアイデアの完成度が高くなり、成功の確率が高くなる。

■管理者の仕事は部下たちの仕事を認め、励まし、やる気を盛り上げることである。経営者や管理者が先頭に立って部下と同じことをすれば、部下は仕事を奪われたと思ってやる気をなくす。

■報連相も禁止。報告・連絡・相談を待ち受けるのではなく、自分から部下の仕事に関心を持ち、部下をサポートする上でわからないことがあったら、聞きに行くべきだと言う。

若い頃演劇青年だった山田昭男相談役の相談役室には壁一面に全国の演劇興行ポスターが貼られており、山田氏は全国から送られてくるポスターを毎日丁寧に張り替えている。毎日悠然と貼り替えることで、戦術は任せるということを宣言しているのである。

取材先 未来工業
取材 2006/01/12
掲載 ポジティブ2006/03
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki004.html

 
 
 【120706】評価項目を自己申告する  


■プリント基板ハンダ印刷版洗浄装置メーカー、サワーコーポレーションの能力給制度では、250に及ぶ能力評価項目とプラス2点〜マイナス1点の4段階の採点基準がある。

250の評価項目は「経営の日」に全社員がこの項目で評価してほしいという項目を出し合って決めた結果で、毎年新しい項目を追加し、陳腐化した項目は削除される。

250項目のうち3分の2は全社員に適用される基本的項目で、例えば、「大きな声で挨拶ができる」「電話応対ができる」「ワープロで文書作成ができる」など。残りの3分の1は、営業や技術などの職種ごとの専門項目。ただし、例えば技術者が簿記の資格を持っていて経理担当も代行するなど、専門能力以外の能力も持つ場合には、その項目についての評価も加えることができる。

■各人は毎年1回、この評価項目の中から評価してほしい項目を自己申告し、1年後に自己評価して上司に提出する。上司と澤入社長がそれを見て評価結果を修正し、本人ともう一度話し合って、双方が納得すればそれが評価結果となる。

■1点の単価は2000円。得点合計に2000円をかけたものがその人の給料である。評価項目はいくら増やしてもよく、技術者が営業関係の評価項目を選ぶなど、担当外の項目を選ぶこともできるから、プラス評価を獲得する限り、自分で自分の給料を増やすことができる。

■「一人ひとりのセールスポイントを管理者が見抜くことは不可能です。それよりも本人からセールスポイントを申告してもらって話し合いによって給料を決めた方が社員はやる気が出る」澤入精社長はこの制度のねらいをこう語っている。

取材先 サワーコーポレーション
取材 2007/08/05
掲載 ポジティブ2007/10
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki048.html  

 
 
【120707】失敗を恐れない長大な時間感覚
 

■鍋谷バイテックは12個単位の小ロットのプーリーの生産体制をつくるために、それに適した加工機を内作している。加工機の内製化は当初失敗の連続で、内製化が軌道に乗るまでに1020年かかっている。

■創業家一族で、オーナーの岡本太一氏は「そうか、失敗したか、また頑張ればいいよ」というだけで、決して叱らなかった。そして「儲かるか儲からないかではない。そうすることが自然か自然でないかを判断基準にしろ」と言い続けたという。

■一般には、会社が株主のものになり、株主の利益追求、短期利益志向が強まっているのだが、永禄年間の創業、450年の歴史を持つ同社のオーナーには、ゆったりとした長大な時間感覚があり、その中で経営の方向が決められているという。 

取材先 鍋屋バイテック
取材 2007/07/05
掲載 ポジティブ2007/09
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki044.html

 
↑プーリー(左)と工場内製加工機
 
【120708】社長1人が決める会社からみんなが参画する会社へ   


■自動車のアルミエンジン部品の試作を請け負ってきたカルモ鋳工は、
CAD/CAMとそれに対応した加工機の導入を契機として型の設計から素材、加工、仕上げまで一貫して引き受けられる鋳造品メーカーとなった。

■、「黙って俺についてこい」というだけでは、会社は社長の器量以上に大きくなれないと考えた高橋直哉社長は、「社員1人ひとりが使命感を持って仕事に取り組める会社にしたい」と宣言し、次のような活動をはじめた。

@リーダーを集めて、毎週1回の勉強会を始め、他社の取り組みをビデオでみたり、リーダーシップ、やる気の高め方、コミュニケーションの大切さなどについて、著名人たちの講話のテープを聞いた。

Aビデオや講話テープは自分たちの現状からかけ離れていたが、できることから行動に移そうと、毎朝30分、全員で5S運動を始めた。

B月曜勉強会は、安全衛生・設備改善・ミス防止などについてみんなで現状を確認。問題点をみつけ、それをひとつひとつ改善していく活動に変わっていった。

C業界団体の工場見学会に社員を派遣。納入先の担当者が来社した時は、高橋さんや営業担当のほか、設計担当や現場担当も同席させ、できるだけお客様を意識した仕事に仕向けた。

取材先 カルモ鋳工
取材 2008/03/25
掲載 ポジティブ2008/05
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki064.html 

 
↑毎朝の5S活動と毎週月曜日の勉強会
 
【120709】学生の提案を受け入れ、みんなの会社をめざす    


■墨田区の工場は次第に数が減っており、区はそれに対応して大学との産学連携の推進をすすめている。浜野製作所はその行政からの提案に対応して、大学の経営学の先生の授業に会社を開放。学生たちに経営データを公開し、会社をもっとよくするための提案を受け入れている。

■学生たちには特別の知識経験があるわけではないが、彼らの素朴な疑問に耳を傾けることで、多くのことを気づかされたという。

■学生たちの提案によって、会社のホームページや会社案内のパンフレットが生まれた。社員が毎日の仕事の感想を自由に書き込む社内ブログも始まった。社員の意識調査も実施。社員のホンネを引き出してくれたこともある。

■こうして始まった社内ブログで「みんなの会社じゃないですか、もっとみんなで盛り上げていきましょうよ」という書き込みを見て胸が熱くなった浜野慶一社長は自分の家族が持っていた会社の株の一部を幹部社員に買ってもらうことを決め、「今までは浜野家がオーナーだった。これからはみんなの会社にしていきたい」と宣言した。

■この宣言とともに同社は新しい飛躍に向かって羽ばたこうとしている

取材先 浜野製作所
取材 2006/12/15
掲載 ポジティブ2007/02
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki028.html


↑浜野製作所の社屋と事務所内
 
【120710】若手管理者に提言させる―1    

■堺市の転写印刷機メーカー、ナビタスでは、若手幹部を育成するために「ジュニアボード」を組織している。

■7つの部門から1人ずつ選ばれた中間管理職が集まって役員会の数日前に役員会と同じテーマで議論し、ジュニアボードとしての意見を役員会に提案する。

■当初は与えられたテーマについて議論するだけだったが、その後自分たちなりのテーマでデータを集め、提案することが増えた。メンバーの任期は2年。多くの社員がメンバーを経験した結果、全社的な視野で物事を考えられる社員が増えている。

取材先 ナビタス
取材 1993/12/03
掲載 燃えよリーダー1994/01 
 
 
【120711】若手管理者に提言させる―2     

■ソフト開発会社、ユーザックシステムがコンピュータ販売をしていた頃、その当時の取引相手が,中小・中堅企業の経営トップで、社員に経営感覚が不可欠だったことから「ジュニアボード制度」をつくった。

■選ばれたメンバーは役員会から提起されたテーマについて検討し、意見をとりまとめて役員会に提言する。その提言の中から,資格取得者に祝い金や手当を出すという公的資格取得奨励制度が生まれた。また、近年は同社が得意としてきた物流システムが不況によって伸び悩んでいることに対応して,物流システム提案に関わる社員教育のあり方の再検討をすすめている。

■現在のジュニアボードは30代の課長クラスが中心。2001年からはもっと若い20代を中心に「ヤングボード制度」を併設し、このクラスには主に働きやすい環境づくりの提言を求め、最近は、自立型社員育成のために従来トップダウンで決められてきた年間計画に、個人の意見をどう反映させるかというテーマに取り組んでいる。


取材先 ユーザックシステム
取材  2012/07/17
掲載  リーダーシップ2012/09
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki135.htm
 
 【120712】「建設の日」をつくる  


■プリント基板のハンダ印刷版洗浄装置のメーカー、サワーコーポレーションは、毎月1回「経営の日」と「建設の日」を設けている。

■同社は、トマト栽培のビニールハウス跡地に、コンクリートを打ち、壁をつくり、机や作業台をみんなで手づくりするところから始まったが、その伝統から今も「建設の日」は続いており、全員総出でペンキ塗り、コンクリート塗り、周辺整備を行っている。

■「建設の日」には、新入社員が「棟梁」を勤めることになっており、その棟梁の指示には上司も澤入社長も従わねばならないというルールがある。棟梁が許可を出さない限り休憩もできない。その意味で、この日は若い人に人を使う訓練させる場でもある。 

取材先 サワーコーポレーション
取材 2007/08/05
掲載 ポジティブ2007/10
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki048.html

 
↑「建設の日」の休憩所づくりと敷地内で飼育している山羊の乳搾り 
 
【120713】「経営の日」をつくる   

サワーコーポレーションは「経営の日」のほかに、月に1回「建設の日」をもうけている。

■「経営の日」は、正社員20人余の全員参加で事業計画、売上目標、組織改革など、経営に関するあらゆるテーマを話し合う。自ら手を上げた社員にはチャンスが与えられ、やってみて、次の「経営の日」に結果を報告し、沢入社長がそれをフォローする。

■こうしたやり方で権限委譲し、参画意識を盛り上げ、部門を越えた協力を生み出し、独自技術による強い商品開発に結び付けている。

取材先 サワーコーポレーション
取材 2007/08/05
掲載 ポジティブ2007/10
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki048.html

 ←組立中のプリント基板ハンダ印刷版洗浄機
 
 【120714】経営計画を社員に決めさせる  


■牛タン専門チェーン店、ねぎしフードサービスの根岸榮治社長は、以前、喫茶店、ファミリーレストラン、ラーメン店などを広範な地域に展開していた。評判がよかったが、遠隔地だったことと店ごとに業態が異なったために管理が行きとどかず、従業員の不正を誘発したり、同業他社に従業員を引き抜かれたりした。
 

■その反省から、すべての店を閉鎖。業態を牛タン専門店に絞り込み、新宿から30分圏内に28店を集約。コミュニケーションを密にし、ビジョンを共有し、自分たちで考えさせ、自分たちで決めさせる経営を展開している。 具体的には…

@働く仲間の幸せと顧客満足による高い評価をみんなでめざす「ビューティフルカンパニー」を宣言した。
A店長と本社スタッフの会議で経営計画と社内ルールを決める。
B全社員による月1回の「改革改善全体会議」で。各店代表が改革改善事例を発表する。
C「お客様においしさと真心を届ける…」との経営理念を掲げ、朝礼・夕礼で唱和。自分の考えや体験を順番に発表。それを「私と経営理念」と題した冊子にまとめている。

取材先 ねぎしフードサービス
取材  2011/09/21
掲載  リーダーシップ2011/11
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki124.html
 
↑店長SO会議(左)と改革改善全体会議(右)
 
【120715】外国人旅行者のおもてなしを従業員に工夫させる   


■外国人旅行客にターゲットを絞って国際化戦略を打ち出した道頓堀ホテルは、「世界中の人たちに日本を好きになってもらうこと」を目標に掲げ、おもてなしの具体的な方法はすべて従業員にまかせている。

■従業員全員に1件について20万円までの決済権を与え、その範囲の中で工夫して、デコ&ネイルの体験イベント、にぎり寿司、餅つき、たこ焼きなどの日本食文化体験、浴衣着物体験などを展開している。

取材先 王宮・道頓堀ホテル
取材 2015/08/11
掲載 リーダーシップ2015/10
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki172.html

←宿泊客のクリスマス会 
 
【120716】外国人を信じて任せる   


■栄鋳造所の鈴木隆史社長は、採用したミャンマー人ン難民の男性にこう言った。「ミャンマーは何年か後に民主化されるだろう。それまでに、ここで鋳造の技術を勉強し、民主化されて帰国できるようになったら、君はミャンマーで鋳造会社を立ち上げるといいい。僕がそれを応援する」かれはこれを聞いて感激のあまり泣き出した。

■鈴木さんは、外国人たちが帰国して鋳造会社を立ち上げてくれれば、日本にいながら外国との太いパイプがつくれると考えていた。

■韓国の大学からインターンシップでやってきて同社で働いた男性は、今年3月に韓国で「栄Korea」という会社を立ち上げる。

■政治難民として日本にやってきたカメルーン人の場合は、母国に帰る見通しが立たないため、同社の正社員になり母国に残した娘を呼び寄せたいと考えている。

■鈴木さんは単にマンパワーとしてだけでなく1人ひとりを見つめ、信頼して任せていきたいという。それが彼らに「この会社のためなら」という気にさせ、この会社の未来を開いていくことなる。

取材先 栄鋳造所
取材 2016/02/09
掲載 リーダーシップ2016/04
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki178.html

 
↑社員の集合写真(左)と英語の作業マニュアル
 
【120717】業績第一主義から従業員第一主義に転換する    


■最先端の美容技術を身に着けて米国から帰国した久保華図八(くぼかずや)さんの下に、大勢の若者が弟子入りし、久保さんは彼らを雇い入れ、美容室「バグジー」を経営した。売上を競わせ、自身の贅沢な生活を見せつけて、こうなりたかったら、しっかり稼げとハッパをかけた。

■売上、売上…と攻め立てられることに耐えられなくなった半数近くの社員が辞めていき、店が回らなくなり、膨大な負債が返せなくなった。

■このままでは倒産するというところまで追いつめた久保さんは、次のような話を聞いた。

■西郷南洲は「子孫のための美田を買わず」と言った。西郷は自分のために働く人ではなかった。もしそんなことをしたら、どうぞ自分のもとを去ってくれと西郷はいった。人が辞めていく会社は、辞めていく社員ではなく、リーダーに問題があるのだとその人は説いた。

■撃たれるような思いで、この言葉を聞いた久保さんは、「自分の至らなさのために大勢を辞めさてしまった。君たちにも大変な思いをさせた」と残った社員の前で頭を下げた。「社長がやり直そうというなら、僕らはついていきます」と社員たちは言ってくれ、以来、久保さんは売上や利益よりも働く人の幸せを第一に考える経営に方向転換した。

@みんなで休日返上で働き、借入金を返済しながら、余裕が生まれたら少しずつ休日を増やしていき、週休2日制を実現した。
A売上と利益をベースにした成果主義賃金を、年功賃金をベースに業績給を加味した賃金制度に切り替えた。
B評価の重点を会社への貢献よりも個人の成長に置いた。
Cトップダウンで決めていた売上目標と利益目標を自己申告による個人目標の積み上げ方式に改めた。
D各店責任者を、自己成長率の高いもの、人望のあるもの、人の面倒を見るのが好きなものの中から選び、各店責任者で構成する幹部会で、採用・配置・賃金・出店計画を決定。それに久保さんがアドバイスする形に改めた。
E美容師として独立するのに必要な知識技術を習得させるためのキャリアプランと教育訓練マニュアルを作成、入社後15年間ですべてを教える教育訓練体制を作った。

取材先 九州壹組
取材 2019/01/10
掲載先 リーダーシップ2019/03
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki213.html

 ←バグジーの教育訓練
 
【120718】部下の提案をフォローする    


■提案制度をつくって提案箱を置いておけば、社員が次々と提案を投投函してくれるわけではない。提案活動は上から下、下から上への2ウエイコミュニケーションである。いい提案が出てくるためには、管理監督者から次のような働きかけが必要である。

@みんなで改善提案活動をやろうという方針を示す。
A改善の目の付け所、提案の書き方を教える。
B提案に単なる苦情や意見が書かれているときは、その苦情や意見をきき、必要な処置を行い、提案には解決策が書かれていることが必要なことを指導する。
Cいつも同じレベルにとどまっている提案者には、どうアドバイスすればもっと伸びてくれるかを考えて、アドバイスする。
D優れた提案は、みんなにその内容を知らせ、みんなの前で褒め、表彰する。

出所 「改善提案ハンドブック」(日本HR協会 1980 

 
 
【120719】社員の仕事をフォローする     


■徳武産業が介護シューズ「あゆみシリーズ」を開発した年、同社ははじめて赤字を経験した。十河孝男社長と副社長のヒロ子夫人は開発に没頭し、既存製品のOEM生産と管理を3人の社員に任せていたのだが、経験不足のためマネジメントが十分でなかったことが原因だった。

■十河さんはそのとき彼らをきつく叱ってしまい、その後3人が辞めてしまったことをずっと後悔している。赤字の責任は彼らではなく、社長である自分にあった。自分がもっと気を配ってフォローすべきだった…と。

■その反省から、現在では、経営計画の発表と同時に「私の挑戦」と題して前期の反省と今期の目標を発表させ、それを逐一フォローしている。また、賞与を渡すときは、十河さんが1人ひとりに宛てた自筆の手紙で、今期頑張ったところを具体的に褒め、来期への期待を記している。

取材先 徳武産業
取材 2019/02/08
掲載先 リーダーシップ2019/04
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki214.html

 ←本社工場の縫製職場
 
【120720】「社員が1番」と宣言する   
 

■島根電工(株)の荒木恭司社長は「社員が1番、取引先が2番、お客様が3番、地域が4番、株主が5番」と社内外に宣言している。

■お客様からの支持を集めるには、会社への信頼感を高める必要があり、そのためには社員1人ひとりがお客様から信頼されねばならず、そのためには何よりも会社が社員を大切にすることだと考えたからである。

■この考え方に沿って、育児休業制度、こども看護休暇制度、誕生日休暇制度、週3日のノー残業デーなどを実施。プレミアムフライデーには14000円の支援金を配布し1500以降同僚・友人・家族と過ごすことを奨励、さらに、家族ぐるみ大運動会、事業所単位の社員旅行、地域への奉仕活動などを行っている。

■また、20日間に及ぶ新入社員合宿教育をはじめ、入社3年生まで、繰り返し行われる合宿研修の中で、社員1人ひとりに、何のために生きるのか、どう生きて、どう死んでいくのかを考えさせ、自己実現のために働く…ということに気づかせる教育に力を入れている。

取材先 島根電工
取材 2020/01/29
掲載先 リーダーシップ2020/03
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki225.html 

 
電気工事作業(左)とプレミアムフライデー支援金の封筒
 
【120721】非行少年少女たちを信じて任せる    


■非行歴のある少年少女たちを積極的に雇用してきた北九州市のガソリンスタンド、野口石油の野口義弘社長は、非行少年は不幸少年だという。普通の子供たちが親の愛情をたっぷり受けて育つのに対して、彼等はそれが受けられなかったために非行に走った。だから、こちらが愛情をもって接し、「大丈夫だよ」とハグしてやれば必ず心を開いてくれると野口さんは言う。

■彼らに求めるルールは「嘘をつかない」「お金をごまかさない」の2つだけである。

1日に終わりに当番で作業日誌を書かせ、売上金を確認させ、銀行のATMまで持っていかせ、入金させる。お金を自分のポケットに入れる者がいないとは言えないが、それよりもこちらから、お前を信頼しているという姿勢を見せることが大切だと野口さんは言う。

■現金と伝票が合わなければ、その原因が分かるまで全員で徹底的に探す。お金をごまかしたらどうなるかをみんなと一緒に見せることで、これはごかませないな…とみんなが思うようになるという。

取材先 野口石油
取材 2020/03/03
掲載先 リーダーシップ2020/05
探訪記
 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki227.html

 
片野給油所の従業員(左)と歴代忘年会の写真
 
 【120722】仕事の任せ方をくふうする    


■がんこフードサービスの創業者の小嶋淳司会長は、28歳で大阪の十三(じゅうそう)で4.5坪の小さな寿司店を開店。1年後に4階建てで床面積120坪、106席の大阪で最も大きい寿司店を開店した。店が小さかった時は、あくまで自分がお手本で、社員たちには自分がする通りに、寿司を握らせ、接客させていたが、フロアがいくつにも分かれると、小嶋さんがすべてを指示することはできなくなり、フロア責任者を決めて任せなければならなくなった。

■しかし、みんながばらばらのやり方で仕事をすると、料理の品質、接客対応の品質が保てなくなる。そこで、仕事の任せ方を工夫した。これが、その後の多店舗展開を可能にした。

@1人ひとりが仕事に臨む基本的な姿勢や考え方を一致させておくために、みんなでスキーに行ったり、社内で成人式を開いたり、読書会を開いたり、著名人を招いてみんなで講話を聴いたりした。

Aパートタイマーたちの自発的な改善を促し、彼等の頑張りの場としてQCサークル活動を展開した。

B総合訓練プログラムを整備。調理技術・接客技術のコンテストを行って、技術技能の向上を図った。

C5年ごとの中期経営計画を策定。その達成のために1年ごとに方針を設定。それと目標管理、評価システムを結び付けた。

取材先 がんこフードサービス
取材 2020/06/19
掲載 リーダーシップ2020/08
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouk230

 
がんこ寿司1号店(左)と床面積120坪のがんこ十三店
 
【120723】事業部制を採用する    


■松下電器の創業から15年を経た1933年、従業員数が1000人を超え、製品数も200を超えたころ、事業部制が採用された。第1事業部(ラジオ)、第2事業部(ランプ、乾電池)、第3事業部(配線器具、合成樹脂、電熱)。翌年、第3事業部から電熱事業部が独立して4事業部制となった。

■各事業部はそれぞれに、研究開発、製造、販売、利益計画、資金調達まで責任を負い、あたかも独立した企業のように自主責任経営を行う。これによってトップと社員までの階層が少なくなり、意思決定が速くなり、業績向上への社員の意識が高まることをねらったものである。

■体が弱かった松下幸之助は、自分だけで経営を見る限界を早くから感じていて、事業開始当初から新入の社員にも重要な仕事を任せてきたが、その延長線上にこうした組織形態が誕生したといわれる。

■幸之助はさらに「社員稼業」という言葉で、1人ひとりに自分が担当する仕事の主人公であれと説き、任せられた範囲で、自ら計画を立て、実行し、結果を見極め、評判を聞いて、それを次の仕事に生かす形で、PDCAを回すことを求めた。


取材先 松下幸之助歴史館
取材 2020/11/18
掲載 リーダーシップ2021/01
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki235.html
 
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