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組織‐1204a 改善を推進する BACKNEXT

外部環境の変化に対応するためには、全員で改善に取り組むことが必要です。そのための取り組み事例を集めました。

 このページの掲載事例→                                ●1204a01 提案活動を推進する  
●1204a02 DIO活動で生産改革をめざす 
●1204a03 小集団活動で保育の質を高める
●1204a04 改善活動でデザート部門を黒字化する  
●1204a05 セル生産に向けて改善活動を展開する
●1204a06 5S運動で社員の力を結集する
●1204a07 病院スタッフのプロ意識を高めた3つの活動
●1204a08 よくみつけましたね提案制度
●1204a09 市役所の行政品質向上活動
●1204a10 QCサークル活動で医療サービス向上
●1204a11 QCサークル活動で特許事務の品質向上
●1204a12 ソフト開発会社の5S活動
●1204a13 市役所の改善を市民に見えるようにする
●1204a14 患者さんの立場で考える活動を展開
●1204a15 気づきメモ提案制度
●1204a16 カイゼンでワークライフバランス改善
●1204a17 幸福実感日本一をめざす人づくり改革
1204a18 「ひとり1改革運動」で危険ドラッグ撲滅に取り組む 
●1204a19 利用者満足度向上をめざす救護施設のQCサークル活動 
 
【1204a01】 提案活動を推進する  

提案制度は1970年代に入ってQC手法の現場への展開という目的が加わり、改善効果を重視するようになった。以下は、その当時(1973)の各社提案担当者による座談会の要約。 

■住友金属工業
提案制度のスタートは1949年。1972年度の提案件数は426,232件(1人当たり13.1件)。入社時からIE教育を実施しており、考えたらすぐ提案するよう呼びかけている。考える作業者でないと給料は貰えないという組織風土がある。提案の質向上が課題だが、それを強調しすぎると量が減る。課長賞・所長賞・社長賞の3段階の表彰制度がある。賞金を個人のものにする人は少なく、他社見学やレクリエーションの費用として積み立てている。 

■松下電器産業
提案制度スタートは1950年。1972年度の提案件数は785,030件(1人当たり12.4件)。「衆知を集めた全員経営」の一環として実施。提案件数は多いが、採用率は10%以下。よい提案をたくさん出すことを目標にしている。1次審査は監督者が行っており、上司と部下の対話の機会になっている。 

■日立造船
提案制度スタートは1954年。1972年度の提案件数は42,607件(1人当たり1.7件)。制度発足当初は人間関係、モラール向上に重点があったが、やがてコストダウン、アイデア開発に重点が移った。最近は「100万人の経営」の理念に基づき全員参画経営の一環として推進している。QCサークル、ZDグループによるグループ提案が中心。何でもいいから出してみろ、それそれ、それでいいんだ…という調子でまず出させるように仕向けている。 

■日本生命保険
提案制度のスタートは1952年。1972年度の提案件数は1,655件(1人当たり0..12件)。統一した執務基準によって事務処理を行っているので、現場での工夫改善の余地は小さいが、その中で「アイデアをまとめてハワイへ行こう」と訴えて、事務効率化をめざした提案を募集している。

■トヨタ自動車工業
提案制度のスタートは1951年。1972年度の提案件数は168,500件(1人当たり4.2件)。工場ごとに委員会を作って推進。年2回全社で課題提案を実施するほか、工場単位でも自主的に課題提案を実施している。仕事の主人公マインド、考える習慣づくり、誇りを持って提案できる社会性を訴えている。 

取材先 提案制度プロモーション研究座談会
取材 1973/05/14
掲載先 人と経営 1973/07
本文 teianzadankai.pdf

 
 
【1204a02】 DIO活動で生産改革をめざす   


■分析計測機器、医用機器、航空機器などを開発製造している島津製作所は、製造オペレーションを協力会社にアウトソーシングしてきた。

■市場の環境変化にいち早く対応するために、自主的な改善活動の必要が指摘され、1985年、製造現場を持たない計測事業部でDIODo It Ourselves)活動がスタート。事務のマニュアル化、ファイルの共有化、情報の電子化、ゴミ分別の徹底、ISO9001認証取得の条件整備…などの分野で自主的なグループ活動を展開。1995年から一部の技術系部門や営業部門まで含めて全社展開されるようになった。

■活動は次のように行われている。
@就業時間内に業務として行なう。
A職場単位に5〜6人でグループをつくり、日頃感じている問題の中から、重要度・緊急度・予想される効果・上位方針の適合するものの観点からテーマを選ぶ。
Bテーマは職制の承認を得た後、現状把握・目標設定した時点で中間報告。その後、原因分析・対策立案・実施後に成果発表。このサイクルを年2回繰り返す。

2002年、同社は赤字を計上。黒字転換と体質強化をめざし、会社施策に沿ったテーマが選定されるようになった。従来の見込生産方式から、売れた分だけ作るPull生産方式に転換するために、生産の内製化が進んだが、そのための生産改革にDIO活動が活用され、工数低減やリードタイムタイム短縮に成果を上げている。

取材先 島津製作所
取材 2006//9
掲載先 ポジティブ 2006/09
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki018.html

 
DIO活動の発表会風景
 
 【1204a03】 小集団活動で保育の質を高める  

■至誠保育園(東京都立川市)は働くお母さんたちのために子どもたちを預かるという園の使命を職員たちが共有し、自発的、積極的に取り組むために1992年からQCサークル活動を始めた。

サークルはクラスごとに編成。事務職員も加わって活動する。活動は4月からスタートし、7月後半に発表会を開催。問題点や足りない部分を指摘されたサークルはもう一工夫を重ねて8月に再度発表する。

■テーマは「指しゃぶりをやめるには」「お箸を上手に使うには」「スプーン・フォークの持ち方」「しっかり手を洗おう」「ぶくぶくうがいできるかな」「竹馬に上手に乗るには」「挨拶ができるようになろう」「保育園の環境をしろう」など。

取材先 至誠第二保育園)
取材 2006/09/06
掲載先 ポジティブ 2006/11
探訪記   http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki020.html

 
至誠第二保育園
 
 【1204a04】 改善活動でデザート部門を黒字化する  


■プリン・ゼリー・シュークリームなどを製造している竹屋のデザート類製造部門は、目が回るほど忙しいのに、計画どおりに製造ができず、利益率が低かった。そこで、次のような改善活動に取り組んだ。


■5S運動を展開。物の置き場を白線で表示し、資材の在庫の見える化を図った。

■「仕事がきつい」「作業がやりにくい」などの不平不満の改善をみんなで考え、次のような改善を実施した。

@エクレア箱詰工程での印字不良低減のために、箱詰工程と包装機のレイアウトを見直した。
Aシュークリーム用の小麦粉の風袋、篩、秤、ドラムの置き場を検討、最短距離で作業できるようにした。
B資材置き場の4Sを実施。不要なものを撤去、白線を引き直し、通路を確保、物の置き場を明確化、名称・用途を表示。最低在庫量を決めた。
C
包装の日付が見にくい、汚れている…など、検査室で問題が見つかると、全数チェック。調査結果報告をファックスすることにした。

■この改善は後に、ISO9001の予防措置の一環として位置づけられた。



取材先 竹屋
取材 2006/11/06
掲載先 ポジティブ 07/01
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki024.html

 
竹屋工場内部
 
【1204a05】 セル生産に向けて改善活動を展開  


■椿本チエインは2001年に大阪市鶴見区にあった工場を京田辺市に移転。新工場は2004年から本格稼働した。当時、世の中は必要なものを必要なときに必要なだけ購入する時代に移行しつつあり、それに対応して、それまでの大量生産方式から必要なものを必要なときに必要なだけつくるセル生産方式に切り替え、そのためにバブル崩壊後休止していた改善活動を再開した。

■担当の品質保証課は、管理監督者に改善の必要性を訴え、1人月1件、年間12件の提案を目標に置いた。

■一般の改善提案活動と並行して、職制を中心に次のようなセル生産活動を展開した。
@5Sの徹底、ものの出し入れ・運搬・段取りの無駄排除、つくりだめの排除。
A3S(整理・整頓・清掃)コンテストを開催。上位職場を表彰。
B期に8回、セル生産発表会を開催。
C各職場に掲示板を設置。改善事例、納期・品質・安全・改善の実績グラフを掲示。
D各職場に「朝市コーナー」のテーブルを設置。不良が出たら、ここに置き、みんなで不良を出さない方法を検討・確認した。

取材先 椿本チエイン
取材 2006/12/18
取材先 ポジティブ 2007/02
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki029.html
 


 京田辺工場の改善活動板(上)と朝市コーナー
 
【1204a06】 5S運動で社員の力を結集する  


.2005年、真空装置用ステンレス部品加工受託業、斉藤マシン工業(山形県天童市)は、異業種交流団体の勉強会で「5S」のモニター工場になった。

■油で真っ黒になった床をきれいにし、通路とモノの置き場をわけるラインを引く。これを2か月半でやり終え、以後次のような活動を行なっている。

■毎日清掃、窓拭きと草むしり。

■5Sパトロールを実施、活動結果をチェック。

■ミーティングでパトロール結果を発表。提起された問題は5S委員会が検討し、次のような改善実施した。
・事務所と工場の間の壁を取り除き、コミュニケーション活発化。
・キャスター付き台車を製作、リフターを使わずにワークを移動。
・窓際には一切モノを置かず、通路とすることをルール化

・床面にペンキを塗って切粉を見える化、発見したらすぐ掃除。
・各職場の暖房用の灯油ポリタンクを屋外に移動。作業スペースを広げた。
・カレンダーを手作り、会社行事と社員の誕生日を書き込んだ。

■毎月1回異業種交流会のメンバーの訪問を受け、成果を見られ、賞賛されることが、社員に自信と誇りを与えた。

取材先 斉藤マシン工業
取材 2007/01/25
掲載 ポジティブ2007/0
探訪記  http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki033.html

 


整理整頓された工場内
 
【1204a07】 病院スタッフのプロ意識を高めた3つの活動  


■神戸市立医療センター西市民病院は1995年の阪神淡路大震災で本館が全壊。2000年に再オープンしたが、医師不足から地域の中核病院でありながら、深夜の救急患者受入れを制限せざるを得なかった。市からの財政支援によって医療スタップを充実させ、中核病院としての組織体制を再建。6年後に深夜救急患者受入れを全面再開した。組織体制を充実させ、スタッフの意識を高める上で次の3つの活動が大きな力を発揮した。

@インシデントレポート活動
 当時は患者の取り違えなど医療事故がマスコミを賑わしたが、2005年「医療安全管理室」を設置。医療事故の原因分析と対策立案、職員の安全教育、安全管理パトロールなどを実施。並行してインシデントレポート(ヒヤリハット報告)活動を展開。事故が起こる前に自身のミスやエラーを報告する習慣をつけた。

Aチーム医療推進
 患者をどのように治療するかは、医師だけでなく、薬剤師、看護師、ソーシャルワーカー、検査技師など、それぞれの専門家の知見を集めてはじめて見えてくるものがあり、チームで医療に望むことで医療の質が高まり、患者の満足度をも高まる。そこでチーム医療推進のために9チームを編成。研究を重ね、医師や看護師たちに専門的立場なら必要なアドバイスを行ってきた。 → @栄養サポートチーム/A緩和ケアチーム/B認知症ケアチーム/C褥瘡対策チーム/D糖尿病ケアチーム/E感染制御チーム/F呼吸ケアチーム/G心肺蘇生法チーム/H禁煙チーム

B改善活動
 2010年から10番目のチームとして「改善活動推進チーム」を編成。職場ごと、病棟ごとの自主的な改善活動を推進。年度末に発表会を開催。例えば次のような発表が行われている。→ 「転倒転落アセスメントスコアシートの改訂(4人の看護師グループの発表)」「電気・ガス料金の削減(総務部設備管理センター職員の発表)」「レッドカイザー(超緊急帝王切開)って知っていますか(産婦人科病棟の発表)」「ダビンチ(腹腔鏡下前立腺全摘手術ロボット)はじめました(手術室の発表)」「HOT(在宅酸素療法)導入はまかせて(呼吸器病棟の発表)」…など。



取材先 神戸市立医療センター西市民病院
取材 2016/08/01
掲載先 リーダーシップ 2016/10
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki184.html

 


神戸西市民病院の外観(上)と
ポスターによる改善発表会の様子
 
【1204a08】 よくみつけましたね提案制度   


■絹の精練加工専業メーカー、セーレン(福井市)はITを活用したジャストインタイム生産方式を導入。コンピュータが導き出した最も無駄のない生産計画の実現をはばむ問題を、ひとつひとつつぶしていく活動を展開した。

■そのひとつに染色加工事業の損金をゼロにする取り組みがあった。他社から生地を預かって染色加工する事業で、加工に失敗すると生地を買い取らねばならず、欠陥が見つかって再加工した場合のコストアップも損金になる。この損金をゼロにするという課題に取り組んだ。

■それまで問題発見、対策実施に責任を負っていたのは係長クラスだったが、彼らだけで損金ゼロは実現できないことがわかり「よく見つけましたね提案制度」を導入した。

■従来の改善提案は自分の仕事の問題を自分で改善し結果を報告するものだったが、この制度では他部門や他人の仕事の無駄を見つけて提案することが奨励され、採否の判定と改善実施は担当部門が行い、提案者はアイデアを提案するだけ。パート・派遣など非正規社員にも積極参加を呼び掛け、その提案実績は正社員登用の条件とされた。

■これにより、たとえば次のような提案が出てきた。
・染色工場でインクの色違いを早期に発見した。
・原料に針金が入っているのを発見。生地にキズがつくのを防止した。
・コーティング工場で加工中のムラを発見した。そのままコーティングしてしまうと再加工ができなくなり、大きな損金が出るところだった。
・生地の裏と表を反対にして機械にかけそうになったことに気づいた。生地の納入業者が「裏」と「表」と判をついているのだが、その表示が間違っていた。もしもそのまま機械に掛けていれば大量の不良が出たはずだが、そのことに気付き大きな不良の発生を未然に防いだ。

■この活動により、改善の目が現場の隅々に行き渡り、損金はゼロに近づき、生産工程は滞りなく流れるようになった。

取材先 セーレン
取材 2009/02/10
掲載先 労政時報 2009/07/10
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki085.html

 
 
 【1204a09】 市役所の行政品質向上活動   

■市役所の仕事には、民間の売上や利益に相当する目標がない。そこで、大塩民生市長は、2008年、職員の頑張る目標として、「行政経営品質プログラム」を導入。各部門の課題解決のために、どんな活動を行ったか、どんな成果を上げたか…を中堅職員48人のアセッサーによって評価する仕組みをつくった。

■その一環として各課の課題をチームで解決する「TK(チーム改善)活動」を展開。たとえば、次のようなテーマに取り組んだ。

・風水害を最小限に防ぐ判断基準を高める(総務部危機管理室)
・「こんなことやってますねん」つくってみて、おもしろいホームページによる情報発信(市民生活部商工観光課)
・がん(胃・子宮頸)検診の受診率を向上させる(健康福祉部健康づくり室)
・ひとり親家庭への支援マニュアル作成(こども部子育て支援課)
・上下水道組織のスムーズな統合に向けた準備体制の構築(土木部下水道建築課)…など。

取材先 川西市役所
取材  2012/03/16
掲載先 リーダーシップ 2012/05
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki130.html

 


市役所ロビーの「DASH!挑戦プロジェクト」
の垂れ幕(上)と、カイゼン合戦in大分での
市民課職員の発表
 
【1204a10】 QCサークル活動で医療サービス向上   

益田地域医療センター医師会病院(島根県益田市のスタッフは、寄せ集めでチームワークがとれておらず、そのために、開業医から患者を紹介してもらえず、赤字が続いていた。

■そこでQCサークル活動を導入。ムリ・ムダ・ムラをなくす活動を展開。次第にチームワークが生まれた。

■幹部の地域医療貢献が評価され、市から老人保健施設の経営が委託されたことがきっかけで赤字から脱却。以来、急性期医療から回復期、慢性期、在宅医療、在宅介護までシームレスなサービス提供を目指し、その中でQCサークルは経営方針にそった活動を展開した。

■開業医と介護施設を訪問して病院への要望を聞いたり、資格を持ちながら家庭に入っている潜在看護師を全職員で発掘したり、患者の品質感覚で紙オムツを選定するなどの活動が注目を集めた。

■こうしたサービスの質の追求が会員の開業医と患者の支持を集め、同病院は以来一貫して黒字を続けている。 

取材先 益田地域医療センター医師会病院
取材  2012/04/18
掲載  リーダーシップ2012/06
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki131.htm

 


看護部のQCミーティング(上)と
院内発表会風景
 
【1204a11】 QCサークル活動で特許事務の品質向上    


■オンダ国際特許事務所は100人超えるスタッフの能力向上をめざして1985年にQCサークル活動を導入した。

■当初は、QC活動がいやで辞める者が続出。アンケートでも「もうやめたい」という声が大きくなったが、「苦しいけれど耐えて頑張ってほしい」と説得。過去の出願事例を研究したり、仕事の効率化、マニュアル化などに取り組んだ。 

■例えば次のような例がある。
・国際管理部内外グループでは、1人が産休に入ったのを機に5人で事務処理できる体制をめざし、海外との英文連絡文書の定型化、海外との交換文書検索のシステム化、特許庁からの通知文の管理表作成…など。 
・図面作成部門では、長時間のパソコン作業による疲労回復のために、休憩の取得、椅子の高さ調整、体操…などを推奨、CADソフトのバージョンアップに伴う外部研修で習得した技術を他のメンバーに伝達、新人のスキルアップと育児休暇からの復帰者のためにマニュアルを整備/3次元ソフトによる斜視図作成技能の勉強会・質問会の開催…などに取り組んだ。


 
取材先 オンダ国際特許事務所
取材  2012/06/11
掲載  リーダーシップ2012/08
探訪記 
 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki133.htm
 


QCサークルミーティング(上)と社内発表会
 
 【1204a12】 ソフト開発会社の5S活動    

■ソフト開発会社、ユーザックシステムは「5S活動」を展開。「ハードエア改善」と「ソフトウエア改善」の2つの活動を同時並行で進めている。「ハードエア改善」は世間でいう「5S」そのもの。「ソフトウエア改善」は部署ごとの業務改善活動である。

■「ソフトウエア改善」として、次のような事例がある。

・販売・開発・サポート部隊の代表社員がリリース委員会を編成。販売戦略、機能用件の立案検討、販促用資料整備、新バージョン検討などを行ない、その中から、「Autoプラウザ名人」「Autoメール名人」などのヒット商品が生まれた。

・中国のソフト開発子会社に任せられる仕事を増やすために、ユーザックシステムなりの仕事の進め方を子会社スタッフにひとつひとつ勉強してもらい、子会社に依頼できる仕事の範囲を広げ、詳細設計など上流工程も任せられるようにした。

・ホームページを見て商品カタログを請求してくる会社がある。そのオファー件数を高めるために、営業グループは、それまで顧客に対して行ってきたアドバイスを小冊子にまとめ、無償で配布した。また、物流システムソフトのPRのために、ユーザーの同意を得て、会社の実名入りの豊富な物流改善事例をまとめ、ホームページ上に一般公開した。



取材先 ユーザックシステム
取材  2012/07/17
掲載  リーダーシップ2012/09
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki135.htm

 


朝の清掃活動(上)と審査員による書類審査風景
 
【1204a13】 市役所の改善を市民に見えるようにする   

■財政悪化に対応して職員は大幅に削減された。まちの活力を高めていくには市民の理解と協力が欠かせない。そこで、尼崎市役所では2012年から職員の提案をフェイスブックに公開。「いいね」ボタンを押すことで誰でも審査に参加できるようにした。「改善ノススメ、尼崎」と名付けられた2012年度の提案には次のようなものがあった。 

・職員の名刺に「尼崎のええとこ」の写真やキャッチフレーズを入れ、「尼崎のええとこ」をPR

・市内各所を対象とした施策や課題を集約して研修ルートを設定。新規採用者にそれを回らせ、地域の特性や課題を把握させる。

・ものづくりのまちの特性を生かして、尼崎独自の自転車を制作。それを利用してレンタサイクル事業を行なう。

・職員の任意グループによる自主研修「夜カツ」にゲストを招き、仕事哲学、経営哲学、市役所人生を語ってもらい、その後参加者と意見交換。

取材先 尼崎市役所
取材 2013/01/22
掲載 リーダーシップ2013/03
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki143.html

 


提案募集のポスター(上)と審査参加を呼びかけるポスター
 
【1204a14】 患者さんの立場で考える活動を展開  


■福井県済生会病院は1993年に現在の場所に新築移転。スタッフが3倍に膨らんだ。新しく採用されたスタッフは、それまでのスタッフとしばしば衝突し、顧客とのトラブルも引き起こした。そこで、田中延善病院長は患者に支持される医療を安定的に提供していくために、SQMSaiseikai Quality Manegemnt system)という仕組みをつくった。具体的には、

■「進取の精神」「変革」「前向き」「使命感」「やさしさ」「チームワーク」の共有実践を訴える一方で、ISO9001を導入。サービスの品質と提供の仕組みをつくり、バランスト・スコアカードによる業績評価システムを導入した。

20112013年には「日本一患者さんが幸せになる連携医療」を3カ年ビジョンとし、職場ごとに具体的な目標を決め、達成に向けてPDCAを回す活動を展開した。 

■かつての医療現場は、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士たちは全員医師の配下にあったが、クリニカルパス導入、電子カルテ導入を機に、みんなが患者の経過をみながら、主体的に治療計画に関わるチーム医療が進んだ。 

取材先 福井県済生会病院
取材 2013/03/12
掲載 リーダーシップ2013/05
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki145.html

 


福井済生会病院の外観(上)と
3カ年ビジョン策定のための幹部職員合宿
 
 【1204a15】 気づきメモ提案制度  

■焼肉レストラン、ワンダイニングでは、アルバイトを対象に気づきメモ提案制度を実施している。

「今日はこんなことがありました」「そのとき自分としてはこうすべきだったのにそれができなかった。反省しています」などの感想や提案をメモして、スタッフルームへ貼り出す。

店長や社員がそれを読んで返信する。全員と個別面談するのは難しいが、それを補完するために始まり、各店毎月10枚以上というノルマを課した。

気づきメモは1カ月分をまとめて本社に送る。その中から3枚程度を各ブロック長が選び、「気づきメモ読み合わせ会」を行なう。その中から選んだ優秀作の提案者に提案の詳細や背景を聞き、「気づき通信」としてまとめ、全社に配信する。

この活動によってアルバイトたちの自主性と創意工夫の増進、各店舗の運営ノウハウの共有化が図られている。



取材先 ワン・ダイニング
取材 2014/03/19
掲載 リーダーシップ2014/05
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki156.html

 


張り出された気づきメモ(上)と
気づきメモ読み合わせ会
 
【1204a16】 カイゼンでワークライフバランスを改善   

■「時間外勤務を半減させ、職員のワークライフバランスを改善しよう」との平井伸治知事の提唱がきっかけとなり、鳥取県庁は2010年からカイゼン活動を始めた。

■県土整備事務所建設総務課は、課員8人のうち3人が就学前の子供を持つ女性職員。ムリがきかず、職場として配慮が必要な場合が少なくなかったため、一部の人たちに時間外勤務が集中した。

■それを改善するためにカイゼンチーム、5Sチーム、OJTチーム、下請点検チーム…などをつくった。各チームは活動計画を立て、進捗状況を課長に報告し、軌道修正しながら活動をすすめ、その中で次のようなカイゼンが生まれた。 

・課の業務フロー図を作成。その過程で起こりやすい問題について話し合い、約款のパターン化、業務の標準化、簡素化、適正化、効率化を進めた。

・事業者と契約書を交わすとき、契約書の案文を先に渡すと、事業者がそれを打ち直し、抜けや改ざんの可能性が生じ、そのためのチェックも必要になる。そこで、先に建設総務課が押印した文書に事業者に押印してもらうことにした。

・契約関係書類は担当者ごとにそれぞれの場所に平積みされていたので、探すのに時間がかかった。そこで、縦置きし、ラベルを張り、事業の種類ごとに色分けして、探しやすくした。…等々。

■これらの改善により、業務の標準化・簡素化・適正化・効率化がすすみ、別の担当者が代行できるようになり、これにより、休みが取りやすくなり、職員にやさしい職場になった。

取材先 鳥取県庁
取材 2014/04/23
掲載 リーダーシップ2014/06
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki157.html
 


県庁カイゼン発表会(上)と
マンガ版独自カイゼンテキスト「鳥馬伝」の表紙
 
【1204a17】 幸福実感日本一をめざす人づくり改革    

■三重県庁では2012年から始まった「幸福実感日本一をめざす人づくり改革」の一環として、「MIE職員力アワード」という発表会と表彰制度、中堅・若手職員による「ジュニアボード制度」、「若手・中堅職員養成塾」の開講を行った。

■これらの取り組みの中から次のような改善改革が生まれた。

・総務部のジュニアボードが100を越える課の50音順の案内表示を作成。さらに電光掲示板の設置を提案。

・知的障害児学校の教職員が女子美術大学とのコラボで、知的障害児の図工作品と女子美大所蔵作品を一緒にならべた「アール・ブリュット(生の芸術)展」を開催。

・農林水産部若手技師が、福祉施設障害者の就労先を開拓。真珠養殖のためのアコヤ貝の付着器製作作業、鮮魚販売などの仕事を開拓。

・環境生活部のジュニアボードが、三重県総合博物館の来館者リピート率を高めるために、無料送迎バス運行、学べる遊具・方言による音声ガイドなどを提案。

・紀南地域活性化局環境室が、産業廃棄物の不法投棄に対して、次のような方法で、行政指導の実効性を高めた。@事業者に対する指導を口頭指導から文書指導に変え、指導内容を明確化。A指導文書の紙色を白黄赤にカラー化、指導の重要度が一目でわかるようにした。

取材先 三重県庁
取材 2014/05/21
掲載 リーダーシップ2014/07
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki158.html 



 


(上から)本庁舎の案内掲示板、
アールブリュエットブリュット展、
アコヤ貝付着器の製作
 
【1204a18】 「ひとり1改革運動」で危険ドラッグ撲滅に取り組む   


■静岡県庁の薬事課薬物対策班は危険ドラッグの撲滅に取り組み、その概要を「ひとり1改革運動」で発表。2014年度の最優秀賞を獲得した。

■活動内容は次の通りである。

@県内の不動産業界団体と提携。危険ドラッグ販売事業者に店舗を貸さないこと、危険ドラッグ販売事業者と判明した場合には契約解除することを業界の標準契約書に盛り込んだ。トラック業界とも同様の協定を締結し、危険ドラッグを運ばないこと、運んだ場合は、いつどういうものをどこへ運んだかを報告して貰うことにした。

A不動産業界団体やトラック業界との連携をメディアに情報発信。また、県警本部の協力を得て、県内の販売業者6店に対して一斉取り締まりを行ない、その様子をメディアを通じてドキュメンタリー報道した。

Bこのほか、駅前で危険ドラッグ撲滅のためのパレード、音楽イベントでティッシュとチラシを配布、県内小中高校で危険ドラッグの危険性を説く「薬学講座」の開催などを行った。

C不動産業界とトラック業界との協定はその後、条例として議会で可決し、交付した。

■薬物対策班のこの活動は、教育委員会、県警など関係機関の協力を得て大きな効果をあげ、2014年度中に37回の店舗への立ち入り検査を実施、県内に6店の危険ドラッグ販売店をすべて閉鎖に追い込むことに成功した。

取材先 静岡県庁
取材 2015/03/27
掲載 リーダーシップ2015/05
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki167.html
 


危険ドラッグの風袋サンプル(上)
と撲滅キャンペーンポスター
 
【1204a19】 利用者満足度向上をめざす救護施設のQCサークル活動    


■郡山清和救護園では生活保護費等を財源
障害者や高齢者に、食事サービスや日常生活支援などのサービスを提供しており、職員は利用者満足度向上をめざして次のようなQCサークル活動を展開している。

複数の薬を服用している利用者がいる。1回でまとめて飲めるように、看護師それらをまとめていたが、そのためにかなりの時間がかかった。そこで、1包化を無償で引き受けてくれる調剤薬局を探し、そこに薬の調剤を依頼することにした。

利用者の昼食はご飯食かラーメンを選んで予約することになっていたが、「ラーメンが伸びていておいしくない」という苦情があった。そこでラーメン店を見学し、どうしたら伸びないラーメンを提供できるかを調べ、配膳してから利用者に席についてもらうという従来のやり方を改め、配膳前に席についてもらい、席に着いた人から順に出来立てのラーメを出すことにした。

2人部屋の居室で、1人が早起きするので眠れないという苦情があった。そこで、利用者と嘱託医にヒヤリングの結果、630の起床時刻前に起きた人はロビーで新聞雑誌を読んだりトランプなどで遊ぶこと、起床時刻を1〜3月→630、4〜6月→530、7〜9月→5001012月→530とすること、居室の時計を見やすい位置に変更することにした。



取材先 郡山清和救護園
取材 2016/03/07
掲載 リーダーシップ2016/05
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki179.html
 

 


郡山清和救護園の利用者団
らん風景(上)とリハビリ体操
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