絵で見る創意くふう事典  》 第12章 組織  》 全員の力を結集する
 
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組織‐1205a 全員の力を結集する BACK
 このページの掲載事例→                 ●1205a01 儲かる儲からないを言うよりまずつくる  
●1205a02 社員の力を結集して新技術に挑戦する
●1205a03 社員をレベルアップし新規事業を開拓する  
●1205a04 「企業は人なり」を実践する社員教育
●1205a05 ボトムアップ型組織をつくる  
【1205a01】儲かる儲からないを言うよりまず作る  

プラスチックの異形押出成型のメーカー、カツロンの石川宏社長は大手からの注文が欲しいと思っていた。大手に納入すれば信用がつき、同じものを大量に生産すれば経営が安定する…と。 

■しかし、大手から念願の注文をもらったが、ある日突然「来月からもういいよ」と言われた。大手はカツロンの作った製品と図面で、そのまま協力会社に作らせた。似たような経験を繰り返し、以後大手の仕事はしない。これからはニッチに特化していこうと決めた。

■以来、どんなに小ロットでも試作品でも快く引き受けることに決め、「儲かる儲からないを言うより先にまず作れ」と自分にも社員にも言い聞かせた。やがて、いつでも無理難題を引き受けてくれる会社という評判を手に入れた。

漁船の防舷材、お茶の葉に撚りをかける機械の内壁に貼り付けるプラスチック、眼鏡とレンズの間に挟まっているパッキン、電車やバスのドアと窓のパッキン、道路の点字ブロック…など、ユニークな同社製品は、どんなものでも引き受け、ものにする中で磨きあげた技術の結果である。
 

■ニッチに特化するという戦略は、技術力を高めるとともに、社員の結束力も高めた。その後新工場を建設と同時に社員持株会が発足。カツロンは石川社長の同族会社から社員みんなの会社になった。

 

取材先 カツロン 
取材 2007/10/26
掲載先 ポジティブ 2007/12
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki056.html

 


異形押出成形品(上)と見本市会場のカツロンのブース
 
【1205a02】 社員総力を結集して新技術に挑戦   

■織機、木工機、工作機械の鋳物部品をつくってきた㈱古久根は、新卒採用と社員の育成に力を入れ、日々の仕事で学んだことを発表させて、知識技術の向上に力を注いできた。だが、近年は安価な中国製品に市場を奪われて業績が悪化していた。

■そんな時、プリント基板実装機のフレームの鋳造の注文が入ってきた。高スピードでミクロン単位の細かい仕事をする大きくて重いロボットを支えるフレームを鋳物で作るという仕事で、それまでの技術では到底作れないシロモノだったが、あえて挑戦することを決めた。

■これまでにない新しい技術に総力を挙げて取り組み、困難を乗り越えて発注者からの依頼に応えた。このことが高く評価され、中小企業庁の地域産業資源活用計画の認定を受け、さらに、政府系金融機関の低利の融資を受けられたことから、赤字から脱出、採算ベースを回復した。

■最近では、中国製品への傾斜から揺り戻しが起き、品質では国内製品に勝るものはないという声があちこちで出てきている。「日本のものづくりはやはり勝ち続けなければいけません。我々は鋳物の分野で日本一を目指したい。みんなにもそう言い続けています」と古久根靖社長は語っている。



取材先 古久根
取材 2008/11/20
掲載先 ポジティブ 2009/01
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki077.html

 


プリント基板実装機フレーム(上)と鋳造工場
 
【1205a03】 社員をレベルアップし新規事業を開拓する  


■プラスチックと異質素材を一体成型するインサート成型の会社、ミヤコテック(京都市)は、多くの電気電子部品をつくってきたが、バブル崩壊後、得意先の多くが海外に移転し、受注が減少、経営基盤が揺らぎ始めた。

■これに対応して、社内では、ムダを省き、連携強化、技術レベルの向上を図った。
S活動を展開。

②平準化ボックスによる「目で見る管理」の推進。
   電気制御回路を勉強して「ラインの自動化」を推進。
   「集中タイム」を設けて企画立案や書類作成に集中。

⑤コスト・技術・品質・納期・テクニカルについて、会社方針と目標、部門目標、個人目標を決め、目標必達をめざした。

■社外では異業種交流を進め、新しい事業の柱を2本作ることをめざした。ひとつは、発泡スチロールに代わる環境にやさしい発泡体の開発。古紙とコーンスターチによるでんぷんを水蒸気で発泡させたもので、現在売上の20%を占めるまでに成長している。もうひとつは、改善改革の中で培った自動化技術を事業化し、他社の問題解決を引き受けることをめざし、すでにいくつかの実績が生まれている。

■本業のプラスチック成型分野では、金属プレス加工会社と熱硬化性樹脂の素材開発会社との連携で、高精度の気体流量測定装置の部品開発に成功。この開発は2006年、経済産業省の「新連携」の認定を受けた。このほか2003年に京都市から「オスカー」の認定、2008年に京都府から「元気印企業」の認定、プラスチック成形部門を統括するモールディング部長が「現代の名工」として表彰されている。



取材先 ミヤコテック
取材 2008/12/24

掲載先 ポジティブ 2009/02
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki165.html  

 


インサート成型品(上)と全員参加の忘年会
 
【1205a04】 企業はひとなりを実践する社員教育  


■「白醤油」「白だし」を製造販売する七福醸造(愛知県安城市)は「企業は人なり」「お客様を第一に考える」「他社にない特色を出して差別化を図る」をポリシーとしている。

■犬塚敦統社長は、あるコンサルタントから「社員は社長の後ろ姿を見ている、社長が変わらなければ社員は変わらない」と忠告されたことをきっかけに、自分を磨くことを心がけ、社員がそれに続いている。

■その一環として次のような体験教育を実践している。

・毎朝トイレ・事務所・階段を磨く環境整備活動

・3日間機械を止めて実施する工場集中環境整備活動

・道路の空き缶、ゴミ拾い活動

・子どもたちや親たちと一緒になって行う学校のトイレ清掃活動

・社員全員で混声合唱団を編成。市民病院で慰問コンサートを開催。

・「地球村運動」として、マイ箸運動・マイバッグ運動・・冷暖房節減・ゴミ削減。ノーマイカーデー・森林を守る運動・フロンガス回収活動などを実践。

1993年から砂漠緑化活動に協力。社長と新入社員が内モンゴルまででかけて植林活動。

100キロ歩け歩け大会。碧南市から三河湾沿いに伊良湖岬までの100キロを全社員で歩く。日常では経験することのない厳しさを克服する中で、自分自身の本当の姿を再発見する。

取材先 七福醸造
取材 2007/03/12
掲載 ポジティブ2007/0
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki037.html



地域の学校でのトイレ清掃奉仕活動(上)
と100キロ歩け歩け大会
【1205a05】 ボトムアップ型組織をつくる  


■経済成長の時代はトップダウン型リーダーシップが有効だったが、経済が停滞してくると、社員1人ひとりがマーケットの動向を注視し、情報を集め、それをもとにして進むべき方向を決めなければならない。㈱吉村の橋本久美子社長は、そのために、それまでのトップダウン型組織を次のようなボトムアップ型組織に変えた。

[壁新聞]
 売上、経費、利益などの数字を壁新聞にして公開した。

[イチオシ投票]
 社員表彰は従来トップが1人で受賞者を決めていたが、全社員が自分以外の1人に1票入れる形に変え、票数の多い10人を表彰することにした。

[全員が会議体のメンバーに]
 取締役会、経営会議、評価者会議、販促会議、クレーム対策会議、安全衛生委員会、ES会議、成長を広げる委員会、わくわくみらい会議、消費者座談会の出席候補者人選会議…など、全社員にそのいずれかの会議のメンバーとなり、必ず発言することを求めた。多様な意見を取り入れることと、職場横断的な人間関係を作ることが狙いである。

[利益均等還元制度]
 前期は純利益の20%、後期は経常利益の25%を全社員に均等還元する。12カ月働いた人なら、社長も新入社員も同額。

[オレンジプロジェクト]
従業員満足度を調査がきっかけで、みんなの働きやすさを考える「オレンジプロジェクト」がスタート。子育てや介護のための「時短勤務制度」、つわりのとき2週間休のもOKという制度、配偶者の転勤でやむを得ず会社を退職する社員に「MO(機会があれば戻っておいで)カード」を渡す制度が生まれた。

取材先 吉村
取材 2016/10/05
掲載 リーダーシップ2016/12
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki186.html

 


吉村本社ビルと全員参加会議
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