改善の事典  》 第10章 事務  解説 「事務」とは
 
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 解説   「事務」とは


芸術家は、自分にしか作れない、世界でたったひとつの作品を作ろうとします。それを評価する人が現れ、その作品を買ってもらえれば、彼はそれで充分に満足で、その報酬で生活を支えながら、彼は再び次の作品づくりに没頭するでしょう。しかし、世間の多くの人々に利用してもらえる、もっと汎用性のあるモノを作って売ることで事業を起こそうとする場合は、作るモノ、売るモノはたったひとつというわけにはいきません。最初から大量生産大量販売をねらえるわけではないにしろ、事業を継続できる程度の一定数量以上の規模でモノを作り、できるだけ多くの人に買ってもらわねばなりません。そのためには事業者1人ではどうにもならず、人を雇い、彼らに命じて、計画した通りに作ってもらい、売ってもらわなければなりません。

その人たちに指示を与え、その働きを見守り、賃金を支払い、あるいはその人たちの仕事の結果としてお金の出入りを管理するという事務の仕事は、当初は経営者自身がやらなければなりません。しかし、自分自身の発意によって事業を始めた経営者としては、製品をもっと改良したいと考えるし、もっと販路の拡大を図るなど、彼にしかできない重要な仕事があります。事務の仕事だけに忙殺されているわけにはいかないのです。

そこで、ある程度の収益を確保できるようになると、経営者は信頼できる事務の専門家を雇って、仕事を任せます。このとき、最初のモノを作って売るという仕事に携わる人たちのグループを「直接部門」、その後方で直接部門の働きを管理し、サポートする人たちのグループを「間接部門」と呼びます。

事務部門、すなわち間接部門は、経営者の分身のような存在です。収益に余裕が生まれると、経営者は自分が最も重要だと考える仕事に集中するために、様々な専門家を新たに雇い入れ、彼らに仕事を任せていきます。経理、人事にはじまり、企画開発、情報システム管理、購買、特許管理、広告宣伝…等々。

しかし、忘れてはならないのは、事務部門は自分たちに関わる経費を直接部門に依存していて自分自身では利益を生み出さないという点です。販売部門では、どんな売り方をしたらどれくらい売れるかという一応の見込みがあります。それに応じて少しずつ人数を増やしていきます。もしも売れなければ、売り方を変えなければならず、それでも成果を得られなければ、人員を削減することを考えなければなりません。生産部門は販売部門がこれくらいは売ってくれるだろうという見込みの範囲でモノを作り、それに合わせて人を増やしていきます。売上が減ってくると生産を減らし、その結果人が余ってくると、人員の削減を検討しなければならなくなります。

しかし、会社の収益と直接リンクしていない事務部門は適正規模がみえにくく、ともすれば必要以上の人数を抱え込んで経営を不安定にする危険があります。従って、常にその規模を必要最小限に保つ目配りと努力が必要です。この章ではともすれば肥大化しがちな事務の仕事を最小限にとどめるくふうを集めます。

(2015/11/14)

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