改善の事典  》 第7章  省力化  》 解説 「省力化」とは
 
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 解説   「省力化」とは 


たとえば、昔の路線バスには運転手と車掌が乗っていて、車掌は社内で切符を売り、「次は○○」と停留所の案内をしていました。お客は車掌に「次、降ります」と伝え、それを車掌が「次、停車」と大声で運転手に伝えていたものでした。今はほとんどのバスに車掌は居ません。切符の販売は運転席横の運賃箱に、停車の案内はボタンを押して運転席後ろの「次とまります」という文字を光らせるシステムに代わりました。鉄道の駅でも昔は窓口で人が切符を売っていて、改札口では人が切符を切っていたのですが、それも自動券売機と自動改札機に代わりました。

機械は最初の1台目をつくるのに莫大な開発投資を必要とします。しかし、一旦開発に成功すると、その後の2台目、3台目の製作費は大幅に低下します。これに対して、人を雇い続けるには、どこまでも一定の賃金を払い続けなければなりません。そこで、同じものを大量に処理したり、大勢の利用者に同じサービスを行なう仕事を一旦機械に置き換えることに成功すると、その後は大幅に人件費を節約することができるようになります。こうして、人間社会は、労働者が担っていた仕事を次々機械に置き換えてきました。
これにより多くの労働者が仕事を失いました。19世紀の初めのイギリスの織物工業地帯では、これに反発した労働者が集団で機械を破壊する事件が起こりました。この事件は指導者(ネッド・ラッド)の名前から「ラッダイト運動」と呼ばれました。しかし、たとえ機械を破戒しても時代を元の手工業時代に引き戻すことはできませんでした。

機械化するには、人間の仕事の仕方を十分に観察し、ムリ・ムダ・ムラを省いて標準化し、できる限り負荷の少ない単純なものにしておいてから、機械に置き換えます。現場の創意くふう・改善活動は、見方によっては、やがて機械に置き換える前段階の調査工夫を個々の作業者に担わせているのだとも言えます。

人が改善を進めることで合理化が進み、その結果、人はその仕事を失います。しかし、その流れはあらゆる業種、あらゆる世界、あらゆる時代に共通で、それに逆らうことはできません。個々人はむしろ自分から積極的に改善工夫を推進することで、改善の推進者として自分自身の未来を切り開いていくしかないのです。

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