改善の事典  》 第1章  5S  》 解説 「5S」とは
 
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 解説   「5S」とは

仕事には、多くの場合、完成するまでに途中で何度も小休止や中断があります。1日の勤務を終えて家に帰って休み、翌日また仕事に戻って、それを何日も、ときには何カ月も、何年も繰り返して仕事を完成させます。組織の中で仕事するときは、1人がやっていた仕事を同じ人が続けるとは限りません。むしろ、別の人がその後を引き継いで仕事を続けることの方が多いかもしれません。1日1日の仕事と1人ひとりの仕事を、きちんと結合させていくことで、人は大きな仕事を完成させていきます。

それら仕事と仕事の接点の部分で、昨日の仕事を今日に、1人の仕事を次の人に、うまく引き継げるかどうか、が仕事の効率を大きく左右します。今日の仕事を終えるときには、次に再開するときにすぐにとりかれるようにしておかなければなりません。そのために重要なのが「5S」です。

「5S」とは「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」のことで、「整理」とは要らないものを片づけること、「整頓」とは仕事の材料や道具などを使いやすいように配置すること、「清掃」は職場の中をきれいにすること、「清潔」はきれいな状態を維持すること、これら「4S」をルール化し、全員に習慣づけ、定着させることを「しつけ」といい、5番目のSとして数えます。

物心がついた子どもに最初に教えることのひとつに「お片づけ」があります。多くの親は、文字を教えるよりもずっと早い時期に、もしかすると自分でトイレに行かせるのと同じ頃に「お片づけ」を教えます。これが身についていないと、仕事が積み上がっていかず、周りが後片付けを引き受けなければならない。何かを一緒にやるパートナーとしては非常に困った存在ということになってしまいます。

職場の中でもしも「5S」ができていなければ、使った道具や書類が片づけられずに積みあがっていき、必要なものと必要でないものがごっちゃになります。必要なものを取り出すのに時間がかかり、ミスが起こりやすくなります。道具や機械が整備されていないとせっかく作ったものが不良になります。スペースが十分に確保されていない中で仕事をしようとすると、モノにぶつかったり、積み上げたものが崩れてきたりして不安全です。ゴミや汚れがほこりもたまっていくと、不衛生で、製品の品質を不安定にします。

さらに、必要なものと必要でないものがごっちゃになっていると、仕事の進み具合がつかめなくなります。完成品在庫がどれだけあるか、仕掛品がどれだけあるのか、良品がどれだけあるか、不良がどれだけ出ているか、それらがわからないと儲かっているのか損をしているのかもわからなくなります。

「5S」は見た目をきれいにするだけでなく、一緒に働く人の仕事のしやすさ、全体の効率を考えて、ものの置き方、表示の仕方を工夫することが大切です。それによって、人と人、仕事と仕事の接点の部分をシームレスにすることが「5S」の究極の目標です。

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