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組織‐1211 Jビジョンを提示する BACKNEXT

一方的に与えられた目標に、人は反発を感じ、できればそれから逃れたいと思います。社員がその目標の達成のために自分の持っている力のすべてを投入しようという気持になるためには、目標の向こうにどんなビジョン、どんな理想を描くかが問題になります。掲げられた目標が一部の人たちに利益を与えるものでしかなければ、多くの社員の共感を得ることはできません。誰もが共感できる明確なビジョンを掲げ、そのビジョンへの信頼を築いた企業だけが、より多くの人の力を結集することが可能になります。

 このページの掲載事例→            ●121101 経営理念を提示する  
 ●121102 全員参加で経営理念をつくる  
 ●121103 経営ビジョンを策定した新聞販売店  
 ●121104 「企業は人なり」を実践する  
 ●121105 社員に夢を持たせ、夢の実現をめざして仕事に打ち込ませる  
 ●121106 経営理念を常時携行する
 ●121107 経営理念をみんなで唱和する
 ●121108 キーワードを設定、シルバー事務局と会員の活動を方向付ける
 
【121101】 経営理念を提示する  

■目標達成のための戦いに従業員をはじめとする関係者の積極的な賛同を得るには、数値目標の向こうにどんな世界を目指すのか…というビジョン、理想、大義名分を具体的に描くことが必要になる。企業はそのために、経営方針の基本となる経営理念、社是、社訓を掲げている。

■トヨタグループ「豊田綱領」
・上下一致、至誠業務ニ服シ産業報国ノ實ヲ挙グベシ
・研究ト創造ニ心ヲ致シ常ニ時流ニ先ンズベシ
・華美ヲ戒メ質實剛健タルベシ
・温情友愛ノ精神ヲ發揮シ家庭的美風ヲ作興スベシ
・神佛ヲ尊崇シ報国感謝ノ生活ヲ為スベシ

■松下電器産業「遵奉すべき精神」
・産業報国の精神: 産業報国は当社綱領に示す処にして我等産業人たるものは本精神を第一義とせざるべからず
・公明正大の精神: 公明正大は人間処世の大本(たいほん)にして如何に学識才能を有するも此の精神なきものは以て範とするに足らず
・和親一致の精神: 和親一致は既に当社信条に掲ぐる処個々に如何なる優秀の人材を聚(あつ)むるも此の精神に欠くるあらば所謂(いわゆる)烏合(うごう)の衆にして何等(なんら)の力なし
・力闘向上の精神: 我等使命の達成には徹底的力闘こそ唯一の要諦にして真の平和も向上も此の精神なくては勝ち得られざるべし
・礼節謙譲の精神: 人にして礼節を妄(みだ)り、謙譲の心なくんば社会の秩序は整わざるべし正しき礼儀と謙譲の徳の存する処社会を情操的に美化せしめ以て潤(うるお)いある人生を現出し得るものなり

  
 
【121102】 全員参加で経営理念をつくる   


■金型部品の製造販売業、オネストン(名古屋市)の佐々木正喜社長は、中小企業同友会で経営理念を明文化することの大切さを学び、それを実践してみようと思い立って、社員たちにどんな経営理念がよいか、アイデアを出してくれと呼び掛けた。

■「返事はハキハキとキビキビと」「もっとコンピュータをうまく使いこなしたい」など個人の行動目標のようなものが出てきて、さらに話し合うために土曜日の昼をこのための研修会に当て、さらに一泊研修会を行なって、この会社をどんな会社にしたいかを話し合った。

■「幸せってどんなものだと思う?」と佐々木さんは投げかけた。「給料が高いこと」「休みが多いこと」「仕事がラクであること」「健康であること」…、いろいろ出てきた。「じゃあ、不幸だと感じるときは?」と聞くと、「給料が少ないこと」「仕事がきついこと」と、ちょうどその反対のことをみんな口々に言った。「そうかな、仕事がラクでお金さえたくさん入ればいいのかな?」と佐々木さんは続けた。

■「私たちは3つのグループに属して生活している。ひとつは会社の仲間や得意先、仕事上の付き合いの仲間、2つ目は家族、親兄弟、親戚など、3つ目は子供時代、学生時代の友人知人、あるいは地域の人々のグループ。これら3つのグループの中で自分だけ除け者にされたらどうなるか、それを想像してみて欲しい。

■たとえば、学生時代の仲間が集まって同窓会をやろうというとき、『あいつだけは呼ぶなよ』と言われたら、どう感じるだろう? たとえ十分なお金を手に入れたとしても仲間から相手にされなかったとしたら、それが一番の不幸じゃないのかな? 

■逆に『あいつのことは忘れるなよ。こういう難しい仕事は絶対あいつでないとダメだ』とみんなから当てにされるようになれば、それこそが最も幸せな状態ではないか。会社もそうだと思う。オネストンに頼めば安心だ。安心して任せておける、そう言ってもらえる会社にならなければならないし、みんなでそういう会社を作っていきたいと思っている」

■そんな話し合いを経て出てきたみんなの意見をまとめて、経営理念は「心の豊かさ、生活の豊かさを求め、社会に役立つことに喜びを感じ、幸せが得られる会社作りをめざす」とした。あれから20年以上たっており、いまはその後に入ってきた社員の方がずっと多くなっているが、新入社員が入るたびに佐々木さんはこの経営理念がどんな経過を経て生まれてきたかを語って聞かせ、こう付け加えている。「国に憲法があるように私たちの会社には経営理念があります。この経営理念は私たちの憲法です」と。

取材先 オネストン(tanbouki 072
取材 2008/08/22
掲載 ポジティブ2008/11
本文 honeston.pdf へのリンク

 ←会議風景
 
 【121103】 経営ビジョンを策定した新聞販売店  

■新聞は再販制度により、新聞社が指定した価格で、新聞社が認定した販売店が決められたテリトリーの中で安定的販売されることになっている。しかし、実際には購読契約に際して豪華な景品をつけたり、何カ月分かの購読代金をサービスするなど、購読者獲得の激しい競争が行われている。

■活字離れが進むなか、再販制度を見直して新聞販売を自由化すべきとの声が高まっている。そこで、ASA栃木中央の松尾光雄社長は自由化に備えて、自由競争を戦って行ける体力を身につけるために、地域の新聞販売店とともに経営品質を勉強。次のような改革を行なった。

■次のような経営ビジョンを策定した。
「私たちは感謝と誠実な心でお客様に接し、社員や協力会社、地域社会すべての人々に喜ばれ、信頼される拠点ASAを目指します。私たちは読者と新聞社の架け橋として、1軒1軒のお宅に新聞と生活に役立つ情報・サービスをタイムリーにお届けすることで読者からの長期的な高い信頼を得ます」

■この経営目標に近づくために、販売店の3つの仕事、配達・集金・営業について、何をどうすべきかをみんなで確認。仕事のマニュアルを作成した。例えば、配達→約束した時刻に間違いなく新聞を届ける/バイクを整備する/バイクの荷台が荷崩れしないよう新聞を縛る/事故を起こさないために、交通ルールを守る、交差点では左右を確認する…。

■新規顧客開拓のために手づくり情報誌を作成。テリトリー内全戸に手渡しすることをめざした。ヒゲそそり、ネクタイを締め、胸にIDカードを付けて、「私たちは新聞社と読者をつなぐ架け橋になりたいのです」と説明。留守宅にはポストに入れる。訪問結果は記録に残す。これを毎月地道に繰り返し、物による営業から人による営業を目指した。

■地域社会から認められ、信頼される会社になるために、
・毎月1回道路の清掃奉仕活動を実施/トラックで古紙を回収しロールペーパーと交換/収益金は緑化基金に寄付。後に栃木県販売店全体で実施。
・年1回フリーマーケットを開催。収益金の一部を地域の盲導犬教練所に寄付。後に埼玉・栃木・群馬の朝日新聞販売店全体で実施。

取材先 ASA栃木中央(tanbouki 014
取材 2006//21
掲載 ポジティブ2006/09
本文 asatochigi.pdf へのリンク

←フリーマーケットで挨拶する松尾社長
 
 【121104】 「企業は人なり」を実践する  

■「白醤油」「白だし」を製造販売する七福醸造(愛知県安城市)は「企業は人なり」「お客様を第一に考える」「他社にない特色を出して差別化を図る」をポリシーにしている。犬塚敦統社長は、あるコンサルタントの「社員は社長の後ろ姿を見ている、社長が変わらなければ社員は変わらない」との忠告に感銘し、自分を磨くことを心がけており、社員がそれにつづいている。

■同社はいま次のような体験教育を実践している。
・毎朝トイレ・事務所・階段を磨く環境整備活動
・3日間機械を止めて実施する工場集中環境整備活動
・道路の空き缶、ゴミ拾い活動
・子どもたちや親たちと一緒になって行う学校の取れ清掃活動
・社員全員で混声合唱団を編成。市民病院で慰問コンサートを開催
・地球村運動を立上げ、マイ箸運動・マイバッグ運動・・冷暖房節減・ゴミ削減。ノーマイカーデー・森林を守る運動
・フロンガス回収活動などを実践

1993年から砂漠緑化活動に協力。社長と新入社員が内モンゴルまででかけて植林活動
100キロ歩け歩け大会。碧南市から三河湾沿いに伊良湖岬までの100キロを全社員で歩く。日常では経験することのない厳しさを克服する中で、自分自身の本当の姿を再発見する。

取材先 七福醸造(tanbouki 034
取材 2007/03/12
掲載 ポジティブ2007/0
本文 shichifuku.pdf へのリンク
  

 ←100キロ歩け歩け大会
 
【121105】社員に夢を持たせ、夢の実現をめざして仕事に打ち込ませる  


■ビルの清掃と設備メンテナンスの受託業、四国管財(高知市)の中澤清一社長は、いい仕事をして適正な料金をいただいて、社員に十分な給与を払える会社にしたいと思い続け、社員の質を高めることに力を入れてきた。

■そのために社員1人ひとりが夢を持ち、いきいきと働ける会社をめざして「ベーシック」と名付けた行動基準を定めている。そこには「常に笑顔」「あいさつの実践」「報連相」「自己責任」…などとともに「夢を持とう」という1項を設け、「この会社で働くことは1人ひとりの夢を実現する手段だと考えてほしい」と訴えている。

■社員の1人ひとりに「あなたの夢はなんですか」と問いかけると、「独立して会社をつくること」「スキューバダイビングのライセンスをとること」「よさこい祭り連続出場で若さを保つ」「マイホームを建てる」「自衛官になりたい」「介護福祉士になりたい」「田舎に住むこと」「家族の笑顔」「健康」…など、いろんな答えが返ってくる。

■採用面接でも、はっきり夢を語る人を採用している。夢とか感動とかよりもとにかくお金…という人には遠慮して貰っている。

■「ベーシック」を定着させるために、朝礼では「夢」「笑顔」「あいさつ」…などについて考えていること、反省点などを発言させている。

■他人のために掃除するという仕事を、最初から好きと言う人はいない。多くの人は恥ずかしいと思っている。その気持ちのままではいい仕事ができるはずがない。そこで、自分の夢の実現をかけて、全身の力を込め、汚れ役に取り組んでくださいと、中澤さんは言っている。そうすれば、外見にこだわって尻込みしていた自分の殻を破ることができる。問題にぶつかって改善を重ね、お客様の賞賛を勝ち取っていけば、それがやがて大きな自信につながっていくという。

取材先 四国管財(tanbouki 040
取材 2007/04/16
掲載 ポジティブ2007/07
本文 shikokukanzai.pdf へのリンク 

 
 
 【121106】経営理念を常時携行する  

■福井キャノン事務機は、創立25周年を機に経営理念を見直した。それまでの「お客様を大切に」を一歩進め、お客様を最優先にしてお客様に価値を提供する、お客様から信頼され、地域から尊敬される会社になることを強く打ち出したものである。
 

■この理念の共有を図るために、名札の裏に経営理念を印刷し、全社員が常時それを携行している。

取材先 福井キヤノン事務機(tanbouki 002
取材 2005/11/18  

 
 
 【121107】経営理念をみんなで唱和する  


■スーパーホテルでは、次のような経営理念を全従業員が毎朝の朝礼で唱和している。

@私たちは常に『安全・清潔・ぐっすり眠れる』スペースを創造し,お客様第一主義を旨として,お客様に元気になっていただき,活力ある社会活動,経済活動をされるのに貢献します。
A現地現物主義に徹してお客様に満足していただくため,私たちはひたすらお客様の要求に合わせて自分を変えて行きます。
B世界的レベルでの質の高いサービスをグループを挙げて構築しながら,時代を先取りする創造的な企業をめざします。


■経営理念を唱和するだけではなかなか浸透しない。そこで,1人ずつ順番に思うことを発表させることにした。発表するには,人の言葉に耳を傾けなければならない。その中身を咀嚼しなければならず,自ら考えて行動を起こさなければならない。従業員たちはすすんで5Sに気を配り,お客様へのプラスアルファの声かけに努めるようになった。そして,従業員からの提案が増えたという。

取材先 スーパーホテル(tanbouki 014
取材 2010/08/30
掲載 リーダーシップ2010/11
本文 superhotel.pdf 

 ←朝礼風景
 
 【121108】キーワードを設定、シルバー事務局と会員の活動を方向づける

■豊橋市シルバー人材センター(会員数1500人)は、職員と会員の意識を集中し、新しい課題に取り組むために、毎年キーワードを決めている。

2011年のキーワードは「報告・連絡・相談」、2012年は「動」、2013年「考動」、2014年「実動」、2015年「2+1」、2016年「2増1減」と続いた。その下で地域班の再編、ソーイング独自事業、感謝祭、ボランティア活動、福祉施設の指定管理受託、ワンコイン事業、派遣事業、空き家管理…などに取り組んできた。

■ちなみに「2+1」の「2」は、「会員増」と「仕事増」。センターはこの2つを求め続けてきたが、「安全・安心」の「+1」が必要だという。単に「会員増」と「仕事増」を求めてもうまく進まない。会員と発注者の「安全・安心」という「+1」のメリットを追求しないと「会員増」と「仕事増」は手に入れられないという意味である。

取材先 豊橋市シルバー人材センター
取材 2017/02/24
掲載 月刊シルバージンザイセンター2017/06

 ←草刈機講習会場に掲げられたポスター 
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