絵で見る創意くふう事典  》 第12章 組織  》 ⑪総力を結集する
 
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組織‐1211 ⑪総力を結集する BACK

組織にとってかけがいのない1人ひとりの力を結集すれば、大きな力になります。そのようにして組織の総力を結集し、局面を切り拓いた事例を集めました。

 このページの掲載事例→                 ●121101 儲かる儲からないを言うよりまずつくる  
●121102 社員総力を結集して新技術に挑戦
●121103 改善改革で社員をレベルアップし新規事業開拓  
●121104 みんなの心をひとつにする
●121105 ボトムアップ型組織をつくる  
●121106 「企業は人なり」を実践する社員教育  
【121101】儲かる儲からないを言うよりまず作る  


プラスチックの異形押出成型のメーカー、カツロンの石川宏社長は、かつて、大手の仕事が欲しいと思っていた。大手メーカーに製品を納入すれば信用がつき、同じものを大量生産すれば経営が安定すると考えた。だが、大手から念願の注文をもらっても、喜びは長く続かなかった。

ある日突然、先方の購買担当者から「来月からもういいよ」と言われるのだ。大手はカツロンが作った製品と図面で、そのまま協力会社に作らせる。大手と付き合うには対等にものが言えるだけの独自技術を持たなければならない、ということがわかるまでに似たような経験を繰り返し、以後大手の仕事はしない。これからはニッチに特化していこうと決めた。

どんな新製品も最初は小ロットから出発する。量のない世界がむしろいろんな可能性を秘めている。それに挑戦し、ものにすることで独自技術が身につく。そう考えて、その後はどんなに小ロットでも試作品でも快く引き受けることにした。「儲かる儲からないを言うより先にまず作れ」と社員に命じ、いつでも無理難題を引き受けてくれる会社という評判を手に入れた。

漁船の防舷材、お茶の葉に撚りをかける機械の内壁に貼り付けるプラスチック、眼鏡とレンズの間に挟まっているパッキン、電車やバスのドアと窓のパッキン、道路の点字ブロックなど、ユニークな同社製品は、どんなものでも引き受け、ものにする中で磨きあげた技術の結果である。

■ニッチに特化するという戦略は、技術力を高めるとともに、社員の結束力も高めた。1996年、奈良に新工場を建設。それと同時に社員持株会を発足させ、石川社長の同族会社から社員みんなの会社になった。

取材先 カツロン 
取材 2007/10/26
掲載 ポジティブ2007/12
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki056.html

 
異形押出成形品(左)と見本市会場のカツロンブース
 
【121102】 社員総力を結集して新技術に挑戦   

■㈱古久根は、これまでに織機、木工機、あるいは工作機械の鋳物部品をつくってきたが、バブル崩壊後、安価な中国製品に押され、存続が危ぶまれていた。

■そんなとき、プリント基板実装機のフレームの鋳造の仕事が入ってきた。プリント基盤製造工場で高スピードでミクロン単位の細かい仕事をする大きくて重いロボットを支えるフレームを鋳物で作るという仕事で、それまでの技術では到底作れないシロモノだった。

■同業他社が高齢者、派遣労働者、外国人研修生などをかき集めてなんとか仕事をこなす中で、同社は新卒採用にこだわり、入社した社員にはやる気を引き出し育てるための努力を惜しまなかった。

■技能検定試験への挑戦を奨励。1級合格者が2級合格者を指導し、2級合格者が新入社員を指導する体制を作り上げていた。

■「わかった発表会」を定期的に開催。「砂型に塗料を塗るのはなぜか」「溶湯の温度管理はなぜ必要か」「鉄と鋳物の違いは何か」…など、日々の仕事で学んだこと、わかったことを発表させて、鋳物の知識を伸ばし、トップを含めた全員が1人ひとりの成長を注視していることを分からせた。

■プリント基板実装機のフレームの鋳造は、これまでにない新しい技術への挑戦だったが、社員の総力を挙げてそれに取り組んできたことが評価され、中小企業庁の地域産業資源活用計画の認定を受け、さらに、政府系金融機関の低利の融資を受けられたことから、赤字から脱出、採算ベースを回復した。

■最近では、中国製品への傾斜から揺り戻しが起き、品質では国内製品に勝るものはないという声があちこちで出てきている。「日本のものづくりはやはり勝ち続けなければいけません。我々は鋳物の分野で日本一を目指したい。みんなにもそう言い続けています」古久根靖社長の言葉である。

取材先 古久根
取材 2008/11/20
掲載 ポジティブ2009/01
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki077.html

 

プリント基板実装機フレーム(左)と鋳造工場
 
【121103】 改善改革で社員をレベルアップし新規事業開拓  

■ミヤコテック(京都市)はプラスチックと異質素材を一体成型するインサート成型の会社である。多くの電気電子部品をつくってきたが、バブル崩壊後、得意先の多くが生産拠点を海外に移したことで、受注が減少。経営基盤が揺らぎ始めた。

■この事態に対応して、市川克一社長(当時は専務)は、得意先企業の指導を受けながら、仕事の無駄を省き、社内の連携を強化し、技術レベルを高めるための改善改革に取り組んだ。

S(整理・整頓・清掃)活動により、職場を常に最も仕事しやすい状態に保った。

②平準化ボックス:工程ごとに仕切った「平準化ボックス」に受注伝票を差入れ、受注品が今どの工程にあるかが分かるように「目で見る管理」を行なった。

ラインの自動化:市川さん自身が電気制御回路を勉強して「ラインの自動化」を推進した。

④集中タイム:朝9001030を「集中タイム」として会話や内線電話を禁止。企画立案や書類作成に集中することにした。

⑤目標管理:コスト・技術・品質・納期・テクニカルなどについて、会社の方針と目標、部門目標、個人目標を決め、毎月市川さんが全員を面接して進捗と今後の予定を確認した。

1999年から、創業50周年に当たる2011年まで「チャレンジ50」と名付け、異業種交流を進め、新しい事業の柱を2本作ることをめざした。ひとつは、発泡スチロールに代わる環境にやさしい発泡体の開発。古紙とコーンスターチによるでんぷんを水蒸気で発泡させたもので、現在売上の20%を占めるまでに成長している。もうひとつは、改善改革の中で培った自動化技術の事業化。すでにいくつかの会社の問題解決を手伝ってきた実績がある。

■本業のプラスチック成型分野では、金属プレス加工会社と熱硬化性樹脂の素材開発会社との連携で、高精度の気体流量測定装置の部品開発に成功した。この開発は2006年、経済産業省の「新連携」の認定を受けた。このほか2003年に京都市から「オスカー」の認定、2008年に京都府から「元気印企業」の認定、プラスチック成形部門を統括するモールディング部長が「現代の名工」として表彰されている。

取材先 ミヤコテック
取材 2008/12/24
掲載 ポジティブ2009/02
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki165.html

  

インサート成型品(左)と平準化ボックス
 
【121104】 みんなの心をひとつにする  


18ℓ缶製造装置の修理メンテナンスの仕事が下降線をたどる中、スズキ機工は食品製造装置や一般産業機械の設計製作事業に転身を図ろうとしていた。2007年、父から社長職を引き継いだ鈴木豊さんは、昼間は営業にでかけ、夜は受注した装置の設計と製作に費やす日々が続いていたが、鈴木さんが営業に出かけている間、社員たちが何もせず怠けていると聞かされた。鈴木さんの必死の思いは社員たちに共有されていなかった。

■社員のやる気を引き出すためにどうしたらよいか。経営書を読み漁ってヒントを探し、会社がいまどういう状況にあるか、みんなで何を目指すのか、そのために何をしなければならないかを、みんなにはっきり伝えなければならないことに気が付いた。そのために鈴木さんが打った手は次の通りである。

①「経営計画書」を毎年作成。社員1人ひとりに配布し、その内容を逐一読み聞かせている。

②その最初のページに「スズキ機工は、社員とその家族の安定した幸せな家庭を実現し、物心ともに活力に満ち溢れた、皆が集う大切な場所になることをめざします」という「経営理念」を掲げ、将来ビジョン、行動指針、中期5活力年計画、人事と処遇の方針、教育訓練の方針などを書き込んだ。

③人事・処遇・教育訓練の方針に基づいて、毎年、就業規則を改定更新。社員の代表者が署名捺印して労働基準監督署に届け出ている。

④上司は3カ月に1度、部下と面接して仕事ぶりを評価。足りない部分を補って努力目標を設定している。

⑤社員は互いに「さん」づけで呼び合い、リスペクトし合う関係を目指す。

月1回ランダムに組み合わせた3人ずつで食事会を開催。参加は強制。時間外手当を支払っている。

⑦教育訓練については可能な限り予算を組んでいる。

始業前30分の「整理整頓」を行い、その中でその日の予定を思い浮かべ、どんなふうに取り組むか、頭の中で整理した上で仕事にかかることにしている。

取材先 スズキ機工
取材 2018/05/23
掲載先 リーダーシップ2018/07
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki205.html

 ←工場内の作業風景
【121105】 ボトムアップ型組織をつくる  


■経済が成長していた時代はトップダウン型リーダーシップが有効だったが、経済が停滞してくると、社員1人ひとりがマーケットの動向を注視し、情報を集め、それらを統合して会社としての進むべき方向を決めなければならない。父から社長職を引き継いだ㈱吉村の橋本久美子社長は、そのために、それまでのトップダウン型組織を次のようなボトムアップ型組織に変えた。

[壁新聞]
 売上、経費、利益などの数字を2カ月に1度壁新聞にして公開した。社員たちはその前で「これ、どういう意味?」「ウチは頑張っているな」「まだまだダメだな」などと話し合うようになった。

[イチオシ投票]
 従来の社員表彰はトップが1人で受賞者を決め、陽の当たるところにいた社員が何度も表彰されたが、それを全社員が自分以外の1人に1票入れる形に変え、票数の多い上から10人を表彰することにした。各人が書いた推薦理由は壁新聞で公表される。

[全員が会議体のメンバーに]
 取締役会、経営会議、評価者会議、販促会議、クレーム対策会議、安全衛生委員会、ES会議、成長を広げる委員会、わくわくみらい会議、消費者座談会の出席候補者人選会議…など、社内にはいくつもの会議体があるが、全社員にその会議のメンバーとなって、必ず発言することを求めている。多様な意見を取り入れることと、職場横断的な人間関係を作ることが狙いである。

[利益均等還元制度]
 前期は純利益の20%、後期は経常利益の25%を全社員に均等還元している。12カ月働いた人なら、社長も新入社員も同額。

[オレンジプロジェクト]
従業員満足度を調査し、その結果、社員の満足度に様々な問題のあることが明らかになった。その直後に「オレンジワークショップ」という研修が行われ、「オレンジが1個ある。それをAさんとBさんの2人で、ウィンウィンになるような分け方を考えてください」という課題が与えられた。「ナイフで真2つに切って分ける」「ジュースにして分ける」「ジュースでオレンジケーキを作り、それを2個のオレンジと交換して1個ずつ分ける」「オレンジの種からオレンジの樹を育て山のように実った果実を分ける」…などの意見が出て、各人のアイデアのユニークさをみんなで確認し賞賛し合ったが、その後、ある社員の提案で、みんなの働きやすさを考える「オレンジプロジェクト」をスタートさせようということになった。この「オレンジプロジェクト」の提案で、子育てや介護のための「時短勤務制度」がスタートした。つわりのときは「2週間休みます」と言ってもOKという制度もできた。また、配偶者の転勤でやむを得ず会社を退職する社員に、機会があれば「戻っておいで」という意味の「MO(戻っておいで)カード」を渡す制度がスタートした。以来、結婚、出産、育児、介護を理由に辞める社員は出ていない。

取材先 吉村
取材 2016/10/05
掲載 リーダーシップ2016/12
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki186.html

 ←全員参加会議
 
【121106】 「企業は人なり」を実践する社員教育   
 

■「白醤油」「白だし」を製造販売する七福醸造(愛知県安城市)は「企業は人なり」「お客様を第一に考える」「他社にない特色を出して差別化を図る」をポリシーとしている。

■犬塚敦統社長は、あるコンサルタントから「社員は社長の後ろ姿を見ている、社長が変わらなければ社員は変わらない」と忠告されたことをきっかけに、自分を磨くことを心がけ、社員がそれに続いている。

■その一環として次のような体験教育を実践している。

・毎朝トイレ・事務所・階段を磨く環境整備活動

・3日間機械を止めて実施する工場集中環境整備活動

・道路の空き缶、ゴミ拾い活動

・子どもたちや親たちと一緒になって行う学校のトイレ清掃活動

・社員全員で混声合唱団を編成。市民病院で慰問コンサートを開催。

・「地球村運動」として、マイ箸運動・マイバッグ運動・・冷暖房節減・ゴミ削減。ノーマイカーデー・森林を守る運動・フロンガス回収活動などを実践。

1993年から砂漠緑化活動に協力。社長と新入社員が内モンゴルまででかけて植林活動。

100キロ歩け歩け大会。碧南市から三河湾沿いに伊良湖岬までの100キロを全社員で歩く。日常では経験することのない厳しさを克服する中で、自分自身の本当の姿を再発見する。

取材先 七福醸造
取材 2007/03/12
掲載 ポジティブ2007/0
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki037.html

 ←地域の学校での清掃奉仕活動
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