絵で見る創意くふう事典  》 第12章 組織  》 H仕事と生活を両立させる
 
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組織‐1209 H仕事と生活を両立させる BACK

雇用する側の都合だけで言えば、会社の中核を担う人にはすべてを仕事に打ち込んでもらいたいし、定型化された日常業務を担う人たちには、決められたことだけきちんとやってもらって、仕事がなくなれば雇用関係を終了できる形が望ましい。しかし、1人ひとりにはそれぞれの生活があり、仕事と生活の両立が保証されてこそ、仕事に打ち込むことができます。そのことに考慮を払わない組織は、やがて人材を確保することができなくなります。ここでは仕事と個人生活を両立させる工夫を集めました。

 このページの掲載事例→          ●120901 従業員を正社員に限る  
 ●120902 仕事と子育てを両立しやすくする 
 ●120903 社員各層の提言でワークライフバランスを改善
 ●120904 病院内に保育所を開設する
 ●120905 みんなで力を合わせて雇用を守る
 ●120906 社員の独立を支援する
 
【120901】 従業員を正社員に限る  


■クロスカンパニーの石川康晴社長は、最初にオープンした店が、自分1人では手が回らなくなり、人を雇い入れようと決めたとき、アルバイトとして雇うか、正社員として雇うか、迷ったという。アパレル業界は普通はパート、アルバイト、あるいは派遣社員が中心だった。売上は様々な条件によって変動する。最も底の部分で持ちこたえられる人数だけ正社員として確保しておき、売上が膨らんだ部分はいつでも解雇できるパートかアルバイトか派遣社員で賄うというのが常識だった。

■しかし、ファッション製品は、スーパーやコンビニの商品とは違うと石川さんは考えていた。POPを吊り、カセットデッキで商品説明を流し、後はバイトがレジに立って待っていれば自然に売れていくというものではない。単価も違うし、流行のスピードも、求められるコーディネート技術も違う。それを売るには、石川さん自身がそうしてきたように、その商品に惚れ込み、十分な商品知識を身につけ、目の前のお客様に全神経を集中し、商品の価値、店の価値、自分自身の価値を分かってもらえるような売り方をしなければならない。その場限りの口先だけの接客ではまず売れない。雇い入れた人に石川さんの分身として、同じような売り方をしてもらうには、少なくとも雇用を保障し、社会保険にも加入し、じっくり取り組んでもらえる条件をきちんと整えることから始めなければならないと考えた。

■以来、業界の常識に逆行して、雇い入れるすべての人を正社員として採用してきた。社員数は現在800人を越えようとしている。ほとんどの経営者は人件費をコストとして捉えている。だから、出来る限り、単価が安く、社会保険料を負担しなくてすみ、いつでも解雇できる非正規社員を活用しようとする。だが、石川さんは、人を大きな可能性を持った資源と見ている。安心して働いてもらえる条件を整え、経営者の思いを伝え、きちんきちんと教育していくことで、人はその人が持つありったけの力を発揮してくれるようになると考えている。その可能性に賭け、教育投資を惜しまなかったことが、今日のクロスカンパニーにつながっている。

取材先 クロスカンパニー
取材 2008/04/30
掲載 ポジティブ2008/0
本文 croscompany.pdf へのリンク  

 クロスカンパニーの店舗
 
【120902】 仕事と子育てを両立しやすくする  

■一旦社員になった人には、できればいつまでもこの会社で働いてもらいたいとクロスカンパニーの石川康晴社長は考えている。そのため、子供がまだ小さい間は、正社員の身分のまま、1日4時間だけの勤務を選択できるようにした。4時間なら仕事と子育てを両立させやすく、預かってもらえる施設も比較的見つけやすいからだ。

■販売員は若い女性に限ると考える経営者が多い中、石川さんは「年齢は関係ない」という。「私たちは団塊ジュニアとともにマーケットを作ってきています。団塊ジュニアが40代になれば40代向けの、50代になればシニア向けのブランドを作っていけばいい。結婚して、子供を生んで、子育てして、人生経験を積んだ女性にしかつかめないお客様の心もある」という。

クロスカンパニー(tanbouki 066
取材 2008/04/30
掲載 ポジティブ2008/0
本文 croscompany.pdf へのリンク

 クロスカンパニーの店舗
 
 【120903】 社員各層の提言でワークライフバランスを改善  


■金融機関・公共機関・産業界などのシステム開発を引き受けている日立ソフトウェアエンジニアリング(東京都品川区)は、採算が取れないプロジェクトが増え、SE(システムエンジニア)の残業が増え、モチベーションを低下させていた。

■ここからの脱出をめざし、同社は、2006年、全社改革運動「ブレークスルー作戦」を展開。パッケージソフト販売やプログラムレンタルなど過去の蓄積を活用することによる「事業構造の改革」により業績回復させるとともに「マネジメントプロセスの進化」「ものづくり力の強化」「営業力の強化」「活気ある職場づくり」に取り組んだ。

■その実現のために、社員を元気にすることが不可欠で、そのためにはワークライフバランス実現が必要だとして、改革運動と並行して、女性・若手・シニアのワーキンググループを編成。それぞれに提言を求め、提言に基づいて次のようなワークライフバランスの改善が行なわれた。

■育児期間中の短時間勤務制度が利用できるのは従来小学校入学まで、勤務時間は6時間と決まっていたが、女性ワーキンググループの提言により、次のように改められた。
・育児期間中の短時間勤務は4時間・5時間・6時間・7時間の選択制とし、短時間勤務制度を利用できるのは小学校卒業までとした。
・育児休職期間はそれまで最長2年間だったが、小学校1年生が終わるまでの間に通算3年間とした。
・休職期間中、会社の情報が入ってこないことによる不安解消のために休職期間中セキュリティPCが貸与されることになった。パスワードで会社のサーバーに接続、メール交換、イントラネットを見ることができる。ただし、このPCには記憶装置がなく、データは残らない。

■長時間残業縮減のために、主任・係長を中心とする若手グループの提言により、次のように改善された。
2カ月連続80時間以上残業を行なった者はリストアップし、経営会議に報告。仕事の分担を変えるなどの改善計画と今後の残業見込み時間を提出させる。
・遅くとも21時までに退社する「21時ルール」を設定。特別の事情でそれ以上残業する場合は部長の許可を得る。・プロジェクトが終わったら2日以上の年休をとる「プロジェクト年休」を制定。

■健康管理とコミュニケーション推進のために、部長・本部長クラスで構成するシニアグループの提言により、次のような改善が行われた。
・産業医による体の健康と心の健康の講話会開催。
・健康診断100%受診の徹底。
・血圧や血糖値について基準値を越える社員の残業禁止。ただし、病院で受診し、治療が開始されれば残業禁止措置を解除。
・メンタル疾患の社員は主治医からリハビリ可能の診断書が出て、本人・上司・産業医の3者面談で就業可能と判断された場合のみ復帰させる。
・万歩計を配付して毎日の歩数をイントラネット上に記録して競い合ったり、各フロアに血圧計を置いて、健康づくりへの意識を高揚する。
・社内コミュニケーションを高めるために、社長と課長の懇談会、直属上司のさらに上の上長と話し合う段々飛び懇談会、職場横断型の横っ飛び懇談会を開催し、一杯飲みながら話し合うために13000円の補助金を支給。
・原則日帰り研修会を改めて合宿研修会の復活。
・全社スポーツフェスティバル(運動会)の復活。

■事業構造改革など4つの改革と「活気ある職場づくり」により、業績はV字回復し、残業時間削減、退職率低下、総合職の女性社員割合向上などの効果が明らかになった。この活動は2007年、社会経済生産性本部の第1回ワークバランス大賞・組織内活動表彰優秀賞を受賞している。

取材先 日立ソフトウェアエンジニアリングtanbouki 082
取材 2009/01/19
掲載 ポジティブ2009/03
本文 hitachisoft.pdf へのリンク

 女性ワーキンググループの会議
 
【120904】 病院内に保育所を開設する  


益田地域医療センター医師会病院では。事業規模の拡大に伴って看護師の人数が拡大したが、その人たちの結婚や出産が重なって離職率が急速に高まった。そこで、2006年に院内保育所を開設した。16.7%だった離職率が4.17%にまで低下。現在では、女性職員が安心して働ける環境が守られている。 

取材先 益田地域医療センター医師会病院
取材  2012/04/18
掲載  リーダーシップ2012/06
本文  
masudaisikaibyoin.pdf へのリンク

 ←.院内保育所
 
【120905】 みんなで力を合わせて雇用を守る   

   


■東日本大震災のときで理美容店40店を展開する潟Iオクシの千葉市稲毛海岸の店舗は液状化に見舞われ、床上まで泥が上がってきた。さらにその後の計画停電によって照明・エアコン・ヘアドライヤーも使えなくなって、営業できない日が何日も続いた。

■同業者の多くはパートタイマーを解雇して切り抜けようとしたが、大串さんは「ウチは従業員の物心両面の幸せを追求する会社です。社員はもちろんパートさんの雇用も保証します」と宣言した。

■それに応えて全店の店長が協力しておアートさんたちの仕事場の確保に奔走した。本部は各店舗の運営状況を常に見える化し、停電で営業できなくなった店の店長は、それを見て応援派遣の受け入れ先を求め、通常通り営業している店舗は、できる限りその人たちを受け入れた。

■各店舗の横のコミュニケーションルートがこうした勤務を可能にし、全従業員の仕事が確保され、雇用が維持された。この経験は従業員たちに自分たちは家族だという意識をより強くした。

取材先 オオクシ
取材 2015/02/23
掲載 リーダーシップ2015/04
本文 
ohkushi.pdf へのリンク 

  
↑カットの研修(左)と接客マナー研修
 
【120906】 社員の独立を支援する    


■スタンドそばチェーン「小諸そば」を展開する三ツ和(東京)は1953年の創業。創業者の小川正元さんは商家で育ったが、幼い頃、番頭・手代・丁稚など、使用者と被使用者の差別的身分制度に馴染めなかったという。人は人として同じ価値を持っており、そのことを互いに認め合い、尊重し合ってこそ協力し合えるのではないかと考えていた。その考え方がベースとなって、1976年、ドイツ人のギド・フィッシャー教授が提唱する「パートナーシャフト経営」を自社の経営の基本とすると宣言した。

■この考え方がベースとなって、同社は社員を「パートナー」と呼び、経営をガラス張りにしている。入社2年以上の社員が参画して経営計画を策定し、各店の目標を決め、目標を達成した店には利益が還元され、社員たちはその一部を積み立てて自社株を購入している。

■さらに、独立を希望し、店の開店資金の25%以上を出資することのできる社員には、経営ノウハウを提供し、資金調達援助などを通じて独立を支援し、のれん分けしている。

取材先 三ツ和
取材  1994/03/03
掲載  燃えよリーダー1994/04

 
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