絵で見る創意くふう事典  》 第12章 組織  》 E意見を聞く
 
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組織‐1206 E意見を聞く BACKNEXT

命じられた範囲で仕事をさせている限り、従業員は経営者や管理者に従属しており対等ではありません。しかし、経営者や管理者が自分が抱える問題について意見を求めれば、従業員はその限りで経営者や管理者と対等の立場に立つことになります。そのことを許容し、場合によっては自説を曲げて相手の意見を取り上げるという姿勢を示してこそ、従業員からその人の最大限の能力を引き出すことが可能になります。以下は、そうした取り組みの事例です。

 このページの掲載事例→                   ●120601 学生の提案を受け入れ、みんなの会社をめざす  
 ●120602 若手管理者に提言させる−1  
 ●120603 若手管理者に提言させる−2  
 ●120604 「経営の日」をつくる  
 ●120605 「建設の日」をつくる
 ●120606 経営計画を社員に決めさせる
 
【120601】 学生の提案を受け入れ、みんなの会社めざす  

■ものづくりの町、墨田区の工場はどんどん数が減っており、区はそれに対応して大学との産学連携の推進をすすめている。浜野製作所はその行政からの提案に呼応して、大学の経営学の先生の授業のために会社を開放し、学生たちを受け入れ、すべての経営データを公開。会社をもっとよくするために、営業面、財務面、生産管理面の提案をしてもらっている。

■学生たちは事業についての知識経験があるわけではなく、直接的な効果を期待したわけではなかったが、彼らの素朴な疑問にひとつひとつ答えていくことで、多くのことを気づかされたという。

■その延長でいまも5大学10数人の学生がインターンシップの形でこの会社に集り、社員と一緒になって会社をよくする工夫を話し合い、様々な提言をしてくれている。

■学生たちは会社のホームページ、会社案内のパンフレットをつくってくれた。社員が毎日の仕事の感想を自由に書き込む社内ブログも学生たちの提案で始まった。員の意識調査をしてくれ、社長には直接言えない社員のホンネを引き出してくれたこともある。

■こうして始まった社内ブログで浜野社長は、ある社員の書き込みを見て胸が熱くなったという。「みんなの会社じゃないですか、もっとみんなで盛り上げていきましょうよ」とあった。

■それがきっかけで浜野社長は自分の家族が持っていた会社の株の一部を幹部社員に買ってもらうことを決めた。「今までは浜野家がオーナーだった。これからはみんなの会社にしていきたい」社員の前でそう宣言した。この宣言とともに同社は新しい飛躍に向かって羽ばたこうとしている

取材先 浜野製作所(tanbouki 028
取材 2006/12/15
掲載 ポジティブ2007/02
本文 hamano.pdf へのリンク

  
浜野製作所の社屋と事務所内 
 
【120602】 若手管理者に提言させる−1   


■転写印刷機メーカー、ナビタス(堺市)では、若手幹部を育成するために「ジュニアボード」を組織している。7つの部門から1人ずつ選ばれた中間管理職が集まって役員会の数日前に役員会と同じテーマで議論し、ジュニアボードとしての意見を役員会に提案する。当初は与えられたテーマについて議論するだけだったが、その後自分たちなりのテーマでデータを集め、提案することが増えた。メンバーの任期は2年。多くの社員がメンバーを経験した結果、全社的な視野で物事を考えられる社員が増えている。

取材先 ナビタス
取材 1993/12/03
掲載 燃えよリーダー1994/01

 
 
 【120603】 若手管理者に提言させる−2  

■ソフト開発会社、ユーザックシステムでは、以前にコンピュータ販売をしていた。当時の取引相手は,中小・中堅企業の経営トップで、社員には経営感覚が不可欠だったことから「ジュニアボード制度」をつくった。
選ばれたメンバーは役員会から提起されたテーマについて検討し、意見をとりまとめて役員会に提言する。その活動の中から,資格取得者に祝い金や手当を出す公的資格取得奨励制度などが生まれた。近年は同社が得意としてきた物流システムが不況によって伸び悩んでいることに対応し,物流システム提案に関わる社員教育のあり方の再検討をすすめている。

■現在のジュニアボードは30代の課長クラスが中心。近年はもっと若い20代を中心に「ヤングボード制度」を併設し、このクラスには主に働きやすい環境づくりの提言を求め、最近は自立型社員育成のために,従来トップダウンで決められてきた年間計画に個人の意見をどう反映させるかというテーマに取り組んでいる。

取材先 ユーザックシステム)
取材 2012/06/29
掲載 リーダーシップ2012/09
本文 usac.pdf 
 
 
 【120604】 「経営の日」をつくる  


■プリント基板ハンダ印刷版洗浄装置のメーカー、サワーコーポレーション(大阪府枚方市)では、毎月1回「経営の日」と「建設の日」を設けている。

■「経営の日」は、正社員21人の全員参加で事業計画、売上目標、組織改革など、経営に関するあらゆるテーマを話し合う。自ら手を上げた社員にはチャンスが与えられ、やってみて、次の「経営の日」に結果をフォローする。

■電子機器のプリント基板には松脂で練ったペースト状のハンダが印刷されている。1回印刷すると印刷機の側にハンダかすが残るから、その都度メタルマスクを洗浄しなければならない。従来はトリクロロエタンの槽に浸けて洗浄していたが、それがオゾン層を破壊することがわかって、1996年から禁止されることになった。サワーコーポレーションは、メタルマスクにエタノールを垂らして超音波振動を与えることで、トリクロロエタンを使わない洗浄技術を開発した会社である。

■澤入精社長はその後の製品開発を、方向だけを示して、あとは社員に任せてきた。当初のハンダ印刷版洗浄装置は、エタノールを垂らしたメタルマスクにハンディタイプの超音波振動装置を押し当てながら全面をなぞるものだったが、「メタルマスクをセットしてスイッチを入れれば自動的に洗浄してくれるものを作ってほしい」という得意先の要望を営業担当の中村一也さんが聞いてきた。「こんなかたちのものを作ってはどうでしょうか」と中村さんは得意のマンガで描き、その熱心な様子に動かされて、澤入社長は「それなら、キミがやってみろ」と中村さんに任せることにした。中村さんには電気の知識も図面を描く技術もなかったが、周りのみんながそれを教えた。

■それまで取り組んできた内容を中村さんは「経営の日」にみんなの前で発表し、様々なアドバイスをもらって、また挑戦した。しかし、半年たって「やっぱりダメです」とギブアップしたとき、澤入社長は「発想を180度変えて見ろ」とアドバイスした。箱に中にメタルマスクをセットし、それに振動子を4つ並べたヘッドを押し当てて洗浄するというのが当初のアイデアだったが、それでは十分な洗浄力が出ない。そこで、ヘッドを箱の奥に取り付け、その上にメタルマスクをセットし、それを扉で押さえてヘッドに密着するようにした。

■洗浄力が向上し、6分で洗浄できるようになった。その過程が苦しかった。あるとき、イライラした中村さんがコンセントを引き抜いた。電気を切ったはずなのに洗浄が進行していた。電流を切ったり入れたりすることで、洗浄効果が上がることを発見した。こうして最初の洗浄機が完成した。

■サワーコーポレーションは、こうしたやり方で権限委譲し、参画意識を盛り上げ、部門を越えた協力を生み出し、独自技術による強い商品開発に結び付けている。それが具体的に目に見える形で現われるのが毎月第一土曜日の「経営の日」である。 

取材先 サワーコーポレーション(tanbouki 048
取材 2007/08/05
掲載 リーダーシップ2007/10
本文 sawacorporation.pdf へのリンク 

組立中のプリント基板ハンダ印刷版洗浄装置
 
【120605】 「建設の日」をつくる   


サワーコーポレーションは「経営の日」のほかに、第3土曜日を「建設の日」と決めている。

1991年。同社トマト栽培用のビニールハウス跡地を仕事場にして創業した。澤入精社長とその家族を含む数人で、床にコンクリートを打ち、壁をつくり、コンクリートパネルに脚を付けただけの机や作業台をみんなで手づくりするところから始めた。当時は毎日が「建設の日」だった。社屋が現在の場所に移った今も「建設の日」は続いており、全員総出でペンキ塗り、コンクリート塗り、周辺整備を行っている。

■敷地の半分は斜面で、そこに草が生える。そこを草刈機で刈るのが近年の「建設の日」の仕事になっていたが、「ガソリンをまき散らして草を刈るのは『地球益の追求』にならない。山羊を飼って草を食べさせてはどうか」と誰かがいい出し、斜面に山羊小屋を建て、つがいの山羊を飼育している。おかげで草刈作業がなくなり、山羊からは乳が採れ、窓から見える2頭が草を食べるのどかな光景が、仕事に疲れたときの癒やしになっている。

■「建設の日」には、新入社員が「棟梁」を勤めることになっており、その棟梁の指示には上司も澤入社長も従わねばならないというルールがある。棟梁が許可を出さない限り休憩もできない。若い人に人を使う訓練させる場でもあるのだ。

取材先 サワーコーポレーション(tanbouki 048
取材 2007/08/05
掲載 リーダーシップ2007/10
本文 sawacorporation.pdf へのリンク 

 
「建設の日」の休憩所づくりと山羊の乳搾り  
 
【120606】 経営計画を社員に決めさせる  

■牛タン専門チェーン店、ねぎしフードサービスの根岸榮治社長は、その昔、喫茶店、ファミリーレストラン、ラーメン店など業態の異なる店舗を広範な地域に展開していた。いずれの店も評判がよくて行列ができるほどだったが、遠隔地に展開していたことと店ごとに業態が異なったために管理が行きとどかず、従業員の不正を誘発し、限界を感じて結局20店近いすべての店舗を一旦閉鎖した。その後、業態を牛タン専門に絞り込み、すべての店舗を新宿から30分圏内に集約した。

■根岸社長は現在、従業員をしばしば本社に集め、本社からも店に出向いて、店の将来を語り、お客様の心をとらえるくふうを一緒に考えている。さらに、経営計画立案に際しては、従業員に決めさせ、社長はアドバイザー役に徹している。「会社というのはいくら儲けてもつぶれてしまっては何にもならない。私は100年続く企業を目指そうと考えたのです」と根岸さんはいう。

取材先 ねぎしフードサービス(tanbouki 124
取材 2011/08/26
掲載 リーダーシップ2011/11
本文 negishi.pdf

 根岸フードサービスの全体会議
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